一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお

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第13話黄金のスープは爆発から生まれる

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 王宮魔導研究室。
 今日はナターシャが一人で新魔術の調整中だった。

「よし……今日こそ成功させるわ。《魔力圧縮式多層結界(コンプレッション・バリア)》……出力を少しずつ上げて……」

 集中していたナターシャの額には汗が滲む。

(ここまで来たら後戻りはできない……!
 私は一級魔法使い、王国最高峰の魔術師……
 あんな特級厨師なんかに負けてたまるものですか!)

 ナターシャが気合を入れた、その瞬間。

コンコン。

「ナターシャ、スープの差し入れに来たわよ~」

「今だけは来るなあああああ!!!!」

 ドアが開く。

ガチャッ。

シャーリー
「わ、わっ!?」

ナターシャ
「――きゃあああああああ!!!」


---

■研究室、爆発

 ナターシャが制御していた結界が一気に暴走し、
 研究室全体をぬりつぶすように光が広がった。

ドォォォォン!!!

 ものすごい音と共に、魔術爆発が研究室を揺らした。

シャーリー
「きゃっ! な、なにこれ!?すごい光……!」

ナターシャ
「ちょっと!? なんで今入るのよ!!
 タイミング最悪よ!!」


---

■爆発のあとに残ったもの

 爆心地にあったはずのシャーリーのスープ鍋が、
 なぜか――

黄金に輝いていた。

鍋の中
「ぽわぁぁぁ~ん……(神々しい湯気)」

シャーリー
「えっ……?」

ナターシャ
「嘘でしょ……?
 なんでスープが光ってるのよ……?」

部下リカルド
「さすがに……これは……魔術実験ではなく料理実験なのでは……?」

ナターシャ
「違うわよ!?!?
 私は研究してただけ!!
 なんで料理が完成してるのよ!!?」


---

■シャーリーが味見する

シャーリーはおそるおそる黄金の液体をすくい、口に含む。

「…………!」

リカルド
「シャ、シャーリー殿?」

シャーリー
「ナターシャ……すごいわこれ……
 素材の旨味が魔力で極限まで引き出されてる……
 しかも味の層が……複雑に重なって……
 これは……」

ナターシャ(ゴクリ)
「……ど、どういう味なのよ……?」

シャーリー
「“神に選ばれたスープの味”って感じ」

ナターシャ
「意味がわからないのよ!!!?」


---

■国王、まっしぐらに来る

騒ぎを聞きつけ、国王が研究室へ駆け込んだ。

「なにごとだ!? 今の爆発は……」

シャーリー
「あ、陛下。スープできました」

国王
「……スープ?」

 鍋が黄金に光っているのを見て、
 国王は震える手でスプーンを取った。

一口。

「……………………」

ナターシャ
(ど、どうなのよ……?)

国王
「……うますぎて……もう笑うしかない……!!」

ナターシャ
「なんでぇぇぇぇぇえええ!!?」

シャーリー
「ナターシャの魔術、料理と相性がいいのねぇ」

ナターシャ
「相性よくていいわけないでしょ!?
 私は魔法使い!!!
 料理人じゃないの!!」

リカルド
「才能って残酷ですね」

ナターシャ
「誰もうまいこと言わなくていいわよ!!!!!」


---

■ナターシャのメンタル崩壊

ナターシャ
「なんで……?
 私は最強の一級魔法使いなのよ……?
 なんで爆発しただけでスープが完成するの……?
 料理のほうが向いてるってこと……?」

シャーリー
「向いてると思うわ♪」

ナターシャ
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


---

■国王の追い打ち

国王
「ナターシャよ、次の休日に王宮厨房でもう一回爆発してくれんか?」

ナターシャ
「絶対にイヤよ!!!!!」

リカルド
「陛下、爆発依頼はやめましょう」


---

■シャーリーの素直な一言(追撃)

シャーリー
「でもナターシャ、料理苦手そうに見えたけど、
 実は天才なのかもしれないわよ?」

ナターシャ
「その言葉が一番ダメージ大きいのよぉぉぉぉ!!!!」


---
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