無自覚愛されキャラの天使は今日も気づかずあの子を堕とす

なかの豹吏

文字の大きさ
29 / 56

第29羽

しおりを挟む
 

 そろそろ、かな。 早めに帰してやらないと空にも家の事があるだろうし。 あたしは大体の家事を済ませると、家を出て公園に向かった。


 公園に着いてみると、いつの間にかあのつんつん頭と、前にも来ていた海来留の友達の兄らしき中学生が増えている。
 ちょうどひと段落したのか、バラバラに休憩しているみたいだな。 海来留は……ベンチで空と楽しそうに喋っている、が――――。 もっと距離を取りなさい妹よ。 

「海来留、もうちょっと離れて話しなさい」
「は? なにいってんのおねーちゃん」

 なにってあんたね、あくまで悪影響だから言ってるんだよあたしは。

「うーん、僕風邪とか引いてないけど、何か移ると思ったんじゃない?」
「やんきーみたいなかみの色してるのにかほごなおねーちゃんだね、こまったもんだ」


 ………人参もたっぷり追加してあげるね海来留、晩御飯が楽しみだよ。


 嫉妬でもしてると勘違いされるのも癪だし、雑談中のつんつん頭と中学生達の方へ行ってみると、

「そんで一発でそいつを沈めたんすか?」
「いや、流石っす勇さん」
「空に怒られたけどな、わざとじゃないのに」


 なんの話? 喧嘩でもしたのかこいつ?


「あ、顔だけ(空の)かーちゃん」
「……変な呼び方すんなつんつん頭」

「「姐さん、お疲れ様です」」
「お前らもな……」

 なんなんだこいつらは、こっちの方が海来留に悪影響かも知れないな。

「……なにジロジロ見てんだよ」
「いや、今日保健室の先生に会ったんだけど」
「だからなによ」

「胸、デカかった」
「は?」

 あたしになんの関係があんだよ、セクハラ? 蹴っ飛ばしてやろうかなこのつんつん頭。

「空のかーちゃんもデカかったな、と」
「………それで?」

「ああ、別に。 ただ、やっぱりみくるのねーちゃんは顔だけ―――」
「死んでしまえお前はッ!!」

「おおっ! 姐さん鋭いミドル!」
「いや、勇さんきっちりガードしてるぞ!」

「お前、さっきの木村とかいうのよりセンスありそうだ」
「やかましいッ!」


 こ、このつんつん頭、いつか頭刈ってやるからな……! てか木村って言った? ウチのクラスの木村かな? そんな訳ないか、接点ないだろうし。


「ほら、もう帰るよ海来留」
「えー、まだいいじゃん」
「言うこと聞かないともう約束しないからね、さっさと帰ってお風呂入りなさい」

 その後、美味しい晩御飯が待ってるよ、海来留……。


「ゔ~~、あっ、じゃあ空と入る」
「はぁ?! あ、あんたバカじゃないの!」

「みくるちゃんとお風呂かぁ、楽しそうだね」
「お前もバカかッ!!」


 はぁ、はぁ……こ、こいつらの相手すると疲れるわ………。


「バカっていったらいけないよね、空」
「うん、良くないね」
「べつにおねーちゃんがはいるわけじゃないのに……」

「――ッ!? と、とっとと来んかいこのマセガキ!」


 もう限界、一刻も早くこの場から撤退しないとろくな事がない!


「いっ、いたいっておねーちゃん!」
「さようなら、今日はありがとうね! はい海来留もお礼言って!」
「またねー空、みんなー」

「バイバイ、みくるちゃん。 海弥も、また学校でね」

「強制連行、だな」
「あの子は将来小悪魔になりそうっすね」
「可愛いしな」


 しばらくこの企画はやめよう、身体が持たないわ。 でも、海来留がうるさいからな……。

 帰ったら余計なことを言わないように教育しよう、徹底的にね。

 ……海来留が変なこと言うから、思い出しちゃったじゃない、さっき見たあいつの―――ええいっ! 私にも再教育が必要だ!

 忘れろ、忘れるんだ海弥……っ!






 ◆





 はぁーーぁ、今日は惨敗。 こんなに上手くいかないなんてね、お風呂入っても全然さっぱりしないわ。

 この私のお願いに代役送るなんて、いい度胸してるじゃない灰垣くんも。 ……あ、噂をすれば、肩透かしの彼からメッセージが来てる。


『直接行けなくてごめん。 無事で良かったけど、結局怖い思いさせちゃって……』


 “行けなくて” ……か。 あの妹さんに負けたって事でしょ? 信じらんない。


「ロリコン……」


 小学生より同級生でしょ、普通。 私だって、待ってたのに………

 ――ちょ、ちょっと待って、なに普通に落ち込んでんのよ私……!

