11 / 17
3-2 夜の告白と、氷の指輪
しおりを挟む
第3章 3-2 夜の告白と、氷の指輪
それは、季節が春へと移り変わる頃のことだった。
穏やかな陽射しが差し込む午前の庭で、レティシアは温室の花々に水をやっていた。
けれど、その額にはうっすらと汗が滲み、頬には紅が差していた。
「レティシア様、顔色が……」
侍女の言葉に、レティシアは微笑みながら首を振る。
「大丈夫よ。ただ少し、身体が重いだけですわ」
そう言いながらも、指先に力が入らず、手にしていたジョウロが傾いた。
冷たい水が地面に落ち、白い靴を濡らす。
――その瞬間、背後から誰かがその腕を支えた。
「無理をしているな」
低く、しかし優しい声。
振り向けば、セドリックが心配そうに見つめていた。
いつの間にか、仕事の合間に様子を見に来ていたのだ。
「旦那様……大丈夫ですわ。少し疲れただけで――」
「医師を呼ぶ」
「そ、そんな大げさな……」
「君が倒れたら、屋敷ごと止まる」
有無を言わせぬ口調に、レティシアは小さく息を呑んだ。
そのまま彼の腕に抱き上げられ、抵抗する間もなく寝室へと運ばれていく。
彼の胸越しに感じる心音が、驚くほど早い。
それが仕事の焦りではなく、純粋な“心配”からだと気づいたとき、胸がじんわりと温かくなった。
---
ベッドに横たえられたレティシアの額には、冷たい布が置かれた。
セドリックは医師の診察結果を聞くと、眉をひそめる。
「軽い発熱です。過労と、寒気の影響でしょう」
医師が退室した後も、セドリックはその場を離れようとしなかった。
部下が何度か呼びに来たが、彼はすべて断った。
「……旦那様、わたくしのせいでお手を煩わせてしまって」
「君は、いつも他人の心配ばかりだな」
セドリックは苦笑しながら、カップに薬湯を注ぐ。
湯気がふわりと立ち上り、ハーブの香りが部屋に満ちた。
「飲めるか」
「ええ、少しなら」
唇を触れさせた瞬間、苦みが舌に広がった。
顔をしかめるレティシアを見て、セドリックは思わず笑ってしまう。
「……そんな顔をするなら、蜂蜜を入れておくべきだったな」
「い、いえ……平気ですわ」
彼の笑顔を見るのは、初めてかもしれない。
氷のような彼の表情が、ほんのわずかに崩れる――それが、なぜかとても嬉しかった。
---
夜になっても熱は下がらなかった。
レティシアは夢と現の境をさまよいながら、うわごとのように呟いていた。
「……嫌です……もう、あの夜会は……」
彼女の頬に涙が伝う。
婚約破棄の夜――あの屈辱の記憶が、熱に浮かされた意識の底から蘇っているのだろう。
「……もう、やめて……」
その声に、セドリックの胸が締めつけられた。
彼は椅子を引き寄せ、ベッドのそばに座る。
そして、そっと彼女の手を握った。
「大丈夫だ、レティシア」
その声は、まるで誓いのように優しかった。
「誰も君を責めない。誰も君を傷つけたりしない。――私は、君を護る」
レティシアの手が、彼の手を握り返す。
熱に浮かされたまま、彼女はかすかに微笑んだ。
「……セドリック……わたくし、夢を見ているのですか?」
「夢なら、このまま覚めなくてもいい」
その答えに、レティシアの目尻からまた涙が落ちた。
セドリックはその涙を指で拭い、髪を撫でる。
彼女が安らかに眠るまで、彼は一晩中その手を離さなかった。
---
翌朝、陽が昇る頃。
レティシアが目を開けると、セドリックがベッドの脇でうたた寝をしていた。
頬には少し疲れの色が見えるが、その表情は穏やかだった。
自分の手が、まだ彼の手と繋がっていることに気づく。
その温もりを感じた瞬間、心の奥がじんと熱くなった。
――彼は、一晩中ここにいてくれた。
そう思っただけで、胸の奥が痛いほど嬉しくなる。
「……おはようございます、セドリック」
囁くような声に、彼の睫毛が震えた。
ゆっくりと目を開けたセドリックは、少し安堵したように微笑む。
「もう平熱だな。……よかった」
その言葉に、思わず涙が零れた。
驚いた彼が慌てて立ち上がる。
「どうした、痛むのか?」
「いいえ……嬉しいんです」
涙を拭いながら微笑む彼女の姿に、セドリックは何かを堪えるように視線を落とした。
そして、懐から小さな銀の箱を取り出す。
---
「これは……?」
「母の形見だ」
彼が箱を開けると、中には銀の指輪が一つ収められていた。
