無自覚愛されキャラの天使は今日も気づかずあの子を堕とす

なかの豹吏

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天使のオマケ 1

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 お姉さんと手を繋いで歩く、可愛らしい女の子。

 姉妹のようだが大分顔の系統は違うようで、年齢もざっと十歳差程はありそうだ。 お姉さんは弾むように歩く元気な妹に優しい笑みを向けている。

 今日は日曜日、買い物にでも行くのだろうか。 

(海来留に新しい服を買わなきゃな、あたしのお古は嫌がるから。 ……でも、最近は生意気にあたしの選ぶ服はダサいとか言い出すようになって、また選ぶのが長いんだよなぁ)

 目を細めて妹を見ていると、突然何かを見つけた様子で指をさした。

「あーっ! 空にそっくり!」
「は?」

 呆気にとられるお姉さんは、その小さな指先を追って目を向ける。 すると、背の高い中年男性が、妹と視線を合わせていた。

「ははっ、おじちゃんに言ったのか?」

 そう言って屈み、妹と目線の高さを合わせてくる。

「うんっ!」

 元気に応える妹を普段なら止めに入っていたかも知れないが、その男性にお姉さんも目が離せなくなっていた。

「偶然だな、おじちゃんの子供、空っていうんだ」

「じゃ、空のおとうさん? 空ちっちゃいのに、おじちゃんぐらいおっきくなるの?」

 驚いた顔で目を見開き訊いてくるその子を、男性も同じように見返す。 そして、

「……あれ? もしかして、本当にうちの空の知り合い……かな?」

 女の子の言った “空” 、という子の容姿が自分の息子と合致しているらしく、信憑性が高まったらしい。

 その時、話す二人を見つめていたお姉さんが辿々しく口を開く。


「あ、あの、灰垣空くんの、お父さんですか?」


 その言葉に、これは間違いないと確信した男性は少女に顔を向けた。


「ああ、偶然だなぁ。 やっぱり俺、そんなに息子と似て―――」


 緊張した面持ちで自分を見る小柄な少女に、男性は言葉を失う。 

「クラスメイトの、別府海弥です……」

「…………」

 挨拶をされたというのに、何故か固まったまま言葉が出ない男性に妹の海来留が話し掛ける。

「どーしたの? 空のおとうさん?」

「――あっ……ああ、ごめん」

 やっと我に返り立ち上がると、

「空の父親の、灰垣直人なおとです。 まさかクラスメイトだったとは、息子がお世話になってます」

「い、いえ、こちらこそ」

 仕切り直して挨拶を交わすと、海弥は恐縮して頭を下げた。 こんな海弥は中々見れないが、相手は想いを寄せる男子の父親なのだから無理もない。

「空はねー、よくいっしょにサッカーしてくれるんだっ」
「み、海来留っ……ええと、妹とよく遊んでもらってて、すみません……」

 家の事もある空の身体を借りているのが悪いと思ったのだろう。 海弥は申し訳なさそうに頭を下げる。

「謝ることない、いつも楽しそうに話してるよ。 可愛い子とサッカーやってるって」
「えっ! 空みくるのことかわいいっていってた!?」
「ああ、男の子より運動出来るって言ってたし」

 それを聞いた海来留は赤くなった頬を膨らませて、大きな瞳をきらきらと輝かせた。

「えへへ……やっぱり空とみくる、けっこんするかも……」
「ちょ、ちょっとなにを……!」

 もじもじと爆弾発言をする妹に狼狽える海弥。 子供の言う事にそんなに、とも思うが、言った相手にもよる。

「ははっ、あいつも隅に置けないな。 それに……」

 海来留から海弥に目線を変え、どこか懐かしむように見つめる直人。 海弥はそれを受け止め切れずに俯き、ぱちぱちと瞬きをしている。


(ど、どう思われてるんだろう……。 やっぱり、お母さんと……こ、この場合奥さんか……)


 自分が空の母親と似ているのは聞いている。 だが、その夫である直人から見たらどうなのだろう。 そして、先立たれた妻に似た自分は、どう思われるのか。


 直人は海弥から視線を外し、一度空を見上げてから、

「いや、なんでもない。 また息子と遊んでやってね」

「うんっ! 空うんどうぶそくだからね!」
「そうだな、身体がなまっちゃいかん」

「こっちこそ、いつも妹が喜んでるので……ありがとうございます」



 偶然の出会いが終わり、手を振りながら離れる海来留に直人は手を振り返した。


 一人になった直人はまた天を仰ぎ、苦笑いを浮かべて呟く。




あいつ、大丈夫か?」




 未だ仕舞い切れない母への想い。

 その母の面影、どころではない海弥と同じクラスなのだ。 



「全く……勇も知ってたのか? もしそうなら……特別メニューでしごいてやるからなぁ……」



 ―――ある休日の、偶然の出会いだった。



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