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第3章 黒幕追跡と衝撃の正体
3-3 侯爵との対峙(仮面の令嬢)
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第3章 3-3 侯爵との対峙(仮面の令嬢)
――黒幕に向けられる、仮面の令嬢の冷たい正義
スティーヴン・グレイソン侯爵家の広間は、夜会に備えて煌々と明かりが灯されていた。
巨大なシャンデリアが天井から下がり、磨き抜かれた大理石の床には金色の模様が映り込む。
見習いメイドが花を整え、執事が列を作って酒瓶を並べている。
まるで絵画のような豪奢な光景。
だが、アメリアの目には――その華やかさは薄く、むしろ不快なほどの“偽り”に満ちて見えた。
(この華やかさは、搾り取られた人々の涙の上に成り立っている……)
銀の仮面をつけたアメリアは、広間の影に静かに佇んでいた。
本来なら、彼女はこんな場所に二度と足を踏み入れるつもりはなかった。
スティーヴンと婚約していた時に幾度も招かれた広間――
その時はこの場所が美しいと思っていた。
しかし今は違う。
ここは、腐敗と悪意を覆い隠す“仮面の舞台”。
今日、ここでその仮面は剥がされる。
◆
「旦那様がお越しになります! 道を開けて!」
執事の声が響いた。
扉が開き、スティーヴンが姿を現した。
金の刺繍を施した夜会用の上着を羽織り、髪は完璧に整えられ、
今日も“絵に描いたような完璧な侯爵家の跡取り”の顔をしている。
アメリアは、仮面の下で冷たい微笑を浮かべた。
(……仮面をかぶっているのは、わたくしではなく、あなたの方ですわね)
スティーヴンは使用人たちに指示しながら、広間中央へ向かう。
その動線に――アメリアは静かに歩み出た。
スティーヴンの目の前に、音もなく立ちはだかる。
「……どなたかな?」
穏やかで余裕に満ちた声。
知らぬ者へ向ける、丁寧で気取った口調。
だがその裏に――傲慢さと支配欲が透けて見える。
アメリアはゆっくりと頭を下げた。
「初めまして、◯◯侯爵。……いえ、再会と言うべきでしょうか」
「……何だと?」
スティーヴンの眉がわずかに動いた。
アメリアは一歩踏み出し、銀の仮面を少しだけ傾ける。
その声は、仮面の下から響くように冷たく、静かだった。
「スティーヴン・グレイソン侯爵。
あなたの悪行は、すべて露見いたしました。
男爵領の搾取、裏資金の流し、複数の貴族への脅迫――
そして民を愚弄し、踏みつけにした罪」
広間の空気が一瞬で凍りついた。
メイドも執事も息を呑み、視線を交わしている。
「……ほう?」
スティーヴンは笑みを浮かべた。
「おもしろいことを言う。
だが――どこの誰とも知らぬ者の戯言を、私が信用するとでも?」
「どこの馬の骨か、ですか?」
「そうだ。お前のような得体の知れぬ人物が、私を裁けると思うか?」
スティーヴンの笑顔は、優雅で、そして残酷だった。
かつてアメリアの心をくすぐった“優しさの仮面”そのまま。
その裏にある腐り切った傲慢さだけが、今は露出している。
(……本当に、変わりませんわね。
婚約していた頃から、その奥にある“軽蔑の眼差し”だけは)
アメリアは静かに言った。
「では、裁けるかどうか……それは“正体によりますわね”」
「正体……? 仮面をかぶった小娘が、何を――」
「では、“見せて差し上げます”」
◆
アメリアはゆっくりと手を伸ばした。
銀の仮面に指をかけ、外へと滑らせる。
――カシャン。
仮面が床へ落ちた瞬間。
広間は、まるで雷が落ちたように衝撃に包まれた。
「……ま、さか……」
スティーヴンの顔から色が消えた。
「あなた……アメリア……なのか?」
アメリアは冷静に微笑む。
「ごきげんよう、スティーヴン。
“元婚約者”として、最後の挨拶に参りましたの」