 忘れたの? 恋愛は本気になったら負けなのよ。 あくまで優位に立って余裕を持たないと。 いつもの調子であざとく、好意をチラつかせて反応を楽しむぐらいがちょうどいいんだから。
 灰垣くんが私に興味が無いって言っても、そこまで挑発的にした訳でもないし、勝負はまだこれから。 

 よし、仕掛けてみるか。


『ううん、用事があるの知ってたのにゴメンね。 お友達にも迷惑かけちゃって、でも……ちょっと悲しかったよ、待ってた人と違ったから』


 こんなもんかな? 
 さぁどんな返事が来るか、こっちはいくらでも引き出し持ってるんだから。 ウブそうな灰垣くんなんて簡単に堕とせる恋の弓矢、そののど真ん中に打ち込んであげるからねっ。


 ―――――――――――――――
 ―――――――――――
 ―――――――
 ―――


 ………今、何時?

 ベッドに入ったまま側に置いた携帯に手を伸ばし見てみると……二十二時か。


 てことは、あれから二時間ぐらい経ったな。 じゃあ、なんで………





 ――――なんで返事来ないのっ!?





 返事いらないメッセージじゃなかったよね?!

 ちょっとこれ無視するのは酷くない?! そんなタイプじゃないよね灰垣くんって!


 ……だって、 “既読” になってるし………。


 これは興味が無いっていうかもう “無神経” よね! 

 ……でも、そうだ。 あの第一回謝罪会見もそうだけど、灰垣くんってあんまり携帯に依存するタイプじゃなさそう。 
 あの細目に言われてバイブにすれば良いのに電源切ってたし。 それに、私達と一緒に居る時は切ったまま忘れてたもんね。


 ……そうよ、忘れてるだけ。 


 きっと明日学校で会う前には、『今度はきっと迎えに行くから、なにかあったら言ってね』なんてメッセージが来てる筈だって。

 よし、明日に備えてもう寝よう。

 大体これじゃ私が待ち焦がれてるみたいだし、気分悪いわ。

 寧ろ明日が楽しみよ。 せいぜい頭ひねって返事作るのねー。


 ………そっか、どんな返事したらいいかずっと悩んでるのかも? ふふふ、私はもう寝ちゃうから返事出来ないけどね。 じゃお先に、おやすみなさい。


 ………………………………
 ……………………
 ……………
 ……



 喉、乾いたな。


 ……………………
 ……………
 ……


 ……来てないか。





 ――――眠れない………。


  
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4が完結しました!(2026.2.22)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

サンスクミ〜学園のアイドルと偶然同じバイト先になったら俺を3度も振った美少女までついてきた〜

野谷 海
恋愛
「俺、やっぱり君が好きだ! 付き合って欲しい!」   「ごめんね青嶋くん……やっぱり青嶋くんとは付き合えない……」 この3度目の告白にも敗れ、青嶋将は大好きな小浦舞への想いを胸の内へとしまい込んで前に進む。 半年ほど経ち、彼らは何の因果か同じクラスになっていた。 別のクラスでも仲の良かった去年とは違い、距離が近くなったにも関わらず2人が会話をする事はない。 そんな折、将がアルバイトする焼鳥屋に入ってきた新人が同じ学校の同級生で、さらには舞の親友だった。 学校とアルバイト先を巻き込んでもつれる彼らの奇妙な三角関係ははたしてーー ⭐︎第3部より毎週月・木・土曜日の朝7時に最新話を投稿します。 ⭐︎もしも気に入って頂けたら、ぜひブックマークやいいね、コメントなど頂けるととても励みになります。 ※表紙絵、挿絵はAI作成です。 ※この作品はフィクションであり、作中に登場する人物、団体等は全て架空です。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

貧乏貴族の俺が貴族学園随一の麗しき公爵令嬢と偽装婚約したら、なぜか溺愛してくるようになった。

ななよ廻る
恋愛
貴族のみに門戸を開かれた王国きっての学園は、貧乏貴族の俺にとって居心地のいい場所ではなかった。 令息令嬢の社交場。 顔と身分のいい結婚相手を見つけるための場所というのが暗黙の了解とされており、勉強をしに来た俺は肩身が狭い。 それでも通い続けているのは、端的に言えば金のためだ。 王国一の学園卒業という箔を付けて、よりよい仕事に就く。 家族を支えるため、強いては妹に望まない結婚をさせないため、俺には嫌でも学園に通う理由があった。 ただ、どれだけ強い決意があっても、時には1人になりたくなる。 静かな場所を求めて広大な学園の敷地を歩いていたら、薔薇の庭園に辿り着く。 そこで銀髪碧眼の美しい令嬢と出会い、予想もしなかった提案をされる。 「それなら、私と“偽装婚約”をしないかい?」 互いの利益のため偽装婚約を受け入れたが、彼女が学園唯一の公爵令嬢であるユーリアナ・アルローズと知ったのは後になってからだ。 しかも、ユーリアナは偽装婚約という関係を思いの外楽しみ始めて―― 「ふふ、君は私の旦那様なのだから、もっと甘えてもいいんだよ?」 偽装婚約、だよな……? ※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』『アルファポリス』に掲載しております※ ※ななよ廻る文庫(個人電子書籍出版)にて第1巻発売中!※

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...