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第30羽
しおりを挟む昨日、大丈夫だったかな、空くん。
結局なにがあったのかはわからないけれど、きっと良くない事だろうし。 でも、言わないってことは言いたくないんだろうから、私から訊くのも良くないよね。 訊きたいけど……。
「おはよう、真尋ちゃん」
「あ、おはよう空くん」
別府さんとは、昨日なにかあったのかな? べ、別にある訳ないよね、だって妹さんと一緒なんだから。 そうだよ、考え過ぎだ。
「真尋ちゃん」
「な、なに?」
「そのヘアピン気に入ってくれたんだね、いつも付けてくれてるし」
「う、うん。 空くんが、ほら……似合ってるって――わっ!?」
な、何事? 照れモードの私が俯いていると、 “バン” と机を叩く音がした。
「おはよう、灰垣くん」
「お、おはよう加藤さん」
なになに? 朝からどうしたの加藤さんは……なんか、怒ってる?
「昨日はごめんね、迷惑かけちゃって」
「僕の方こそごめん、人に頼んじゃって」
加藤さん、言葉は謝ってるけど、顔が謝ってないな………昨日って、そうか、昨日のトラブルは加藤さんだったんだ。
「いいよ、気にしてないから」
「ありがとう、そう言ってもらえると助かります」
(もうそこじゃないのよ……! こっちは殆ど寝てないんだからね、勝手に寝てないだけだけど……)
「灰垣くんのメッセージって、シンプルだよね」
「そう? 普通だと思うけど」
(普通? あれが普通なの? 寝ぼけ眼で見て唖然としたわよ、あれだけ待って “スタンプ一個” って……っ!!)
「でも、他の人のどんなかわかんないからなぁ」
「そうなんだ、ふふふ」
(スパルタ教育してあげようか? キミ)
どうしたんだろ加藤さん。 なんか今日は迫力あるな……それに目の下にクマがあるけど、寝不足?
「あっ、木村くん」
教室に入って来た木村くんに空くんが駆け寄る。 な、なんで?
「昨日は僕の友達が乱暴して、本当にごめん」
んん? これは……そ、そうか!
木村くんは加藤さんに昨日アタックしてたから、そこでなにかあって空くんに連絡が来たんだ。 それで代わりに勇くんが行ったんだね。
ふふふ、私も良子に鍛えられたかな? 中々の推理でしょう。
「いや、俺が悪りぃから。 逆にごめんな、灰垣」
「え? うん……」
ど、どうしたのキム?! 勇くんにそんなやっつけられたのかな? あのキムがあんなに素直に……。
「加藤も悪かったな、もうつきまとわないからよ」
「あ、そう」
―――は、『敗北宣言』……?
これは、相当痛い目に遭ったのね。 木村くんが加藤さんから『完全撤退』するなんて……。
勇くん、多分キミは人助けをしたんだと思うよ。 でもね………
―――ちょっとだけキムにも頑張って欲しかった!
こんな他力本願良くないけど、だって加藤さんは強敵なんだもんっ……!
ううぅ、勝てる要素が見当たらないの………。
「木村くん、顔が腫れたりしてなくて良かった」
「……そうね」
(代わりに私がむくんでるけどね)
◆
はぁ……やっと終わった。
今日は睡魔との闘いの連続だったな……。
もう限界、とりあえず今日はなんの作戦も無いし、明日からでいいや。
―――――――――――――――
――――――――――――
――――――――
―――――
――
………私、寝ちゃってたんだ。
ずっと眠かったしね、そりゃ寝るって。
「……何時、だろ?」
「もう五時前だよ?」
「――っ!?」
灰垣……くん………。
私の前の席、その椅子にこっち向きで座って、私を見ている。
「おはよう。 そろそろ起こそうと思ってたんだけど」
……なによ、きらきらして……ムカつくな………。
「なに……してるの?」
私が眠ってたから、二人きりになろうとしたんでしょ。
「朝から眠そうだったから、昨日怖くて眠れなかったのかと思って、ごめんね」
はいはい、知ってました。
興味の無い私にそんな下心で残ってくれてる訳ないもんね。
「そんなんじゃないから、気にしないでいいのに」
「でも、そうかもしれなかったから。 勝手に残ってただけだよ、そろそろ帰らなきゃね」
……なんだか、バカバカしくなってきたな。
灰垣くんに色々モーションかけても無駄な気がする。 私にそう思わせる程に、まったく今までの効果が無いからね。
堕とし甲斐が無い、というか、堕ちる気配が無い。
「ちょっとだけ、話してもいい?」
「うん、いいよ」
もう諦めたから、私も木村を見習って『撤退』しよう。 多分、この遊び相手は私のジャンルじゃなかったんだ。
「私ね、性格悪いの」
「……そうなんだ」
あっさり受け入れるんだ、もうバレてた?……まさかね。