スティーヴンの手が震え、足がふらりと揺れる。
その反応は、恐怖か、動揺か、それとも――
自分の罪を知る者が現れたことへの焦りか。
アメリアはさらに言葉を続けた。
「あなたが裏で行ってきた悪行の証拠……すべて、手元にあります。
男爵領で搾り取った金の流れ。
商会との裏取引。
複数の領地への不当な圧力。
そしてあなたが書いた契約書の筆跡も、封蝋も――完璧に残っております」
スティーヴンの表情がゆがんだ。
「……信じられるか。お前が……こんなことを……!」
怒りと恐怖が混ざった声。
「アメリア! 私はお前を愛していたのだ! それなのに……!」
「まあ。
“愛していた”と言いながら、わたくしを“爵位がなければ無価値”と断じた方が、よく言いますわね」
アメリアは仮面の代わりに、冷酷な真実を突きつける。
「あなたが愛していたのは……“公爵位を持つわたくし”であって、
本当のわたくしではありません」
「……!」
スティーヴンの言葉が喉で止まる。
「そして、わたくしにはもうひとつ確認したいことがありますの」
アメリアは彼を真っ直ぐに見据えた。
「――わたくしに“爵位を寄越せ”と言い、
“爵位がないなら価値がない”と切り捨てたあなたが。
裏で人々の命を搾り取っていた……その理由を」
「……黙れ!」
スティーヴンは金色の杖を掴もうとした。
「貴様のような女に! 私の何が分かる!
貴族は権力だ! 支配だ!
弱者など――踏みつけるために存在する!」
広間に響く、最悪の本音。
執事が震え、メイドが青ざめた。
アメリアは、静かに目を閉じ、
「……その言葉。
国王陛下にそのままお伝えしましょうか?」
ゆっくりと目を開き――冷たい光が宿っていた。
「侯爵と、公爵令嬢。
どちらの言葉を信用なさるかしら?」
「――っ!」
スティーヴンの顔が蒼白になり、喉が震えた。
アメリアは一歩踏み出し、
「覚悟なさいませ、スティーヴン。
わたくしは今日――“あなたという仮面”を剥がしに来たのです」
その声は、刃よりも鋭く。
そして――仮面の令嬢の正義が、今まさに振り下ろされようとしていた。
---
――黒幕に向けられる、仮面の令嬢の冷たい正義
スティーヴン・グレイソン侯爵家の広間は、夜会に備えて煌々と明かりが灯されていた。
巨大なシャンデリアが天井から下がり、磨き抜かれた大理石の床には金色の模様が映り込む。
見習いメイドが花を整え、執事が列を作って酒瓶を並べている。
まるで絵画のような豪奢な光景。
だが、アメリアの目には――その華やかさは薄く、むしろ不快なほどの“偽り”に満ちて見えた。
(この華やかさは、搾り取られた人々の涙の上に成り立っている……)
銀の仮面をつけたアメリアは、広間の影に静かに佇んでいた。
本来なら、彼女はこんな場所に二度と足を踏み入れるつもりはなかった。
スティーヴンと婚約していた時に幾度も招かれた広間――
その時はこの場所が美しいと思っていた。
しかし今は違う。
ここは、腐敗と悪意を覆い隠す“仮面の舞台”。
今日、ここでその仮面は剥がされる。
◆
「旦那様がお越しになります! 道を開けて!」
執事の声が響いた。
扉が開き、スティーヴンが姿を現した。
金の刺繍を施した夜会用の上着を羽織り、髪は完璧に整えられ、
今日も“絵に描いたような完璧な侯爵家の跡取り”の顔をしている。
アメリアは、仮面の下で冷たい微笑を浮かべた。
(……仮面をかぶっているのは、わたくしではなく、あなたの方ですわね)
スティーヴンは使用人たちに指示しながら、広間中央へ向かう。
その動線に――アメリアは静かに歩み出た。
スティーヴンの目の前に、音もなく立ちはだかる。
「……どなたかな?」
穏やかで余裕に満ちた声。
知らぬ者へ向ける、丁寧で気取った口調。
だがその裏に――傲慢さと支配欲が透けて見える。
アメリアはゆっくりと頭を下げた。
「初めまして、◯◯侯爵。……いえ、再会と言うべきでしょうか」
