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第4章「反撃の誓い」
4-2 仲間たちの絆
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4-2 仲間たちの絆
ヴァリスの朝は、王都よりもずっと早い。
太陽が山の端から顔を出す前に、鍛冶場の槌音が響き、子どもたちの笑い声が交じり合う。
冷たい空気にパンとスープの香りが溶け、ルナリエは久しぶりに“人の息づかい”を感じていた。
「おはようございます、ルナさん!」
声をかけてきたのは、髪を三つ編みにした少女・リオナ。
まだ十五にも満たないが、家族を戦で失い、ヴァリスで孤児の世話をしている。
「おはよう、リオナ。今日も早いのですね」
「パンを焼くのが私の仕事ですから! それに――」
少女は笑顔で言った。
「ルナさんの朝の顔が見られると、なんだか今日も頑張れる気がして!」
その言葉に、ルナリエは思わず笑ってしまう。
「……あなたたちに、そんな風に言われたのは初めてですわ」
「本当ですか? 王女様だったら、みんな憧れてたんじゃ……」
「いいえ。憧れられていたのは“氷の姫”という名だけ。
本当の私は、いつもひとりでしたの」
リオナは首を傾げ、真っすぐな瞳で彼女を見た。
「でも今は違います。みんな、ルナさんが大好きです!」
「ふふ、そう言ってもらえるなら……もう少しパンを分けてくださいな」
「もちろんです!」
笑い合う声が、朝の光に溶けていく。
この地では身分も血筋も関係ない。
ただ、共に働き、共に笑い、同じ食卓を囲む――
それが“生きる”ということなのだと、ルナリエは初めて知った。
***
昼。
オルヴィンは村の防衛訓練を指導していた。
男も女も、老いも若きも、武器を持ち、盾を構える。
王国で“平民が剣を取る”などあり得なかった光景に、ルナリエは息を呑む。
「恐れず、踏み込め! 剣はお前の意志そのものだ!」
オルヴィンの声が響く。
その横で、彼の指導を見つめていた青年が声を上げた。
「隊長! あんたの嫁さん、見物に来てるぞ!」
「誰が嫁だ」
「いや、もうそう見えるって! なぁみんな!」
「おー!」
訓練場がどっと沸いた。
ルナリエの頬が一瞬で赤く染まる。
「ちょ、ちょっと……!」
「落ち着け。あいつら、軽口叩くのが癖なんだ」
「で、ですが……!」
「気にするな。……まあ、否定はしないが」
「なっ……!」
その一言で、さらに顔が真っ赤になる。
兵たちの笑い声がまた広がり、場の空気は温かく包まれた。
***
その日の夕暮れ、ルナリエは薬草畑にいた。
この地に来てから、彼女は医療や薬学の知識を生かし、負傷者の治療を手伝っていた。
風に揺れるハーブの香りに、彼女の心も静まっていく。
「……あなたがここにいてくれて、助かっている」
背後から聞こえた声に、振り向く。
オルヴィンが焚き火用の薪を抱えて立っていた。
「みんな、あなたを“氷姫殿下”ではなく、“ルナ”と呼びますね」
「そうですね。……少しくすぐったいですが、悪くありませんわ」
「お前が“人の温もり”を知った証拠だ」
「ふふ……そうかもしれません」
ルナリエは膝をつき、ハーブを摘み取る。
「オルヴィン。わたくし、王宮では一度も誰かに“ありがとう”を言ったことがありませんでした。
言葉にするより、期待されることが当たり前だと思っていたのです」
「……それが、貴族という鎧の重さだ」
「でも、ここでは違います。
リオナが朝食を作ってくれる。鍛冶職人のドランが剣を磨いてくれる。
皆が、自分の力で生きている。
だからこそ――わたくしも、誰かの力になりたい」
その瞳は、夜空の星よりもまっすぐで、澄んでいた。
オルヴィンは少し黙ってから、低く呟く。
「……お前はもう、十分に誰かを支えているさ。
俺も含めて、な」
ルナリエは目を瞬かせる。
そして、そっと笑った。
「……それを言うなら、あなたこそ。
わたくしに“生きる意味”をくれた人です」
二人の間に、しばし沈黙が流れる。
焚き火の火がぱちりと弾け、赤い光が彼らの横顔を照らした。
「……ルナ」
「はい?」
「もし、もう一度戦う時が来たら――俺はお前の剣になる」
「ならば、わたくしはあなたの盾になります」
その言葉に、オルヴィンが微かに笑う。
「剣と盾が揃えば、怖いものはないな」
「ええ、絶対に負けませんわ」
その夜。
ヴァリスの空に流れ星が落ちた。
村人たちはそれを見て、「新しい時代の星だ」と囁いた。
その光の下で、ルナリエは初めて心から願った。
> 「この仲間たちを守りたい。彼らと共に、生きたい――」
