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第6章「幸福と静寂の果てに」
6-2:旅人の訪問
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6-2 旅人の訪問
その日、庭の木陰に春の風が吹き抜けていた。
ルナリエはティーポットを片手に、テラスのテーブルを整えていた。
テーブルクロスは真新しい生成りの布。
陶器のティーセットには花の絵が描かれており、
その香りだけで、まるで過去の冬を忘れさせるようだった。
「オルヴィン、今日は来客があるのです」
「ええ、わかっています。あなたが朝からそわそわしていましたから」
「そ、そんなにわかりやすかったですか?」
「あなたの動きは、訓練中の新人騎士より落ち着きがなかったですよ」
ルナリエは頬を赤らめ、少しむくれたように言う。
「失礼ですわね。……けれど、久しぶりに皆に会えるのですもの。仕方ありません」
オルヴィンが柔らかく笑うと、庭の門が開く音がした。
そして――
「ルナリエ様!」
元侍女のセラが駆け込んできた。
その後ろには、かつての騎士団仲間たち――
灰色のマントを羽織った副団長ランス、
陽気な傭兵アデル、そして医師のミーナの姿があった。
「……本当に、生きて……!」
セラがルナリエを見るなり、涙をあふれさせて抱きついた。
「あなたがあの日、置き手紙を残して去って……毎日祈っていたのです!」
ルナリエは驚きながらも、彼女を優しく抱きしめ返した。
「もう大丈夫。私はこうして、生きています。
そして、あなたの祈りが届いたからこそ……ここにいられるのですよ」
涙と笑いが入り混じり、庭に懐かしい声が響く。
ランスが口を開いた。
「オルヴィン団長、まさか本当に“姫殿下と二人きりで山に籠る”とは……!」
「……言い方に悪意があるぞ」
「いやあ、でも幸せそうでなによりです!」
アデルがにやにやと笑いながら、ミーナの肘鉄を食らう。
ミーナは苦笑しながらも、ルナリエに頭を下げた。
「お二人がいなければ、私たちは王都を取り戻せませんでした。
今も医師として、あの戦いで救われた命の多さを実感しています」
ルナリエはそっと目を閉じた。
「ありがとう……。でもね、ミーナ。私たちが救ったのは命だけではないの。
“希望”なのです。あなたたちが、また笑えるように」
その言葉に、誰もが黙って頷いた。
やがて、オルヴィンが厨房からハーブティーを運んできた。
「全員分ありますよ。庭のハーブを使いました」
「えっ、オルヴィンさんが淹れたの?」とアデルが驚く。
「戦場では毒見係をしていたからな。味には自信がある」
「物騒な経歴ですわね」ルナリエが苦笑する。
全員でティーカップを掲げた。
透き通るような香りが漂い、春の陽気とともに心を満たす。
「こうして集まれる日が来るなんて、夢のようです」
セラが微笑む。
ルナリエは頷き、空を見上げた。
雲の切れ間から差し込む陽光が、まるで祝福のように庭を照らす。
「過去があるから、今が愛おしいのですね……」
その言葉に、全員が静かに微笑んだ。
誰もが傷つき、失い、そしてようやく辿り着いた場所。
ここにあるのは、戦いではなく、“日常”という名の奇跡。
オルヴィンがルナリエの隣に腰を下ろし、
彼女の手をそっと握った。
「ルナ……みんなが笑っている。それが一番の勲章ですよ」
「ええ。もう、誰も凍えなくていい。
この国も、この心も――ようやく、春になりましたもの」
風が吹き抜け、庭の花々が揺れる。
白い花びらが舞い、まるでこのひとときを永遠に閉じ込めようとするかのようだった。
その日、庭の木陰に春の風が吹き抜けていた。
ルナリエはティーポットを片手に、テラスのテーブルを整えていた。
テーブルクロスは真新しい生成りの布。
陶器のティーセットには花の絵が描かれており、
その香りだけで、まるで過去の冬を忘れさせるようだった。
「オルヴィン、今日は来客があるのです」
「ええ、わかっています。あなたが朝からそわそわしていましたから」
「そ、そんなにわかりやすかったですか?」
「あなたの動きは、訓練中の新人騎士より落ち着きがなかったですよ」
ルナリエは頬を赤らめ、少しむくれたように言う。
「失礼ですわね。……けれど、久しぶりに皆に会えるのですもの。仕方ありません」
オルヴィンが柔らかく笑うと、庭の門が開く音がした。
そして――
「ルナリエ様!」
元侍女のセラが駆け込んできた。
その後ろには、かつての騎士団仲間たち――
灰色のマントを羽織った副団長ランス、
陽気な傭兵アデル、そして医師のミーナの姿があった。
「……本当に、生きて……!」
セラがルナリエを見るなり、涙をあふれさせて抱きついた。
「あなたがあの日、置き手紙を残して去って……毎日祈っていたのです!」
ルナリエは驚きながらも、彼女を優しく抱きしめ返した。
「もう大丈夫。私はこうして、生きています。
そして、あなたの祈りが届いたからこそ……ここにいられるのですよ」
涙と笑いが入り混じり、庭に懐かしい声が響く。
ランスが口を開いた。
「オルヴィン団長、まさか本当に“姫殿下と二人きりで山に籠る”とは……!」
「……言い方に悪意があるぞ」
「いやあ、でも幸せそうでなによりです!」
アデルがにやにやと笑いながら、ミーナの肘鉄を食らう。
ミーナは苦笑しながらも、ルナリエに頭を下げた。
「お二人がいなければ、私たちは王都を取り戻せませんでした。
今も医師として、あの戦いで救われた命の多さを実感しています」
ルナリエはそっと目を閉じた。
「ありがとう……。でもね、ミーナ。私たちが救ったのは命だけではないの。
“希望”なのです。あなたたちが、また笑えるように」
その言葉に、誰もが黙って頷いた。
やがて、オルヴィンが厨房からハーブティーを運んできた。
「全員分ありますよ。庭のハーブを使いました」
「えっ、オルヴィンさんが淹れたの?」とアデルが驚く。
「戦場では毒見係をしていたからな。味には自信がある」
「物騒な経歴ですわね」ルナリエが苦笑する。
全員でティーカップを掲げた。
透き通るような香りが漂い、春の陽気とともに心を満たす。
「こうして集まれる日が来るなんて、夢のようです」
セラが微笑む。
ルナリエは頷き、空を見上げた。
雲の切れ間から差し込む陽光が、まるで祝福のように庭を照らす。
「過去があるから、今が愛おしいのですね……」
その言葉に、全員が静かに微笑んだ。
誰もが傷つき、失い、そしてようやく辿り着いた場所。
ここにあるのは、戦いではなく、“日常”という名の奇跡。
オルヴィンがルナリエの隣に腰を下ろし、
彼女の手をそっと握った。
「ルナ……みんなが笑っている。それが一番の勲章ですよ」
「ええ。もう、誰も凍えなくていい。
この国も、この心も――ようやく、春になりましたもの」
風が吹き抜け、庭の花々が揺れる。
白い花びらが舞い、まるでこのひとときを永遠に閉じ込めようとするかのようだった。
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