一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお

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第15話料理人、厨房で魔王軍を迎撃する

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 その日の昼過ぎ。
 王宮厨房はいつも通り、活気に満ちていた。

「急いで! 陛下の昼食はあと十五分!」 「肉は厚めに! スープは昨日の黄金スープに近づけろ!」 「無理言うな!!」

 料理人たちの怒号が飛び交う中、シャーリーはごきげんで仕込みをしていた。

シャーリー
「今日のメインは……香草焼きにしようかな♪」

 いつもの平和な厨房――
 のはずだった。


---

■厨房に、場違いな足音

 ドスン……ドスン……。

 床がほんのわずかに揺れた。

料理人A
「な、なんだ今の……?」

料理人B
「地震か……?」

 次の瞬間、厨房の扉が勢いよく破られる。

 ──ズガァァン!!

魔王軍残党
「いたぞォォ!! 王宮の要、“特級厨師”シャーリー・ドット!!
 魔王様の復讐のため、貴様を討つ!!」

料理人全員
「なぜ料理人狙い!?!?」

シャーリー
「あ、私? まあ料理の腕を狙われるのは仕方ないわよね~」

ナレーション
(仕方なくはない)


---

■料理人たち、絶望する

魔族A
「さあ覚悟しろ!!」

料理人C
「ひぃ!! 武器もないのにどうしろと!?」

料理人D
「包丁じゃ勝てねぇ!!」

シャーリー
「包丁は危ないのでしまってくださいね」

料理人たち
「いや危ないのはあっち!!」


---

■特級厨師、調理器具を選ぶ

 シャーリーは、落ち着いた動きで棚を開け……
 フライパンと、お玉をひょいと取り出した。

ナターシャ(偶然通りかかる)
「……なんでその二つなの?」

シャーリー
「だって魔法の杖、今どこに置いたかわからないし♪」
(※この人、魔法の杖なくても魔法が使える)

ナターシャ
「いや、軽いノリで魔法使うのやめて……!」


---

■シャーリー、戦闘開始

シャーリー
「じゃあ、いきますね。
 《遠火の強火(ロングフレイム・ハイヒート)》!」

 シャーリーがフライパンを軽く振る……
 その瞬間、見えない熱が一直線に魔族へ走る。

魔族達
「ぎゃああああああ!! 背中が!! 炙られてるぅぅ!!」

料理人A
「し、調理されてる……!」

料理人B
「フライパン振っただけで……なんて火力だ……!」

ナターシャ
「なんでそんなので魔法が使えるのよ!!?」

シャーリー
「え? 魔法って“道具に魔力を流し込んで使うもの”でしょ?」

ナターシャ
「普通は杖ぃぃぃ!!!」


---

■魔族たち、第二波突入

魔族リーダー
「怯むな! 特級厨師は危険だ!!
 突撃――!」

シャーリー
「は~い、次いきますね」

ナターシャ
「次ってなに!?」

シャーリー
「《微弱火炎(スローフレイム)》
 ……これで弱火でコトコトいじめます♪」

魔族たち
「弱火!?
 や、やめ……身体が……じわじわ……ッ!?」

料理人C
「こ、怖い……弱火のほうがなんか怖い……!」

ナターシャ
「あなたの“弱火”は弱火じゃないのよ!!」


---

■魔族リーダー、叫ぶ

魔族リーダー
「た、退却だ!!
 この女は……魔王軍の敵じゃない……
 “料理界の魔王”だ……!!」

シャーリー
「あら、お褒めに預かり光栄♪」

ナターシャ
「褒め言葉じゃないわよ!?
 なんでそんなに嬉しそうなの!?」


---

■厨房、戦場後の静寂

 魔族たちは全員、きれいに焼けた状態で倒れていた。

料理人B
「……あの、これ……どう処理すれば……?」

シャーリー
「焼け具合は悪くないけど、魔族は食べられないわよ?」

料理人たち
「問題はそこじゃない!!」

ナターシャ
「もうやだ……なんで料理人が王宮最強なのよ……」

シャーリー
「あ、ナターシャ。
 あとで新作スイーツ持っていくわね♪」

ナターシャ
「こわい!!
 その“あとで”がこわい!!」


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