一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお

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第24話 ――白い結婚のはずなのに、距離が近すぎません?

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 新婚生活が始まって数日。
 カチュアは “白い結婚” のはずなのに、なぜか精神的ダメージを受けていた。

「……なぜ、旦那様はそんなに距離が近いのかしら」

 朝。
 寝室の扉を開けると、すぐ横に――例の旦那様が立っていた。

「おはよう、カチュア。紅茶を淹れた」

 穏やかに微笑む婚約者……いや、夫(※建前上)。
 手には湯気を立てるティーカップ。

「……ど、どうして部屋の前に?」

「君が起きるのをここで待っていたからだが?」

「待って!? なぜ!?」

「夫婦だろう?」

 夫婦だ。
 夫婦だけれども、白い結婚だ。
 距離は“綺麗に”空けて過ごすのが理想だったのに。

「ち、近いですわ。もっとこう、私には自由が……」

「自由は尊重している。だが、君に会える時間は貴重だ」

 その言い方はまるで……。

 カチュアは顔を赤くしつつ、心の中でつぶやいた。

(……これ、“白い結婚”って理解してます?
 というか、絶対わかってない気がするのですけれど!?)

 そんな彼女の混乱を知ってか知らずか、旦那様は落ち着いた声で続ける。

「今日は一緒に昼食をとらないか?」

「えええ!? あ、あの、私は午後は菓子作りの予定が……」

「なら、その後一緒に食べよう。待つ」

 どうしてそうなるのだ。

(……白い結婚って、もっとこう……“お互い干渉しませんわね~”みたいな、穏やかな距離があるのでは? なぜ積極的に予定に食い込んでくるのかしら!?)

 動揺して逃げるようにキッチンへ向かったカチュア。
 だが――。

「手伝おう」

「ひゃっ!?」

 背後から声。
 振り返ると、旦那様が当然の顔で立っている。

「料理が好きなのだろう? 見てみたいと思って」

「み、見るだけで! 手は出さなくて結構でしてよ!?」

 彼は静かに微笑む。
 落ち着いた、けれど明らかに“興味津々”の目。

(……絶対、私のこと気に入りはじめてますわよね?
 いやいやいや、困るのですけれど!?)

 白い結婚――
 本来、最も平和で、最も干渉が少なく、最も気楽な形。

 なのにこの旦那様は、

・カチュアの予定に合わせて動き
・彼女の趣味に興味を示し
・距離を縮めようとし
・しかも自然さを装っているが、明らかに“好き”の気配が濃い。

 カチュアはオーブンに生地を入れながら、ぐったり呟く。

「……予定が違うのですけれど……平穏な日常はどこへ……」

「何か言ったか?」

「い、いえ! 何も!」

 旦那様は満足げに微笑んだ。

「楽しそうにしている君を見ると、嬉しい」

「ッッ!?」

 一撃で言葉を詰まらせるカチュア。

(……言動の全部が“白い結婚の領域突破してません!?”
 やめて、心臓に悪いのですけれど!?)

 その日の料理は、焼き菓子も、紅茶も、いつもより甘く感じられた――
 もちろん砂糖のせいではない。


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