『婚約破棄された公爵令嬢ですが、王国を救ったので新しい王太子に求婚されました

しおしお

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第十一話 証言

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第十一話 証言

王立学園、応接室。

調査官たちは机を囲み、次々と証言を記録していた。

机の上にはすでに何十枚もの書類が積み上がっている。

調査官の一人が額の汗を拭いた。

「……妙ですね」

もう一人が頷く。

「ええ」

「話がまったく違う」

彼は書類をめくる。

そこには同じ名前が何度も書かれていた。

ルシエラ・ノクティス。

調査官は言った。

「教師の証言はすべて同じです」

「模範生」

「首席」

「規律正しい」

別の調査官が付け加える。

「虐待の話は一つも出ていない」

部屋が静まり返る。

そのとき、扉がノックされた。

「失礼します」

入ってきたのは、若い女性だった。

学園の侍女だ。

調査官が言う。

「名前を」

「ミアと申します」

調査官は書類を確認する。

「ヴィオレッタ・アルディスの担当侍女ですね」

「はい」

調査官は質問した。

「ルシエラ・ノクティスがヴィオレッタを虐げていたという証言があります」

「それについて聞きたい」

侍女は一瞬驚いた顔をした。

「……虐げていた?」

「はい」

侍女は首を傾げる。

「そんなことはありません」

調査官が顔を上げる。

「ない?」

侍女ははっきり言った。

「むしろ逆です」

部屋が静まり返る。

「逆?」

侍女は少し迷った。

だが、やがて決意したように言った。

「ルシエラ様は……」

「何度もヴィオレッタ様を助けていました」

調査官たちは顔を見合わせる。

「助けていた?」

侍女は頷く。

「課題を忘れたときも」

「授業に遅れたときも」

「先生に叱られないように」

「ルシエラ様が庇っていました」

調査官の一人が書きながら聞く。

「それは確かですか」

侍女は迷いなく答える。

「はい」

そして小さく言った。

「でも……」

調査官が顔を上げる。

「何ですか」

侍女は少し声を落とした。

「ヴィオレッタ様は、あまり感謝していませんでした」

部屋が静まり返る。

「どういう意味です」

侍女は言いにくそうに続ける。

「……むしろ」

「嫌っていました」

調査官たちは顔を見合わせる。

「理由は?」

侍女は答える。

「比べられるからです」

調査官が眉をひそめる。

「比べられる?」

侍女は頷いた。

「ルシエラ様は完璧でした」

「成績も」

「礼儀も」

「評判も」

「全部」

侍女は小さく言った。

「ヴィオレッタ様は、それが嫌だったんです」

調査官は書く手を止めた。

「つまり」

「嫉妬?」

侍女は答えなかった。

だが、その沈黙が答えだった。

その頃。

王城のサロン。

ヴィオレッタは紅茶を飲んでいた。

窓の外では庭園が静かに揺れている。

その前でエドガルドが歩き回っていた。

「おかしい」

ヴィオレッタが首を傾げる。

「どうしましたの?」

エドガルドは苛立った顔で言う。

「王宮が調査を始めた」

ヴィオレッタの手が止まる。

「……調査?」

エドガルドは頷いた。

「学園の件だ」

ヴィオレッタはすぐに悲しそうな顔を作る。

「私の話を疑っているのですか」

エドガルドは慌てて言う。

「違う」

「ただ念のためだ」

ヴィオレッタは涙ぐんだ。

「ひどい……」

「私は本当のことを言っただけなのに」

エドガルドは彼女の手を取る。

「分かっている」

「私は君を信じている」

ヴィオレッタは安心したように微笑む。

だが。

その目の奥には一瞬、冷たい光が浮かんだ。

一方。

アルヴァーン領では。

ルシエラが港の倉庫を見ていた。

新しい倉庫が建設され、荷物が次々と運ばれている。

リーゼが言う。

「お嬢様」

「また商会が来ました」

ルシエラは苦笑する。

「増えすぎですね」

そのとき。

ローデリックが後ろから言った。

「まだ増える」

リーゼが振り向く。

「え?」

ローデリックは言う。

「王都の商人は賢い」

「王家より信用を選ぶ」

そしてルシエラを見る。

「つまり」

「あなたを選ぶ」

ルシエラは小さく息を吐いた。

「困りましたね」

ローデリックは少し笑う。

「そうか?」

そして静かに言う。

「王国は今」

「あなたを中心に動いている」

その頃。

王立学園の調査はさらに進んでいた。

そして次の証言が出る。

それは――

ヴィオレッタが嘘をついた証拠だった。
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