一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお

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第12話 料理の悲鳴は貴族の悲鳴

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“公爵家料理崩壊事件 ― 特級厨師シャーリーの影響力”**

 シャーリーが王宮厨師となって数週間。
 一方その頃、ローウェン公爵家では誰も予想していなかった地獄が始まっていた。


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■1 全ては「あの料理」を知ってしまったことから

 婚約していた頃。
 ヒューバートは一度だけ、シャーリーの実家に招かれたことがある。

 そのときシャーリーが出した手料理。

 魔力循環を整えた野菜。
 繊維の奥まで柔らかくなる特殊火入れ。
 温度が一定に保たれる鍋。
 そして味の広がりを強化する微弱魔法。

 シャーリー本人は
「家の手伝いをしてるだけよ~」
と言っていたが、

実際は“特級厨師レベルの魔導料理”だった。

(……あれは……本物だった……
 私が食べた最高の料理……)

 ヒューバートは一生忘れない味として脳が覚えてしまった。


---

■2 婚約破棄後、公爵家で異変が起きる

公爵家 食堂。

「……なんだこのロースト肉は?」

当主が眉間に皺を寄せる。

「固い。味も均一ではない。
 料理長、腕が落ちたのか?」

料理長は震えながら答えた。

「……申し訳ございません。
 火加減が、どうしても……あの時のようには……」

ヒューバートの表情が引きつる。

(あの時の……?)

料理長は言った。

「……シャーリー様がいらした頃、
 “たまに厨房を通って魔法をかけてくださっていた”
 あの時の味が、どうしても再現できません」

ヒューバート
「料理に魔法? 無自覚で?
 そんな馬鹿な……!」

料理長
「いいえ。シャーリー様は特級厨師……
 “料理に魔法を組み込める唯一の存在”なのです」


---

■3 ヒューバート、とうとう爆発する

 料理が連日不安定になり、公爵当主は激怒。

 料理長は厨房に呼び出され、ヒューバートが怒鳴った。

「以前、シャーリーの作ったあの料理を!
 なぜプロのお前らが再現できん!?」

料理長は顔を真っ青にしながら叫んだ。


---

■料理長の、プロとしての限界宣言

「殿下!
 シャーリー様は特級厨師、料理人の最高峰です。
 一級厨師ごときの私には再現不可能です!!」

厨房の空気が凍りつく。

ヒューバート
「特級……厨師……?
 シャーリーが……?」

料理長
「火加減、食材の魔力保持、味の増幅。
 どれも我々の技術体系とは別物です!!」

料理人A
「特級厨師は……“味覚の魔術師”とも呼ばれます。
 我々一級厨師では到底届きません!」

料理人B
「シャーリー様の料理は……
 プロ同士から見ても異常です!!」

ヒューバート
「で、でも……努力すれば――」

料理長
「殿下!!
 我々にあの料理の再現を求めるのは……!」

料理人全員が揃って叫んだ。

「殺す気ですかあああああ!!!」

そして本当に全員辞めていった。


---

■4 料理人が集まらない公爵家

「料理人を募集? 絶対に無理ですよ!!」

「特級厨師の料理を“再現しろ”など狂気の要求です!」

「ローウェン家……料理人殺しの家として有名です!」

公爵家は完全に料理難民状態になった。

晩餐会の料理は、ついに
パンと薄いスープのみ になり、
社交界は噂で大炎上。

「ローウェン家、料理壊滅らしいわよ」

「シャーリー嬢を捨てた天罰ね」

「公爵家の食卓、もはや騎士団の野営以下って噂よ」


---

■5 王宮に届く噂・国王のぼやき

王宮 食堂。

「シャーリー、今日の料理も最高だ」

「ありがとうございます陛下」

そこへ報告が入る。

「ローウェン公爵家、料理人全滅のため晩餐会中止とのことです」

国王は深いため息をついた。

「……シャーリーを手放すとは、まさに大馬鹿者だな」

シャーリー
「陛下……褒められているのは嬉しいですが……複雑です」


---

■6 ナターシャの陰ガッツポーズ(毎回恒例)

柱の陰でこっそり聞いていたナターシャが、
こぶしを握って小さく叫ぶ。

「…………っしゃああ!!」

部下
「ナターシャ様、バレてますよ」

「バレてないわよ!!
 私はただ……正義が果たされた気がしただけよ!!」

「シャーリー殿に関して感情が忙しすぎます」


---

■7 ヒューバート、完全に壊れる

ヒューバートは食卓の前で膝を抱えていた。

「……シャーリーの……料理じゃないと……
 俺は……俺は……」

「お坊ちゃま、何かお召し上がりくださ――」

「無理だぁぁぁあ!!
 もうシャーリーの料理じゃないと生きられない!!!」

「情けなさすぎます!!!!!」

ローウェン家の没落は、誰の目にも明らかだった。


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