「……何だと?」
スティーヴンの眉がわずかに動いた。
アメリアは一歩踏み出し、銀の仮面を少しだけ傾ける。
その声は、仮面の下から響くように冷たく、静かだった。
「スティーヴン・グレイソン侯爵。
あなたの悪行は、すべて露見いたしました。
男爵領の搾取、裏資金の流し、複数の貴族への脅迫――
そして民を愚弄し、踏みつけにした罪」
広間の空気が一瞬で凍りついた。
メイドも執事も息を呑み、視線を交わしている。
「……ほう?」
スティーヴンは笑みを浮かべた。
「おもしろいことを言う。
だが――どこの誰とも知らぬ者の戯言を、私が信用するとでも?」
「どこの馬の骨か、ですか?」
「そうだ。お前のような得体の知れぬ人物が、私を裁けると思うか?」
スティーヴンの笑顔は、優雅で、そして残酷だった。
かつてアメリアの心をくすぐった“優しさの仮面”そのまま。
その裏にある腐り切った傲慢さだけが、今は露出している。
(……本当に、変わりませんわね。
婚約していた頃から、その奥にある“軽蔑の眼差し”だけは)
アメリアは静かに言った。
「では、裁けるかどうか……それは“正体によりますわね”」
「正体……? 仮面をかぶった小娘が、何を――」
「では、“見せて差し上げます”」
◆
アメリアはゆっくりと手を伸ばした。
銀の仮面に指をかけ、外へと滑らせる。
――カシャン。
仮面が床へ落ちた瞬間。
広間は、まるで雷が落ちたように衝撃に包まれた。
「……ま、さか……」
スティーヴンの顔から色が消えた。
「あなた……アメリア……なのか?」
アメリアは冷静に微笑む。
「ごきげんよう、スティーヴン。
“元婚約者”として、最後の挨拶に参りましたの」
スティーヴンの手が震え、足がふらりと揺れる。
その反応は、恐怖か、動揺か、それとも――
自分の罪を知る者が現れたことへの焦りか。
アメリアはさらに言葉を続けた。
「あなたが裏で行ってきた悪行の証拠……すべて、手元にあります。
男爵領で搾り取った金の流れ。
商会との裏取引。
複数の領地への不当な圧力。
そしてあなたが書いた契約書の筆跡も、封蝋も――完璧に残っております」
スティーヴンの表情がゆがんだ。
「……信じられるか。お前が……こんなことを……!」
怒りと恐怖が混ざった声。
「アメリア! 私はお前を愛していたのだ! それなのに……!」
「まあ。
“愛していた”と言いながら、わたくしを“爵位がなければ無価値”と断じた方が、よく言いますわね」
アメリアは仮面の代わりに、冷酷な真実を突きつける。
「あなたが愛していたのは……“公爵位を持つわたくし”であって、
本当のわたくしではありません」
「……!」
スティーヴンの言葉が喉で止まる。
「そして、わたくしにはもうひとつ確認したいことがありますの」
アメリアは彼を真っ直ぐに見据えた。
「――わたくしに“爵位を寄越せ”と言い、
“爵位がないなら価値がない”と切り捨てたあなたが。
裏で人々の命を搾り取っていた……その理由を」
「……黙れ!」
スティーヴンは金色の杖を掴もうとした。
「貴様のような女に! 私の何が分かる!
貴族は権力だ! 支配だ!
弱者など――踏みつけるために存在する!」
広間に響く、最悪の本音。
執事が震え、メイドが青ざめた。
アメリアは、静かに目を閉じ、
「……その言葉。
国王陛下にそのままお伝えしましょうか?」
ゆっくりと目を開き――冷たい光が宿っていた。
「侯爵と、公爵令嬢。
どちらの言葉を信用なさるかしら?」
「――っ!」
スティーヴンの顔が蒼白になり、喉が震えた。
アメリアは一歩踏み出し、
「覚悟なさいませ、スティーヴン。
わたくしは今日――“あなたという仮面”を剥がしに来たのです」
その声は、刃よりも鋭く。
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