指輪の中央には、淡い水色の宝石――氷晶石。
まるで薄氷を閉じ込めたように透き通っている。
「この石は持ち主の体温に反応する。
健康なら無色のままだが、熱を帯びると青く輝く。……君に、預けたい」
「そんな、大切なものを……」
「君の無茶を防ぐための護符だと思えばいい」
彼は微笑みながら、レティシアの左手を取った。
細い指にぴたりと収まる。
すると、指輪の中の氷晶石が、じんわりと青く光った。
光は冷たいはずなのに、どこか温かい。
「……似合ってる」
セドリックの声が、低く震えていた。
レティシアは指輪を見つめ、静かに問いかける。
「これは……どういう意味で?」
その言葉に、セドリックは小さく息を吐き、彼女を見つめ返した。
「――誓いだ。
契約だからではなく、君が大切だから。
私はもう、“形式の夫”でいるつもりはない」
「……セドリック……」
「君が笑うと、私は救われる。
君が苦しむと、胸が痛む。
この感情を“愛”と呼ぶ以外に、言葉が見つからない」
沈黙が落ちた。
レティシアは両手で顔を覆い、涙を堪えた。
しかし、それは悲しみではなく、溢れるほどの幸福だった。
「……わたくしも、同じです。
あなたが笑うと、嬉しい。
あなたが傷つけば、痛い。
――ですから、きっと、これが恋なのだと思います」
そう告げると、セドリックは微かに目を細め、彼女の手を取った。
そのまま、指輪をつけた手の甲に唇を落とす。
「ありがとう、レティシア」
彼女の名を呼ぶ声が、震えていた。
その響きに胸が熱くなる。
---
その夜、レティシアの寝室には静かな灯がともっていた。
窓辺に置かれた小さな花瓶の中には、一輪の白いバラ。
その花弁の中心には、淡く青い光が宿っていた。
指輪の輝きが反射して、部屋全体を淡い光で包み込む。
彼女はその光を見つめながら、心の中で静かに呟いた。
(――ありがとう、セドリック。
あなたがいてくれるだけで、もう怖くないわ)
外では、春の雨が静かに降っている。
それはまるで、二人の“契約”を清めるような優しい雨だった。
---
> 氷のように冷たい指輪が、愛の証へと変わる夜。
それは、契約の夫婦が“真実の夫婦”へと歩み出した、最初の奇跡だった。
それは、季節が春へと移り変わる頃のことだった。
穏やかな陽射しが差し込む午前の庭で、レティシアは温室の花々に水をやっていた。
けれど、その額にはうっすらと汗が滲み、頬には紅が差していた。
「レティシア様、顔色が……」
侍女の言葉に、レティシアは微笑みながら首を振る。
「大丈夫よ。ただ少し、身体が重いだけですわ」
そう言いながらも、指先に力が入らず、手にしていたジョウロが傾いた。
冷たい水が地面に落ち、白い靴を濡らす。
――その瞬間、背後から誰かがその腕を支えた。
「無理をしているな」
低く、しかし優しい声。
振り向けば、セドリックが心配そうに見つめていた。
いつの間にか、仕事の合間に様子を見に来ていたのだ。
「旦那様……大丈夫ですわ。少し疲れただけで――」
「医師を呼ぶ」
「そ、そんな大げさな……」
「君が倒れたら、屋敷ごと止まる」
有無を言わせぬ口調に、レティシアは小さく息を呑んだ。
そのまま彼の腕に抱き上げられ、抵抗する間もなく寝室へと運ばれていく。
彼の胸越しに感じる心音が、驚くほど早い。
それが仕事の焦りではなく、純粋な“心配”からだと気づいたとき、胸がじんわりと温かくなった。
---
ベッドに横たえられたレティシアの額には、冷たい布が置かれた。
セドリックは医師の診察結果を聞くと、眉をひそめる。
「軽い発熱です。過労と、寒気の影響でしょう」
医師が退室した後も、セドリックはその場を離れようとしなかった。
部下が何度か呼びに来たが、彼はすべて断った。
「……旦那様、わたくしのせいでお手を煩わせてしまって」
「君は、いつも他人の心配ばかりだな」
セドリックは苦笑しながら、カップに薬湯を注ぐ。
湯気がふわりと立ち上り、ハーブの香りが部屋に満ちた。
「飲めるか」
「ええ、少しなら」
唇を触れさせた瞬間、苦みが舌に広がった。
顔をしかめるレティシアを見て、セドリックは思わず笑ってしまう。
「……そんな顔をするなら、蜂蜜を入れておくべきだったな」
「い、いえ……平気ですわ」
彼の笑顔を見るのは、初めてかもしれない。
