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第17話真魔王復活と、ナターシャの心が折れかけて折れきらない回
しおりを挟むその日――
空が割れた。
王都上空に巨大な赤黒い魔法陣が出現し、雷鳴のような叫びが響く。
『我は真魔王……千年の封印を破り、再びこの国を滅ぼさん……!』
城内の誰もが声を失った。
兵士
「前の魔王軍とは……桁が……違う……!」
文官
「前のは“眷属”。こちらが本物……!」
そのとき。
ナターシャ
「…………」
ナターシャは固まっていた。
部下
「ナターシャ様!? どうか……!」
ナターシャ
「…………無理よ」
震える声だった。
ナターシャ
「私なんかじゃ……勝てない……。
どう考えてもシャーリーの方が上だもの……!」
部下
(比較対象がおかしいんだよなぁ……)
しかしナターシャは真剣だった。
ナターシャ
「シャーリーがいたら……きっと何とかなる。
でも私は……私は……足元にも及ばない……」
その瞬間。
「ナターシャって、すごいわね」
背後から聞き慣れた、のんびりした声。
振り向けば――
特級厨師の白衣姿で、鍋を抱えたシャーリーが立っていた。
ナターシャ
「し、シャーリー!? いま鍋持って来る状況!?」
シャーリー
「真魔王が復活したって聞いたから、
体力つけるスープを持ってきたの♪」
部下
「落ち着きすぎでは!?」
シャーリーはニコッと微笑む。
シャーリー
「ねえ、ナターシャ。
一人で抱え込まなくていいのよ?」
ナターシャ
「で、でも……私なんか……」
シャーリー
「ナターシャがいるだけで、みんな安心するの。
だから――一緒に頑張りましょう♪」
ナターシャ
「…………っ」
胸の奥が、不思議と熱くなった。
(この子は……なんで……
なんでこんな時に、迷いなく私の名前を呼べるの……?)
震える唇が、ようやく言葉を紡ぐ。
ナターシャ
「……わ、私……頑張る……。
あなたの前で情けない姿、見せたくないし……!」
シャーリー
「うん、頑張ろうね♪」
シャーリーは鍋を差し出す。
シャーリー
「これ飲んで。元気が出るわよ」
ナターシャ
「……あなたの料理、なんでスープだけで勇気が湧くのよ……」
部下
(それ、成分じゃなくて“信頼”というやつだと思います)
こうして――
ナターシャの心に、小さな火が灯った。
真魔王復活の日。
国家危機の始まりの日。
そして、
**ダブルヒロインの絆が“はじめて強く結ばれた日”**でもあった。
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