一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお

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第27話 その言葉はあまりにも破壊力が強すぎる

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 王宮の執務棟。
 ナターシャは魔術研究の資料を抱え、廊下を早歩きで進んでいた。

(今日は魔術院との打ち合わせ三件、魔術式の修正二件……
 シャーリーに振り回されない平和な一日……のはず……)

 ――そこで、角を曲がった瞬間。

「ナターシャ!」

「ひゃい!?」

 書類を落としかけながら振り向くと、シャーリーが笑顔で手を振っていた。

「ちょうどよかった♪ 今日ね、仕事が少し早く終わったの。
 だから、ナターシャに聞きたいことがあって!」

「(嫌な予感しかしない……!)
 な、なによ、聞きたいことって……?」

 シャーリーは屈託ない笑顔で一歩近づき――

 ナターシャの逃げ道を完全に塞いだ。

「ねぇナターシャ。私たちって……友達だよね?」

「――っっっ!?」

 ナターシャは、物理的に後ずさった。
 壁にゴンッと背中が当たる。

「とっ、と、と、と……と、友っ……だ、だ、誰が!?」

「ん? 私たちがよ?」
 きょとん、とした目で見つめられる。

「む、無理よ! だって私は、あなたに対して……その……
 ずっと劣等感で……逃げてて……!
 友達って……その……簡単に……名乗っちゃいけない存在で……!」

 口走りながら、自分でも何を言っているのか分からなくなる。

(何言ってるの私!? もっと他にあるでしょ、言い方!!)

 しかしシャーリーは、ふわりと微笑んだ。

「でもね、ナターシャ。
 私、あなたと話すの、好きよ?」

「な……っ!?」

「気がつけば、いつもナターシャのこと考えてるし……
 一緒にいると楽しいし……
 私、こういうの……友達って言うんだと思ってた」

 まっすぐすぎる笑顔に、ナターシャは目を逸らした。

(ちょっと待って、これ……攻撃力高すぎない!?
 私、今ので魔力が三割くらい削れたんだけど!?)

「な、ななな、なんでそんな簡単に……友達とか……!」

「簡単じゃないわよ? だって私ね、
 友達って思える人、初めてなんだもの。」

「……………………っ。」

 ――その瞬間、胸の奥がズキッと熱くなる。

 今まで誰より強く、誰より自由に見えていたシャーリーが言う
 “初めて”という事実が、ナターシャには想像以上に重かった。

「……そ、そんなこと急に言われても……
 心の準備とか……覚悟とか……いるでしょうが……」

「心の準備いるのね? じゃあ、今日の夕方まで待つ?」

「そういう問題じゃない!!」

 叫びながらも、顔が真っ赤なのは否定できなかった。

 しばらく言葉を探していたが――
 ナターシャは小さく息を吸い、絞り出すように言った。

「……その……。
 だ、だだだ……友達……でいいわ……よ……」

 シャーリーの顔がぱあっと輝く。

「ほんと!? うれしい!!」

 抱きついてこようとしたので、ナターシャは慌てて手を伸ばして止めた。

「抱きつくなぁぁぁ!! 心の準備が追いついてない!!」

「友達って楽しいわね~♪」

「私は今、寿命が三年縮んだ気分よ!!」

 だがその日、ナターシャは研究室に戻ってからもしばらく
 頬の熱を冷ますことができなかった。


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