氷の姫ではなく、ただの“ルナ”として。
彼女の胸に宿ったその想いが、やがて王国を動かす炎となるのだった。
---
ヴァリスの朝は、王都よりもずっと早い。
太陽が山の端から顔を出す前に、鍛冶場の槌音が響き、子どもたちの笑い声が交じり合う。
冷たい空気にパンとスープの香りが溶け、ルナリエは久しぶりに“人の息づかい”を感じていた。
「おはようございます、ルナさん!」
声をかけてきたのは、髪を三つ編みにした少女・リオナ。
まだ十五にも満たないが、家族を戦で失い、ヴァリスで孤児の世話をしている。
「おはよう、リオナ。今日も早いのですね」
「パンを焼くのが私の仕事ですから! それに――」
少女は笑顔で言った。
「ルナさんの朝の顔が見られると、なんだか今日も頑張れる気がして!」
その言葉に、ルナリエは思わず笑ってしまう。
「……あなたたちに、そんな風に言われたのは初めてですわ」
「本当ですか? 王女様だったら、みんな憧れてたんじゃ……」
「いいえ。憧れられていたのは“氷の姫”という名だけ。
本当の私は、いつもひとりでしたの」
リオナは首を傾げ、真っすぐな瞳で彼女を見た。
「でも今は違います。みんな、ルナさんが大好きです!」
「ふふ、そう言ってもらえるなら……もう少しパンを分けてくださいな」
「もちろんです!」
笑い合う声が、朝の光に溶けていく。
この地では身分も血筋も関係ない。
ただ、共に働き、共に笑い、同じ食卓を囲む――
それが“生きる”ということなのだと、ルナリエは初めて知った。
***
昼。
オルヴィンは村の防衛訓練を指導していた。
男も女も、老いも若きも、武器を持ち、盾を構える。
王国で“平民が剣を取る”などあり得なかった光景に、ルナリエは息を呑む。
「恐れず、踏み込め! 剣はお前の意志そのものだ!」
オルヴィンの声が響く。
その横で、彼の指導を見つめていた青年が声を上げた。
「隊長! あんたの嫁さん、見物に来てるぞ!」
「誰が嫁だ」
「いや、もうそう見えるって! なぁみんな!」
「おー!」
訓練場がどっと沸いた。
ルナリエの頬が一瞬で赤く染まる。
「ちょ、ちょっと……!」
「落ち着け。あいつら、軽口叩くのが癖なんだ」
「で、ですが……!」
「気にするな。……まあ、否定はしないが」
「なっ……!」
その一言で、さらに顔が真っ赤になる。
兵たちの笑い声がまた広がり、場の空気は温かく包まれた。
***
その日の夕暮れ、ルナリエは薬草畑にいた。
この地に来てから、彼女は医療や薬学の知識を生かし、負傷者の治療を手伝っていた。
風に揺れるハーブの香りに、彼女の心も静まっていく。
「……あなたがここにいてくれて、助かっている」
背後から聞こえた声に、振り向く。
オルヴィンが焚き火用の薪を抱えて立っていた。
「みんな、あなたを“氷姫殿下”ではなく、“ルナ”と呼びますね」
「そうですね。……少しくすぐったいですが、悪くありませんわ」
「お前が“人の温もり”を知った証拠だ」
「ふふ……そうかもしれません」
ルナリエは膝をつき、ハーブを摘み取る。
「オルヴィン。わたくし、王宮では一度も誰かに“ありがとう”を言ったことがありませんでした。
言葉にするより、期待されることが当たり前だと思っていたのです」
「……それが、貴族という鎧の重さだ」
「でも、ここでは違います。
リオナが朝食を作ってくれる。鍛冶職人のドランが剣を磨いてくれる。
皆が、自分の力で生きている。
だからこそ――わたくしも、誰かの力になりたい」
その瞳は、夜空の星よりもまっすぐで、澄んでいた。
オルヴィンは少し黙ってから、低く呟く。
「……お前はもう、十分に誰かを支えているさ。
俺も含めて、な」
ルナリエは目を瞬かせる。
そして、そっと笑った。
「……それを言うなら、あなたこそ。
わたくしに“生きる意味”をくれた人です」
二人の間に、しばし沈黙が流れる。
焚き火の火がぱちりと弾け、赤い光が彼らの横顔を照らした。
「……ルナ」
「はい?」
「もし、もう一度戦う時が来たら――俺はお前の剣になる」
「ならば、わたくしはあなたの盾になります」
その言葉に、オルヴィンが微かに笑う。
「剣と盾が揃えば、怖いものはないな」
「ええ、絶対に負けませんわ」
その夜。
ヴァリスの空に流れ星が落ちた。
村人たちはそれを見て、「新しい時代の星だ」と囁いた。
その光の下で、ルナリエは初めて心から願った。
> 「この仲間たちを守りたい。彼らと共に、生きたい――」
氷の姫ではなく、ただの“ルナ”として。
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