一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお

文字の大きさ
16 / 33

第15話料理人、厨房で魔王軍を迎撃する

しおりを挟む
 その日の昼過ぎ。
 王宮厨房はいつも通り、活気に満ちていた。

「急いで! 陛下の昼食はあと十五分!」 「肉は厚めに! スープは昨日の黄金スープに近づけろ!」 「無理言うな!!」

 料理人たちの怒号が飛び交う中、シャーリーはごきげんで仕込みをしていた。

シャーリー
「今日のメインは……香草焼きにしようかな♪」

 いつもの平和な厨房――
 のはずだった。


---

■厨房に、場違いな足音

 ドスン……ドスン……。

 床がほんのわずかに揺れた。

料理人A
「な、なんだ今の……?」

料理人B
「地震か……?」

 次の瞬間、厨房の扉が勢いよく破られる。

 ──ズガァァン!!

魔王軍残党
「いたぞォォ!! 王宮の要、“特級厨師”シャーリー・ドット!!
 魔王様の復讐のため、貴様を討つ!!」

料理人全員
「なぜ料理人狙い!?!?」

シャーリー
「あ、私? まあ料理の腕を狙われるのは仕方ないわよね~」

ナレーション
(仕方なくはない)


---

■料理人たち、絶望する

魔族A
「さあ覚悟しろ!!」

料理人C
「ひぃ!! 武器もないのにどうしろと!?」

料理人D
「包丁じゃ勝てねぇ!!」

シャーリー
「包丁は危ないのでしまってくださいね」

料理人たち
「いや危ないのはあっち!!」


---

■特級厨師、調理器具を選ぶ

 シャーリーは、落ち着いた動きで棚を開け……
 フライパンと、お玉をひょいと取り出した。

ナターシャ(偶然通りかかる)
「……なんでその二つなの?」

シャーリー
「だって魔法の杖、今どこに置いたかわからないし♪」
(※この人、魔法の杖なくても魔法が使える)

ナターシャ
「いや、軽いノリで魔法使うのやめて……!」


---

■シャーリー、戦闘開始

シャーリー
「じゃあ、いきますね。
 《遠火の強火(ロングフレイム・ハイヒート)》!」

 シャーリーがフライパンを軽く振る……
 その瞬間、見えない熱が一直線に魔族へ走る。

魔族達
「ぎゃああああああ!! 背中が!! 炙られてるぅぅ!!」

料理人A
「し、調理されてる……!」

料理人B
「フライパン振っただけで……なんて火力だ……!」

ナターシャ
「なんでそんなので魔法が使えるのよ!!?」

シャーリー
「え? 魔法って“道具に魔力を流し込んで使うもの”でしょ?」

ナターシャ
「普通は杖ぃぃぃ!!!」


---

■魔族たち、第二波突入

魔族リーダー
「怯むな! 特級厨師は危険だ!!
 突撃――!」

シャーリー
「は~い、次いきますね」

ナターシャ
「次ってなに!?」

シャーリー
「《微弱火炎(スローフレイム)》
 ……これで弱火でコトコトいじめます♪」

魔族たち
「弱火!?
 や、やめ……身体が……じわじわ……ッ!?」

料理人C
「こ、怖い……弱火のほうがなんか怖い……!」

ナターシャ
「あなたの“弱火”は弱火じゃないのよ!!」


---

■魔族リーダー、叫ぶ

魔族リーダー
「た、退却だ!!
 この女は……魔王軍の敵じゃない……
 “料理界の魔王”だ……!!」

シャーリー
「あら、お褒めに預かり光栄♪」

ナターシャ
「褒め言葉じゃないわよ!?
 なんでそんなに嬉しそうなの!?」


---

■厨房、戦場後の静寂

 魔族たちは全員、きれいに焼けた状態で倒れていた。

料理人B
「……あの、これ……どう処理すれば……?」

シャーリー
「焼け具合は悪くないけど、魔族は食べられないわよ?」

料理人たち
「問題はそこじゃない!!」

ナターシャ
「もうやだ……なんで料理人が王宮最強なのよ……」

シャーリー
「あ、ナターシャ。
 あとで新作スイーツ持っていくわね♪」

ナターシャ
「こわい!!
 その“あとで”がこわい!!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました

水上
恋愛
【全18話完結】 「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。 そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。 自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。 そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。 一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました

さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。 裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。 「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。 恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……? 温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。 ――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!? 胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!

殿下に寵愛されてませんが別にかまいません!!!!!

さら
恋愛
 王太子アルベルト殿下の婚約者であった令嬢リリアナ。けれど、ある日突然「裏切り者」の汚名を着せられ、殿下の寵愛を失い、婚約を破棄されてしまう。  ――でも、リリアナは泣き崩れなかった。  「殿下に愛されなくても、私には花と薬草がある。健気? 別に演じてないですけど?」  庶民の村で暮らし始めた彼女は、花畑を育て、子どもたちに薬草茶を振る舞い、村人から慕われていく。だが、そんな彼女を放っておけないのが、執着心に囚われた殿下。噂を流し、畑を焼き払い、ついには刺客を放ち……。  「どこまで私を追い詰めたいのですか、殿下」  絶望の淵に立たされたリリアナを守ろうとするのは、騎士団長セドリック。冷徹で寡黙な男は、彼女の誠実さに心を動かされ、やがて命を懸けて庇う。  「俺は、君を守るために剣を振るう」  寵愛などなくても構わない。けれど、守ってくれる人がいる――。  灰の大地に芽吹く新しい絆が、彼女を強く、美しく咲かせていく。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚
恋愛
婚約破棄された令嬢リオナは、家の体面を守るため、幼なじみであり王国騎士でもあるカイルと「白い結婚」をすることになった。 お互い干渉しない、心も体も自由な結婚生活――そのはずだった。 ……少なくとも、リオナはそう信じていた。 ところが結婚後、カイルの様子がおかしい。 距離を取るどころか、妙に優しくて、時に甘くて、そしてなぜか他の男性が近づくと怒る。 「お前は俺の妻だ。離れようなんて、思うなよ」 どうしてそんな顔をするのか、どうしてそんなに真剣に見つめてくるのか。 “白い結婚”のはずなのに、リオナの胸は日に日にざわついていく。 すれ違い、誤解、嫉妬。 そして社交界で起きた陰謀事件をきっかけに、カイルはとうとう本心を隠せなくなる。 「……ずっと好きだった。諦めるつもりなんてない」 そんなはずじゃなかったのに。 曖昧にしていたのは、むしろリオナのほうだった。 白い結婚から始まる、幼なじみ騎士の不器用で激しい独占欲。 鈍感な令嬢リオナが少しずつ自分の気持ちに気づいていく、溺愛逆転ラブストーリー。 「ゆっくりでいい。お前の歩幅に合わせる」 「……はい。私も、カイルと歩きたいです」 二人は“白い結婚”の先に、本当の夫婦を選んでいく――。 -

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~

北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!** 「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」  侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。 「あなたの侍女になります」 「本気か?」    匿ってもらうだけの女になりたくない。  レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。  一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。  レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。 ※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません) ※設定はゆるふわ。 ※3万文字で終わります ※全話投稿済です

処理中です...