『婚約破棄された公爵令嬢ですが、王国を救ったので新しい王太子に求婚されました

しおしお

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第十三話 報告書

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第十三話 報告書

王城、執務室。

重い空気が部屋を包んでいた。

机の上に、一冊の分厚い報告書が置かれている。

国王グレゴリウスは腕を組んだまま、それを見つめていた。

王妃マルグリットが静かに言う。

「……すべて読みました」

国王も低く答える。

「私もだ」

沈黙。

そして王が言った。

「つまり」

「ルシエラ・ノクティスは無実」

王妃が頷く。

「はい」

「教師、侍女、学生」

「証言はすべて一致しています」

王は報告書をめくる。

そこにははっきり書かれていた。

・虐待の証拠なし
・ヴィオレッタの証言に多数の矛盾
・嫉妬の可能性

王は机を叩いた。

「愚か者が……」

王妃は静かだった。

「問題はここです」

報告書の最後のページ。

そこには別の内容があった。

王家とノクティス公爵家の関係。

資金。

技術。

交易。

王妃は言う。

「ルシエラを失った結果」

「王家は最大の支援者を敵に回しました」

国王の顔が険しくなる。

「商会が逃げている」

「王都の資金も止まった」

王妃は続ける。

「そして」

「アルヴァーン領」

国王が言う。

「ローデリックか」

王妃は頷いた。

「商人が集まっています」

「王都ではなく」

「彼の領地へ」

国王は深く息を吐いた。

「つまり」

「王国の経済が移動している」

沈黙。

やがて王は言った。

「エドガルドを呼べ」

その頃。

王城の庭園。

エドガルドはヴィオレッタと散歩していた。

春の花が咲き始めている。

ヴィオレッタが微笑む。

「王都は落ち着きましたね」

エドガルドは頷いた。

「そうだな」

「婚約破棄の騒ぎも終わった」

その時。

近衛兵が駆けてきた。

「殿下」

エドガルドが振り向く。

「何だ」

「国王陛下がお呼びです」

エドガルドは少し眉をひそめる。

「今か?」

「至急とのことです」

エドガルドはヴィオレッタを見る。

「すぐ戻る」

ヴィオレッタは優しく微笑んだ。

「はい」

エドガルドは城へ向かう。

その背中を見送りながら。

ヴィオレッタの表情が変わった。

ほんの一瞬。

冷たい目。

(調査……)

しかしすぐに微笑みに戻る。

(問題ないわ)

そう思っていた。

その頃。

アルヴァーン領。

港は今日も賑わっていた。

船。

荷物。

商人。

市場の声。

リーゼが興奮していた。

「また新しい商会です!」

グラハムが静かに答える。

「北方交易商会」

「五つ目です」

リーゼは目を丸くする。

「五つ!?」

ルシエラは苦笑した。

「増えすぎですね」

ローデリックが腕を組む。

「当然だ」

「商人は利益と安全を見る」

そしてルシエラを見る。

「そして信用だ」

ルシエラは小さくため息をついた。

「王都に怒られそうです」

ローデリックは少し笑う。

「もう怒っている」

ルシエラが首を傾げる。

「そうなのですか?」

ローデリックは言った。

「王宮が調査している」

ルシエラの動きが止まる。

「調査……」

ローデリックは頷く。

「学園の件だ」

ルシエラは少し考えた。

そして静かに言う。

「……遅いですね」

ローデリックが目を細める。

「怒っているのか?」

ルシエラは首を振る。

「いいえ」

「もう関係ありません」

そして港を見た。

忙しく働く人々。

新しい町。

新しい商会。

ルシエラは言った。

「私はここで生きます」

ローデリックは短く言った。

「そうだな」

その頃。

王城、執務室。

扉が開いた。

エドガルドが入る。

「父上」

「母上」

国王は机の前に立っていた。

王妃は隣にいる。

机の上には――

あの報告書。

国王が言った。

「エドガルド」

「お前に聞く」

エドガルドは怪訝な顔をする。

「何でしょう」

国王は報告書を机に叩きつけた。

「これは何だ」

エドガルドはそれを見る。

ページをめくる。

そして――

顔色が変わった。

そこには書かれていた。

ルシエラ・ノクティス。

無実。

ヴィオレッタ・アルディス。

虚偽証言の可能性。

国王の声が低く響く。

「説明しろ」

王城の空気が凍りついた。
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