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第三十六話 選ばれる側
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第三十六話 選ばれる側
港湾再編と物流計画の成功は、侯爵家の立場を確実に変えていました。
かつては条件を提示される側。
今は、選ぶ側。
それは心地よい。
だからこそ、危うい。
午前、王宮から新たな打診が届く。
王家直轄の財務監査補佐。
名誉職ではない。
実権を伴う役割。
「これは……重いな」
アレクシスが書状を見つめる。
義弟は目を輝かせた。
「兄上、これは大出世だ」
義母も静かに頷く。
「王家が信頼を置いている証」
私は黙って書状を読む。
権限は大きい。
だが責任はそれ以上。
「受けるべきでしょうか」
アレクシスが私を見る。
以前なら、迷わず受けた。
今は、問いがある。
「任期は三年」
「ええ」
「侯爵領の運営は」
「分担可能」
「王宮内の敵対勢力は」
「必ず生まれます」
彼は小さく息を吐く。
「つまり、甘くない」
「当然です」
午後、王宮にて事前協議。
広間には複数の貴族が並ぶ。
「侯爵家なら安心だ」
そう言う者もいれば、
「急激に目立ちすぎでは」
と囁く者もいる。
選ばれる側になると、嫉妬も増える。
会議後、ヴァレンティンが近づいた。
「王家直轄とは、強い」
「強さではありません」
私は淡々と答える。
「責任の増加です」
彼はわずかに笑う。
「以前の侯爵家なら、喜び勇んで受けた」
「今は違う」
その言葉に、彼は沈黙した。
夜。
庭園で、アレクシスが言う。
「私は受けたい」
「理由は」
「選ばれた責任を果たしたい」
私は彼を見つめる。
「拡張ではありませんか」
「違う」
彼は首を振る。
「以前の私なら、名誉に惹かれただろう。
だが今は、制度を正したい」
港湾再編で見た不透明さ。
高利契約の歪み。
「王家の内部から整えたい」
その声は真剣だった。
「領はどうされますか」
「信頼できる体制を築く」
私は静かに頷く。
「ならば、条件を」
「何だ」
「任期中も、共有は続ける」
彼はわずかに笑う。
「契約は終わったが、共有は終わらない」
「当然です」
翌日、王宮へ正式回答を送る。
受諾。
ただし、任期と責任範囲の明文化を条件とする。
王家はそれを承認した。
侯爵家は、今や選ばれる側。
だが、選ばれるとは自由を失うことでもある。
屋敷の灯りは穏やかだ。
白い結婚は終わり、契約も消えた。
残ったのは、共に選ぶという姿勢。
ざまあの余韻は過ぎ去った。
本当の試練はこれから。
選ばれる側になった侯爵家は、今度は制度そのものと向き合う。
そして私は、隣に立つ。
名誉ではなく、責任を選んだ彼の横で。
侯爵家は、新たな局面へと進もうとしているのです。
港湾再編と物流計画の成功は、侯爵家の立場を確実に変えていました。
かつては条件を提示される側。
今は、選ぶ側。
それは心地よい。
だからこそ、危うい。
午前、王宮から新たな打診が届く。
王家直轄の財務監査補佐。
名誉職ではない。
実権を伴う役割。
「これは……重いな」
アレクシスが書状を見つめる。
義弟は目を輝かせた。
「兄上、これは大出世だ」
義母も静かに頷く。
「王家が信頼を置いている証」
私は黙って書状を読む。
権限は大きい。
だが責任はそれ以上。
「受けるべきでしょうか」
アレクシスが私を見る。
以前なら、迷わず受けた。
今は、問いがある。
「任期は三年」
「ええ」
「侯爵領の運営は」
「分担可能」
「王宮内の敵対勢力は」
「必ず生まれます」
彼は小さく息を吐く。
「つまり、甘くない」
「当然です」
午後、王宮にて事前協議。
広間には複数の貴族が並ぶ。
「侯爵家なら安心だ」
そう言う者もいれば、
「急激に目立ちすぎでは」
と囁く者もいる。
選ばれる側になると、嫉妬も増える。
会議後、ヴァレンティンが近づいた。
「王家直轄とは、強い」
「強さではありません」
私は淡々と答える。
「責任の増加です」
彼はわずかに笑う。
「以前の侯爵家なら、喜び勇んで受けた」
「今は違う」
その言葉に、彼は沈黙した。
夜。
庭園で、アレクシスが言う。
「私は受けたい」
「理由は」
「選ばれた責任を果たしたい」
私は彼を見つめる。
「拡張ではありませんか」
「違う」
彼は首を振る。
「以前の私なら、名誉に惹かれただろう。
だが今は、制度を正したい」
港湾再編で見た不透明さ。
高利契約の歪み。
「王家の内部から整えたい」
その声は真剣だった。
「領はどうされますか」
「信頼できる体制を築く」
私は静かに頷く。
「ならば、条件を」
「何だ」
「任期中も、共有は続ける」
彼はわずかに笑う。
「契約は終わったが、共有は終わらない」
「当然です」
翌日、王宮へ正式回答を送る。
受諾。
ただし、任期と責任範囲の明文化を条件とする。
王家はそれを承認した。
侯爵家は、今や選ばれる側。
だが、選ばれるとは自由を失うことでもある。
屋敷の灯りは穏やかだ。
白い結婚は終わり、契約も消えた。
残ったのは、共に選ぶという姿勢。
ざまあの余韻は過ぎ去った。
本当の試練はこれから。
選ばれる側になった侯爵家は、今度は制度そのものと向き合う。
そして私は、隣に立つ。
名誉ではなく、責任を選んだ彼の横で。
侯爵家は、新たな局面へと進もうとしているのです。
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