辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する

鶴井こう

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182《神格召喚》

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「しっ、《神格》!?」

とんでもない言葉が飛び出してしまった。

《神格アルカヘストの召喚》――それは名前からして一年前の事件の原因でもあった《神格タキオナの召喚》と種類が同じ魔法だろう。
異邦という土地そのものにもなっていた《神格タキオナの召喚》がいるなら、大魔法が少女の姿をしている場合だってないとはいえない。《神格タキオナの召喚》は《事実改変》とかいうとんでもない効果を実現していた。となれば《神格アルカヘストの召喚》だって、ルール無視ご意見無用なんでもありの大魔法に違いない。

俺はうなだれた。聞かなきゃよかったかな。

「それは、困った……」

「まあね」

ラズリーズさんも途方に暮れたように遠い目をした。

俺はポーション『飲むルキフゲ』を飲み、《神格アルカへストの召喚》――アールカを探す。

「んん?」

俺は首をひねった。
反応が、なぜか複数見つかったのだ。全部で三つ。一つはなぜかここにいる。

「何をしているんだい?」

ラズリーズさんが、いぶかしげな視線を向けてくる。

「あ、えっと、ポーションを使って魔法的にアールカを探しています。でもなぜか反応が三つあって」

情報が少ない場合、似たような存在が複数感知することはある。それは索敵を目的としたルキフゲシリーズの弱点でもある。しかし名前と姿かたちがちゃんとわかっている状態で候補が分かれるというのも珍しい。名前がそもそも唯一無二なので候補が分かれるということはそうそうないと思うのだが……

「《神格アルカへストの召喚》は、《創造と再構築》の力だ。無からあらゆる有を生み出したり、既存の存在を分解し別の存在へと再構築する力」

ラズリーズさんが解説する。

「さらわれたとき、防衛本能のためか逃げるためか、自分の存在を分解して三つに再構築したんだろうよ」

「そんなことが?」

《創造と再構築》……やっぱり何でもありだった。周囲や世界そのものの影響が気になるな。

「彼女の肉体は、もともと彼女自身が創造したものだと思われる。もともとはただの魔法陣だったんだ。分解も創造も自由にできるんだろう」

俺はパピルサが逃げる時に抱えていたぬいぐるみを見た。今そのぬいぐるみはテーブルの上に置いてある。
これがアールカの一部らしい。にわかには信じがたいけど。

「自分を分解して、三つに再構築……」

俺はアールカに似たかわいらしい人形を持ち上げた。

ということは、現場に置いてきてしまったアールカの一部もあるということか。

「ちなみに、ちゃんと『生き物は作るな』と念を押している。無茶なことは……あの子は臆病だからできないと思うが、わからんのでなるべく早く確保したいところだね」

「力を悪用されると、まずいですね」

《神格召喚》の名を冠しているんだ。たぶんなんでも創れるのだろう。
それこそ、「なんでも」だ。人間を創って兵団を組織することも、町や要塞を創ることも。
――下手したら世界そのものを創ったりすることもできるのではないか。

「ま、形ある物を作り変えることはできても、歴史や出来事や人の記憶などを《再構築》したりはできないようだからね。それだけは安心さね」

「ははは……」

俺は乾いた笑いでごまかした。そっちはタキオナの《事実改変》の領域だろう。

「しかしこの脛当てと『マグナシア教団』という名前……まさかね」

ラズリーズさんはパピルサがしていた脛当てをつぶさに観察しながらつぶやいた。

「何か心当たりでも?」

「あくまで予測だけどね」

脛当ての魔法石部分を指して、ラズリーズさんは答えた。

「この脛当てについている魔法石を固定する台座は、『アマルガム』でできている」

「アマルガム?」

「アマルガムは水銀とほかの金属の合金だ。錬金術師が好んで使う。そしてマグナシアという名は、錬金術の開祖と呼ばれている魔法使いの通り名の一つだった」

「……まさか、敵は錬金術師っていうんじゃないでしょうね」

錬金術師か。本当にいるとしたら、失われた古代魔法の使い手だ。

「さてね」

冗談が過ぎる、といったようにラズリーズさんは肩をすくめた。

「とにかく現場に行ってみるよ」

ラズリーズさんはシチューの鍋を名残惜しそうに見つめて言った。ついてきてくれるらしい。俺はうなずいた。
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