異世界漫遊記 〜異世界に来たので仲間と楽しく、美味しく世界を旅します〜

カイ

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第9章 ネシアのダンジョン編

10階層の休憩所

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翌日の朝。

俺が起きた時にはなんだかテントの外からガヤガヤと声が聞こえた。

どうやら相当疲れていたのか、いつもより遅めに起きたようだ。

俺は1つあくびをすると身支度を整えてテントから出る。

どうやらスコットさん達はもう既に起きていたらしく、テントの外で焚き火を囲みながら昨日助けた冒険者たちと交流していた。

「おっ、シエルが起きてきたな?どうだ、体調は?」

いち早く俺を見つけたリッキーがこちらへと歩いてやってくる。

俺は「よく寝たからスッキリはしてるよ」と答えた。

……本当は少し身体怠いけどね?

もうちょっと寝れたら最高なんだろうけど。

それから俺は辺りを見回して、昨日助け出した人たちを見る。

どうやらこの場に集まっているのは総数の半分くらいの人数のようだ。

ここに来ていない人は現状大丈夫なのか聞いてみると、大抵は体力回復のために身体が睡眠を欲している様でずっと眠っているそうだ。

でもまあ……ちゃんと生きているなら、後で回復魔法をかけに行ってこようかな。その方が回復早いからね。


「ところでグリーさんたちの様子はどうなの?」

俺はあの小部屋に閉じ込められていた2人のことをスコットさんに聞いてみた。

昨日は早々に寝てしまったから、2人がどうだったのか知らないんだよね。

するとスコットさんは顔を顰めて唸りだす。

……え?何かまずいことでもあったの!?

「グリーはまぁ……まだ元気があったんだが、レッカがなぁ……。」

唸っているスコットさんの代わりに…リッキーが答える。……こいつも苦笑いなのは何故だ?

俺が戸惑っていると、隣に立ったアクアさんがこそっと耳打ちしてきた。

「僕たち4人はかなり瀕死になると竜化して体を癒すんだ。君が寝た後、レッカはまさにその状態になってしまって大変だったんだよ。いきなりだったからテントの中がいっぱいになってしまって、その場にいたほとんどが体の一部を押しつぶされちゃってね。君とユーリ様、女性陣2人は別テントで休みに行っていたから被害に遭わなかったけど、他のメンバーが被害に遭ってしまった。まぁ全身押し潰されたのは誰もいなかったから、不幸中の幸いだけど。そして今レッカは1人でテントを占拠しているから、あのテントには入れないからね?」

アクアさんはそう言って1つのテントに向かって指をさした。なるほど……あそこにいるんだね?

教えてくれたってことは『あそこには危険だから近づくな』ってことなのだろう。

「じゃあ押しつぶされた人は大丈夫だったの!?」

「うん、君が作ったアクセサリーのおかげで、みんな致命傷じゃなかったからすぐに回復したよ。ちなみに僕たち3人は押し倒されても平気なんだけどね。潰されることはないから。」

アクアさんはそう言うと、俺にウインクしてきた。

……な、なるほど。

だからスコットさんとリッキーは苦い顔をしていた訳か。……多分スコットさんのほうが酷かったのかもね?

でも休憩所にそんなでかいドラゴンが寝ているなんて、誰も想像していないだろう。

知られないようにしないとね!


その後、手持ちの軽食を朝食としてみんなに配り、まだ寝込んている人には回復魔法をかけに行ったりして過ごした。



そして昼に差しかかる頃には人間はみんな回復して元気に歩き回れるようになっていた。

「俺たちを救ってくれてありがとう!」とすれ違う人に口々に言われて照れていた時、それは起こった。

「たっ、大変だぁ!休憩所にでかい魔物がいるぞ!」

そう誰かが叫ぶ。

俺は思わず顔を顰めた。

だってそれは、俺たちのテントを勝手に覗き込んだってことだから。

まさか他人のテントに入ろうとするなんて思ってもいなかったのもあって、結界は外敵の魔物が入ってこれない様にするくらいのものしか張ってなかったのだ。

だがその声でその場はパニックになってしまった。

どうするかな、どうやって落ち着かせたら良いんだろう?

俺がそう思った時、リッキーが先ほど叫んだやつの胸ぐらを掴んで引っ張ってきた。

そして俺たちの目の前に連れてくると、地面に転がした。

「スコット、こいつ俺たちのテントを勝手に開けて中を見やがったんだ。幸い他のテントには女、子供だけじゃなくてヒューザ達もいたから何も問題は起こらなかったが、まるで空きテントを狙ってるような行動をしていた。おいっ、お前、一体何をしようとしたんだ?まさか犯罪を犯そうとしていたんじゃないだろうな?」

リッキーはとても冷ややかな目でそいつを見ている。

スコットさんやアースさんも信じられないといった目で見下ろしている。

その人は頭を項垂れて、弁解や反論を何一つしない。

それはまるでリッキーの言葉を肯定しているかのようだ。

彼の冒険者パーティーのメンバーも同様に青褪めている。

もしかしてパーティー全員でそういう事をしていたのかもしれない。

俺は辺りを見渡していると、他にも顔色が悪い人や逆に表情がなくなってしまった人が結構いることに気がついた。……えっ、どういう事?