氷のような彼の表情が、ほんのわずかに崩れる――それが、なぜかとても嬉しかった。
---
夜になっても熱は下がらなかった。
レティシアは夢と現の境をさまよいながら、うわごとのように呟いていた。
「……嫌です……もう、あの夜会は……」
彼女の頬に涙が伝う。
婚約破棄の夜――あの屈辱の記憶が、熱に浮かされた意識の底から蘇っているのだろう。
「……もう、やめて……」
その声に、セドリックの胸が締めつけられた。
彼は椅子を引き寄せ、ベッドのそばに座る。
そして、そっと彼女の手を握った。
「大丈夫だ、レティシア」
その声は、まるで誓いのように優しかった。
「誰も君を責めない。誰も君を傷つけたりしない。――私は、君を護る」
レティシアの手が、彼の手を握り返す。
熱に浮かされたまま、彼女はかすかに微笑んだ。
「……セドリック……わたくし、夢を見ているのですか?」
「夢なら、このまま覚めなくてもいい」
その答えに、レティシアの目尻からまた涙が落ちた。
セドリックはその涙を指で拭い、髪を撫でる。
彼女が安らかに眠るまで、彼は一晩中その手を離さなかった。
---
翌朝、陽が昇る頃。
レティシアが目を開けると、セドリックがベッドの脇でうたた寝をしていた。
頬には少し疲れの色が見えるが、その表情は穏やかだった。
自分の手が、まだ彼の手と繋がっていることに気づく。
その温もりを感じた瞬間、心の奥がじんと熱くなった。
――彼は、一晩中ここにいてくれた。
そう思っただけで、胸の奥が痛いほど嬉しくなる。
「……おはようございます、セドリック」
囁くような声に、彼の睫毛が震えた。
ゆっくりと目を開けたセドリックは、少し安堵したように微笑む。
「もう平熱だな。……よかった」
その言葉に、思わず涙が零れた。
驚いた彼が慌てて立ち上がる。
「どうした、痛むのか?」
「いいえ……嬉しいんです」
涙を拭いながら微笑む彼女の姿に、セドリックは何かを堪えるように視線を落とした。
そして、懐から小さな銀の箱を取り出す。
---
「これは……?」
「母の形見だ」
彼が箱を開けると、中には銀の指輪が一つ収められていた。
指輪の中央には、淡い水色の宝石――氷晶石。
まるで薄氷を閉じ込めたように透き通っている。
「この石は持ち主の体温に反応する。
健康なら無色のままだが、熱を帯びると青く輝く。……君に、預けたい」
「そんな、大切なものを……」
「君の無茶を防ぐための護符だと思えばいい」
彼は微笑みながら、レティシアの左手を取った。
細い指にぴたりと収まる。
すると、指輪の中の氷晶石が、じんわりと青く光った。
光は冷たいはずなのに、どこか温かい。
「……似合ってる」
セドリックの声が、低く震えていた。
レティシアは指輪を見つめ、静かに問いかける。
「これは……どういう意味で?」
その言葉に、セドリックは小さく息を吐き、彼女を見つめ返した。
「――誓いだ。
契約だからではなく、君が大切だから。
私はもう、“形式の夫”でいるつもりはない」
「……セドリック……」
「君が笑うと、私は救われる。
君が苦しむと、胸が痛む。
この感情を“愛”と呼ぶ以外に、言葉が見つからない」
沈黙が落ちた。
レティシアは両手で顔を覆い、涙を堪えた。
しかし、それは悲しみではなく、溢れるほどの幸福だった。
「……わたくしも、同じです。
あなたが笑うと、嬉しい。
あなたが傷つけば、痛い。
――ですから、きっと、これが恋なのだと思います」
そう告げると、セドリックは微かに目を細め、彼女の手を取った。
そのまま、指輪をつけた手の甲に唇を落とす。
「ありがとう、レティシア」
彼女の名を呼ぶ声が、震えていた。
その響きに胸が熱くなる。
---
その夜、レティシアの寝室には静かな灯がともっていた。
窓辺に置かれた小さな花瓶の中には、一輪の白いバラ。
その花弁の中心には、淡く青い光が宿っていた。
指輪の輝きが反射して、部屋全体を淡い光で包み込む。
彼女はその光を見つめながら、心の中で静かに呟いた。
(――ありがとう、セドリック。
あなたがいてくれるだけで、もう怖くないわ)
外では、春の雨が静かに降っている。
それはまるで、二人の“契約”を清めるような優しい雨だった。
---
> 氷のように冷たい指輪が、愛の証へと変わる夜。
それは、契約の夫婦が“真実の夫婦”へと歩み出した、最初の奇跡だった。
