一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお

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第21話料理バフで兵士の戦闘力がインフレした件

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 国中を覆っていた瘴気の危機が去り、
 いよいよ反撃の時が来た。


「真魔王討伐軍を組織する!
 総指揮は魔術師ナターシャ、
 そして士気・体力管理は特級厨師シャーリーだ!」

文官
「士気・体力管理って、つまり料理ですね……」


「料理こそ命の源じゃ!」

ナターシャ
「国王陛下、その配役のバランスおかしくありません!?」
(なんで私と同列なのよ……!?)

シャーリー
「がんばりま~す♪」

ナターシャ
(ああもうこの子は何でプレッシャー感じないの……?)


---

■魔王城討伐軍、出陣前夜

 兵士たちは緊張していた。

兵士A
「明日は命がけか……」

兵士B
「魔力も体力も限界だ……」

 そんな彼らの前に、真っ白なコック服のシャーリーが現れる。

シャーリー
「みんな~、夜食できたわよ♪」

兵士たち
「えっ」

 テントの奥には、巨大な鍋と山盛り料理。

シャーリー
「魔力回復ビーフシチュー、
 筋力増強ハーブ焼き、
 精神安定ミルクスープ、
 そしてこれが今日の目玉――
 《戦闘力爆上げシチュー》!」

ナターシャ
「名前がヤバいのよ!!!」


---

■実食により、兵士たちが別人になる

 兵士たちが恐る恐るスプーンを口に運ぶ。

兵士A
「……っ!? 身体が軽い……!」

兵士B
「魔力が……湧き上がってくる……!」

兵士C
「腕力が……! 見ろ! 丸太が素手で折れた!!」

バキィッ!!

ナターシャ
「折れた!?!? 丸太が素手で!?」
「料理の効果ってレベルじゃないでしょう!?!?!」

シャーリー
「よかった~♪ 今日も成功ね」

ナターシャ
「成功の基準どうなってるのよ!!??」

兵士D
「シャーリー様! このバフ料理、何時間持続するんですか!?」

シャーリー
「えっとね~……
 今回は“強火で煮込んだ”から、24時間かな♪」

兵士たち
「24時間バフ!? もう魔法じゃん!!」

ナターシャ
「料理に負けた気がするのは私だけ!?」


---

■翌朝、討伐軍は絶好調

 出陣の時。

兵士A
「魔王軍なんて怖くないぞ!!」

兵士B
「身体が力で満ちてるッ!」

兵士C
「敵をダシにスープ作れるくらい余裕だ!!」

ナターシャ
「例えが不穏!!」

シャーリー
「じゃあ、もう一品だけ――
 本日の“仕上げバフ”ね♪」

 シャーリーは手を叩いた。

シャーリー
「《精神集中オムレツ》できあがり♪」

兵士たち
「なんて神々しいオーラ……!」

ナターシャ
「オムレツから光が出てる……こわ……」


---

■ナターシャ、現実を知る

ナターシャ
「……ねえシャーリー。
 あなたの料理、魔法より強くない?」

シャーリー
「えっ? 魔法はナターシャの方がずっと上よ?」

ナターシャ
「……っ」
(素で言ってる……嫌味じゃない……
 この子……本当に私を信じてるんだ……)

シャーリー
「ナターシャが守ってくれるから、
 私も安心して料理できるんだもの」

ナターシャ
「…………」

 胸の奥が、また、ぽっと熱くなる。

ナターシャ
(……本気で思ってくれてるんだ。この子は……
 なら私も……応えたい……!)


---

■そして、討伐軍は魔王城へ向かう

兵士たち
「魔王討伐だーー!!」

ナターシャ
「全軍、進軍!!
 魔王城を落とすわよ!!」

シャーリー
「お弁当持ってきたから、途中で食べてね~♪」

ナターシャ
「遠足じゃないのよ!!!」

 しかし実際、
シャーリーの料理バフにより、討伐軍の戦闘力は過去最高となった。

ナターシャ
(……でもこれなら……きっと行ける……!
 この国を……救える……!)

 こうして――
魔王城攻略が幕を開けた。


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