とりあえずふと浮かんだ疑問は後に回すとして……まずはこの人をどうするのか、だ。

俺はチラッとスコットさんを見る。

すると彼はその男性の直ぐ側でしゃがみ込み、彼に話しかけた。

「なぁ、黙っていれば済むわけじゃないんだぞ?」

「……。……すまん、ついいつもの癖でやってしまった。」

その男性はとうとう自白をし、更に項垂れる。

それを見たスコットさんは深いため息をつくと、立ち上がる。

「……すまないが、この場にいる俺たちのメンバー以外は、回復したのなら速攻このダンジョンから出ていったほうがいい。今、このダンジョンは危険だからだ。もちろん10階層のボスはみんなで倒せないのなら、俺たちで倒してやっても良い。あと、もし残るというのならば、俺達とは別行動をしてもらう。こちらはもう行方不明になっていた仲間を救出したから、みんなが捕らわれていた『小部屋』を探すことはしない。だからもし、また同じ事になっても『自己責任』だからな。それを踏まえて、よく考えることだ。」

スコットさんは周りに通る大きな声でそう言うと、俺たちに目配せをしてテントへと戻る。


俺はすかさず俺たちのテントに張った結界を、仲間以外にはテントを触ることもできないように少し離して結界を重ね張りをした。

これで俺たち以外はテントに触ることもできない。

テントの中に入ると、リッキーは小声で「あいつら、半数以上がこのダンジョンで盗みや殺しとかの犯罪をしていたようだ」と言った。

なるほど、いろいろとやらかしていたんだ……。

でもまさか、自分を助けてくれた人さえターゲットにするとは思ってもいなかった。

さすがにそんな人達とは一緒に行動はしたくない。

スコットさんの決定は当たり前の事だ。


それからしばらく仲間内だけで過ごしていると、コンコンという音が聞こえた。多分結界を叩く音だろう。

俺は結界から出ないようにそばまで近づくと、その人は俺たちが一番最初に見つけて手当をした人達だった。

「……どうしました?」

俺が彼らに向かってそう言うと、彼らは苦笑いをして「あれから皆で話し合ったんだ」と言った。

「俺達、みんな揃ってこのダンジョンを出ることにしたんだ。さすがにこの人数ならこのフロアボスくらい倒せるだろうという意見でな。まだ昼過ぎで日没まで時間があるし、これから向かうことになったんだ。だから最後の挨拶に来た。本当にありがとうな。もしどこかで会ったら、その時は一緒に食事でも行こう。あ、俺たちのチーム名を言ってなかったな。俺達はつい最近ローランの街で活動し始めたばかりのCランク冒険者チーム『ヤドリギ』という。君たちは?」

その『ヤドリギ』というチームのリーダーらしき人がそう言って俺に握手として手を差し出す。

俺はその手を握り返し、「こちらはBランク冒険者の『スノーホワイト』です。ローランの街のギルドマスターは俺達の友人なのでよく行きますから、その時に会ったら一緒に食事でもしましょう」と言った。

すると彼らはとても驚いた顔で「なんだ、すごい有名人だったんだな!」と言い、なんだか嬉しそうな感じだ。

「ならば尚更、お前達には迷惑はかけられないな。無事にダンジョンの外に出れるよう祈っていてくれないか。」

「……はい。あ……そうだ、これを持って行ってください。」

俺は彼らの事を悪い人だとは思えず、このまま万が一にも犠牲になることがないようにと、大きめの魔石を取り出すと即席の『回復の魔道具』を作り出す。

この魔石にはみんなが持っているアクセサリーの劣化版の能力を付与しておいた。

「これ……傷を癒してくれる魔道具なので、持っていってください。大体10回分の魔法が詰まっていますので、それを超える回復はできませんので覚えていてください。」

俺がそれを手渡すと、驚いた顔で彼らは受け取った。

素直に受け取ったのは多分回数が限られているので、そこまで高額な品にはならなかったからだろう。

彼らはありがとうとお礼を言うと、他の人達がいる所へと戻って行った。


彼らが無事にこのダンジョンを出て街へと戻れますように……。

俺は彼らの後ろ姿を見ながら、そう祈っておいた。
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