「でも可愛いから、勝手に周りは好きになったり、ちょっとちょっかい出したら、すぐ男子は勘違いして好きになるの」
「すごいね」
私もそう思ってたよ。 でも、実は大した事ないのかもね。
だって―――これが初めてじゃないから。
「でもね、今回は諦めました」
「なにを?」
なにをって……
「灰垣くんを………だよ」
「僕?」
「そう、なにやっても全然響かないから、遊び心でなびかせようと思ったけど、もういいや」
「そっか、僕、鈍いのかもね」
「そうだよ、つまんない」
なに笑ってんのよ、クラス一可愛い灰垣くん。
「あーぁ、これで二人目だよ。 諦めたの」
「へぇ、僕以外にも鈍いのが居たんだね」
「うーん、でもちょっと違うかな? その人は私がちょっかい出すと、ちゃんと嬉しそうだった。 だからいつも通り堕とせると思ったんだけど……」
「ダメだったの?」
「堕とす前にね、他の女の子と付き合っちゃったの」
「そうなんだ」
あれはムカついたな、なんか横取りされた気分になったもんね。
「だからね、呼び出して告白した」
「付き合ったばかりの人に告白したんだ?」
「逆にこれでひっくり返したら爽快だと思ったし、私から告白されたら断らないだろうと思ったから」
「怖いね、加藤さんは」
本当、良く考えたら大分ヤバい女だよね。
「だけど、断られちゃった」
「そう」
「初めて自分からした告白が断られて、落ち込むどころかムキになっちゃってさ、なんで私の方が可愛いのに、周りにも自慢出来るのにって、本気でも無い癖に必死になってその人に言ってた」
「うん」
「彼はね、こう言ったの。 『彼女はずっと自分を想ってくれていて、君に負けてると思っていても、勇気を持って告白してくれたから』って」
「うん」
「なにそれ? って思った。 想ってた時間が長ければいいの? そんなの嘘かも知れないし、私を引き合いに出したのも自分を良く見せる為だって」
「そう」
「今思えば、自分からした告白を断られたのが気に入らなかっただけだったのかもね。 それからは、一層恋愛に対して冷静になるようになったかな?」
「僕は恋愛の知識があんまり無いから、加藤さんの話は勉強になるね」
「本当、勉強してください。 なに今朝の返事、もうちょっとまともなの送らないと女の子を傷つけるよ?」
「はい、すみません。 勉強します」
ふむ、素直でよろしい。
でも、ちょっと今回は完敗かな?
「まさか、彼女のいない灰垣くんまで堕とせないとはね。 言い訳も出来ないわ」
「僕には告白した訳じゃないけど?」
「へぇ、したら堕ちてたってこと?」
そういう事言うとね、また悪い癖が出ちゃうよ?
「出来ないでしょ?」
「………どういう意味?」
「加藤さんだって、女の子だから。 いや、男女関係無く、かな?」
………意味わかんないな。
なにが言いたいのかな? キミは。
「告白した彼は好きじゃなかったんだろうけど、告白した後の彼に恋したんじゃないかな?」
「はぁ? そ、そんな訳ないでしょ?!」
「そうかな? だから恋愛に冷静になった、そうじゃなくて、恋愛に臆病になったんじゃない?」
「………そんな事、ない………」
そんな事、ある筈ない。
そんなの認められない。
そんなの認めたら、私は………
「そっか、僕は恋愛初心者だから、勘違いかもね」
そうよ。 灰垣くんなんて、大して経験もない癖に……
「でも、もし勘違いじゃなかったら……」
勘違いだから、そんなの。
私が “恋” なんて、そんなの認めたら………
「か弱い女の子みたいだね」
――――やだ……やめてよ………!!
「加藤さん?」
私は、また机に突っ伏して顔を隠した。
「まだ眠いの………先に帰って………」
「でも、もう遅いよ?」
いいから、帰ってよ……。
お願いだから……見逃して………。
「ちゃんと帰るから、大丈夫だから……」
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「性格が悪いから」
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「そうなんだ、だから……」
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―――ごめんなさい……。
やっと、成仏出来るね。
私の前に現れた、
―――― “いじわるな天使” のお陰で……。
悔しいな、完敗どころか、 “逝かされちゃった” よ。
こんな、スタンプ一個しか送らない初心者に………。
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