異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第9章 ネシアのダンジョン編

グリーさん達の行方

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「とりあえず危機も去ったわけだし、さっき救出した奴らを出してやれよ。」

リッキーが俺にそう言って、先程助けた4人を腕輪から出してやれと促してきた。そうだね、忘れてたよ!

俺は万が一の為にとまず結界を張り、中を神聖魔法で浄化しておく。念の為ね!

それから地面に先ほどの4人を出してやると、腕輪に入れた時と全く同じ状態で座って俯いていた。

そんな彼らに近づき声をかけると、とても疲れ果てたような顔をして俺の方を見る。

そしてもう魔力を吸われていないことに気づくと、彼らは声も上げずに涙を流し始めた。

そんな彼らに俺はもう少し神聖魔法の回復魔法で身体的にも精神的にも癒してやると、今度こそやっと声を出して泣き出した。

「先ほどは取り乱して申し訳なかった。君たちは命の恩人だよ。」

ようやく気持ちが落ち着いてきたのか、泣いたことによる掠れた声で1人の男性がそう言った。

それを皮切りに、他の3人も口々にお礼を言う。


「ところで君たちは、一体何があってあんな所に囚われていたんだ?」

代表してリッキーが4人に肝心なことを聞く。

そうだよね、何であんな事になったのかは聞いておかなければ。

すると先ほど一番最初にお礼を言ってきた男性が「きっかけは分からないんだ」と言った。

「俺達は3階層辺りでいつも魔物を狩っているんだが、ある時魔物を狩り終えてドロップ品を回収していた時、急に足元の地面が無くなったんだ。俺たちは揃ってその穴に落ち、出口の無い先ほどの部屋に閉じ込められ途方に暮れて座っていたんだ。暫くは手持ちの食料も食べながらいろいろ脱出のためにやってみたんだ。やってみたんだが……結局は外に出られなくてね。途方に暮れていたらだんだん身体が動かなくなってきたんだ。しまいには普通に座っていることもできずに地面に寝転び、後は死を待つだけ……と絶望していた所に君たちが現れたんだ。最初は死ぬ間際の絶望が見せている幻かと思ったんだが、銀髪の子が回復魔法をかけてくれたおかげで回復したんだ。そして喜んだ途端に、今までとは比べものにならないほどに何故か体力を持っていかれて……。あれは一体何だったんだろうな……?」

話終わった男性は改めてお礼を言うと、今度こそホッとした顔で笑った。

なるほど……3階層くらいにいたのになぜか今は8階層にいる。

やはり穴に落ちた時点で下の階層へと行ってしまったのだろう。

もしかすると、グリーさん達も油断して同じことになっているのかもしれない。

俺は周りを見渡すと、何人かは同じ考えをしているようで、俺に頷き返してきた。

「君たちには申し訳ないが、実は俺たちの仲間も2人ほど行方不明なんだ。だからそいつらを探したいんだ。申し訳ないが、疲れ果てているだろう君たちも来てもらえないだろうか?さすがにこの場に残していくのは危険だろうからな。もし歩くのが大変だというのなら、先ほどのようにシエルの持っている収納の魔道具の中にいてもらえないだろうか?あの中にいれば時間経過がないから手持ち無沙汰になるとかはないからな。」

スコットさんは真面目な顔で、彼らに俺たちの状況を説明をする。

彼らは戸惑った顔をしたが、それでも「わかった」と言って了承してくれた。

俺たちの仲間が自分たちと同じ事になっているかもしれないということで、彼らも覚悟を決めてくれたらしい。

彼らはすぐに俺の腕輪に入ると言ってくれたので、俺もすぐに彼らを収納する。

そしてスコットさんから「ついでに頼む」と言って悠馬も一緒に収納することになった。

やはりさっきの彼らの話がショックだったのだろう。

俺の収納の中にいる限り、いつでも山田が向こうから出してくれれば日本に戻れるのだからという考えだった。

最初は悠馬も嫌がっていたが、スコットさんからの懇願するような訴えから、渋々と了承する。

やはり『親の愛』を感じ取ったのだろう。


悠馬も腕輪に収納し、俺達はまた壁の中にある『小部屋』を探しては中を確認することを繰り返した。

その中にはもう手遅れだった人もいたが、かろうじて助けられた人もかなりいた。

そして彼らにはみんな俺の腕輪の中に入ってもらい、先を急ぐ。


そして9階層から10階層へと向かう直前の階段横。

そこに珍しく『小部屋』があった。

それまでの階段では何かしらの特殊な状況だったのだが、ここでは何かが違った。

それが何なのかは答えられないが、何かが違った。

「アースさん、ここにも例の『小部屋』があります!」

俺は壁に手をついて、アースさんに場所を伝えた。

アースさんもこの場が何か特殊な感じがする事には気付いていたらしく、1つ頷くとすぐに壁を壊す為の準備を始めた。

そして一段と気合を入れて壁へと拳を叩きつける。

だが、今回はひびは入りはしたが穴が開くことはなかった。

そしてひびだけだったので、すぐに元に戻ってしまう。

「えっ?なんで!?」

俺は思わずそう叫んだ。

みんなも同じだったらしく、唖然としている。

アースさんに至っては「信じられない」といった感情が顔に表れていた。

「さて……どうするかな。シエル、この中には生命反応があるんだろう?」

スコットさんが俺に聞いてきたので、「2つあるよ」と答える。そう、2つだ。

まだ2人が行方不明になってから丸一日になりかけているところでの「2つの生命反応」。可能性は高い。

ならば何としてもこの壁は壊して、中にいる人を助けなければ。

俺は自分の武器である刀を取り出し、強固に魔力コーティングを施す。

そして更に土属性の濃密な魔力を刀に纏わせた。

これで少なくてもアースさんの様に「土属性の魔力」を纏っているので、壁を壊すのには適しているだろう。

更には念には念を入れて、自分の身体に身体強化の魔法をかける。

そして精神統一をし、精神が極限まで研ぎ澄まされたその一瞬で、壁へと力一杯円を描くように斬りつけた。

すると壁はかなりの抵抗をしてきたが、それでもしっかりと円形に切り抜くことができた。

刀を引いた一瞬で、蹴り倒すのと結界を張るのを同時に行う。

それによって無事に『道』の確保ができた。

……これだけでも結構な魔力使ったなぁ。

「おぉ~!やっと外に出れまっせ!レッカ、起きいやっ!」

部屋の中からはグリーさんの声が聞こえた。

良かった、間に合ったようだね!



急いで中へと入ると、グリーさんが目を瞑って動かないレッカさんを抱きかかえている。

えっ……レッカさん、どうしたの……?

俺はまるで死人のような顔色のレッカさんを見て言葉が出なかった。皆も一言も発さない。

そんな中、ユーリが無言でレッカさんに近寄る。

そして自らの魔力をレッカさんへと直接与えだした。

すると、それを見ていたリッキーがハッとしたように、皆に外へと出るよう促す。

一番最初の時の事を思い出したのだろう。

部屋から出る間にも、レッカさんはグリーさんに運ばれ、ユーリから魔力を譲渡され続けている。

部屋の外にみんなが出ると、俺は急いで小部屋の穴を塞ぎ、その場に強固な結界を張った。

レッカさんはその中で暫くユーリから魔力を譲渡されていると、じょじょに顔に赤みがさしてきた。

良かった、間に合ったようだね!

まだ目を覚まさないが、ユーリが治療を行っている間にグリーさんに事情を聞く。


どうやら俺達と離れてしまった後、彼らは無事に追いかけていた魔物を倒したらしいのだが、やはりドロップ品を回収していたところで何らかの植物に囚われてしまったそうだ。

その植物、レッカさんの炎でも暫く焼くことができなかったらしく、やっと焼き切ったと思ったら先ほどの部屋にいたそうだ。

そしてそれからグリーさんはなんとか俺達に連絡を取ろうと色々試みてみたが上手くいかず、その間にレッカさんは魔力をかなり消費するほどに壁へと攻撃をしていたらしい。

おかげでレッカさんはグリーさんより早く魔力枯渇を起こしかけていたようだ。

でもまぁ間に合って良かったよ。

ある程度魔力譲渡を行ったユーリは、疲れたのかあくびが止まらないようだ。

「僕は少し眠るから、まだ元気なグリーが皆を10階層の休憩所へと連れて行ってね。頼むよ?」

ユーリはそう言うと子竜の姿へと変化し、俺の胸元に飛んでくる。そしてすぐに目を瞑って寝てしまった。


「よっしゃあ、了解でっせ!さぁ日も暮れるし、さっさと行きまっせ!」

グリーさんはそう言うと、降りかけの階段を駆け下りていく。

皆も慌ててそれに続き、一気に10階層へとやってきた。

それからすぐにグリーさんは巨竜へと変化し、その背中にみんなを乗せて飛び立つ。

夜目の効くグリーさんは薄暗くなってきているけれども、周辺を見ながら休憩所らしき物を探す。



それからしばらく飛んでいると、急にグリーさんが下降を始めた。多分見つけたのかもしれない。

そしてそれは当たりだったらしく、降り立ったのは周りを木の柵で囲まれた休憩所らしき所だ。

俺は万が一の事もあるから、この休憩所の場所の草の上に結界を敷いて潰し、その上にドーム型の強固な結界を張る。

これで上からも下からも魔物が入ってくる隙間はないね!

その上で、万が一もあるので浄化魔法もかけておく。

念には念を……ってね!


それからスコットさん達はすぐに野営の準備を始め、俺は腕輪から助けた人々を取り出す。

……結構な人数だね?


そして彼らは揃って外の景色を見て驚く。

彼らにしては一瞬で休憩所に来たような感覚だからだ。

そして彼らもなんとか自分たちのテントを張り、俺たちが配った食事を持って各自のテリトリーへと戻った。

暫くは体を休めることを優先して欲しい旨を伝え、出発は彼らの体調が戻ってからだとも言っておく。

俺たちのテントも完成すると、俺は自分たちのテントにも結界を張っておく。

それから皆で中に入り、やっと一息をついた。

それにしてもこのダンジョンは何かおかしい。

とりあえず、冒険者がいなかった理由も判明し、助けられた事はとても良かったとは思う。

それにグリーさん達も助けられて良かった。


なにはともあれ、みんな揃うことができたので、今夜はしっかりと休めるだろう。


俺は夕飯を軽く済ませると、先に出しておいたベッドへとユーリを抱えてダイブする。

するとすぐに睡魔が訪れ、俺を夢の国へと誘うのだった。
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