0
あなたにおすすめの小説
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
あなたの瞳に私を映してほしい ~この願いは我儘ですか?~
四折 柊
恋愛
シャルロッテは縁あって好意を寄せていた人と婚約することが出来た。彼に好かれたくて距離を縮めようとするが、彼には好きな人がいるようで思うようにいかない。一緒に出席する夜会で彼はいつもその令嬢を目で追っていることに気付く。「私を見て」その思いが叶わずシャルロッテはとうとう婚約の白紙を望んだ。その後、幼馴染と再会して……。(前半はシリアスですが後半は甘めを目指しています)
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
別れたいようなので、別れることにします
天宮有
恋愛
伯爵令嬢のアリザは、両親が優秀な魔法使いという理由でルグド王子の婚約者になる。
魔法学園の入学前、ルグド王子は自分より優秀なアリザが嫌で「力を抑えろ」と命令していた。
命令のせいでアリザの成績は悪く、ルグドはクラスメイトに「アリザと別れたい」と何度も話している。
王子が婚約者でも別れてしまった方がいいと、アリザは考えるようになっていた。
覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る
金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。
ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの?
お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。
ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。
少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。
どうしてくれるのよ。
ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ!
腹立つわ〜。
舞台は独自の世界です。
ご都合主義です。
緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。
あなたのおかげで吹っ切れました〜私のお金目当てならお望み通りに。ただし利子付きです
じじ
恋愛
「あんな女、金だけのためさ」
アリアナ=ゾーイはその日、初めて婚約者のハンゼ公爵の本音を知った。
金銭だけが目的の結婚。それを知った私が泣いて暮らすとでも?おあいにくさま。あなたに恋した少女は、あなたの本音を聞いた瞬間消え去ったわ。
私が金づるにしか見えないのなら、お望み通りあなたのためにお金を用意しますわ…ただし、利子付きで。
地味でつまらない私は、殿下の婚約者として相応しくなかったのではありませんか?
木山楽斗
恋愛
「君のような地味でつまらない女は僕には相応しくない」
侯爵令嬢イルセアは、婚約者である第三王子からある日そう言われて婚約破棄された。
彼は貴族には華やかさが重要であると考えており、イルセアとは正反対の派手な令嬢を婚約者として迎えることを、独断で決めたのである。
そんな彼の行動を愚かと思いながらも、イルセアは変わる必要があるとも考えていた。
第三王子の批判は真っ当なものではないと理解しながらも、一理あるものだと彼女は感じていたのである。
そこでイルセアは、兄の婚約者の手を借りて派手過ぎない程に自らを着飾った。
そして彼女は、婚約破棄されたことによって自身に降りかかってきた悪評などを覆すためにも、とある舞踏会に臨んだのだ。
その舞踏会において、イルセアは第三王子と再会することになった。
彼はイルセアのことを誰であるか知らずに、初対面として声をかけてきたのである。
意気揚々と口説いてくる第三王子に対して、イルセアは言葉を返した。
「地味でつまらない私は、殿下の婚約者として相応しくなかったのではありませんか?」と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる