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第10章 国立学校 (後期)
頑張れ、アンドリュー!
しおりを挟むアンドリューが目覚めた翌日に学校に登校すると、いつもは遅刻ギリギリにやってくるアンドリューがもうすでに登校していた。
やはり昨日ウィンディさんから「友達を増やせ」的な事を言われたから、少しはやる気?を出したのかもしれない。
そんな彼は俺と目が合うととても気まずそうな顔をして目を逸らした。
……まぁ、その気持ちはわからなくはない。
俺は苦笑いをすると、そのままいつもの席へと座った。
案外アンドリューとは席が近いので、なんとなく気まずい。
でも、それから程なくセイン達もやって来たので、俺は気まずさから解放されてホッとした。
「おはよう、シエル!昨日あれからなんかあったんだって?」
セインが俺と目を合わせるやいなや、開口一番にそう言った。
……当事者を目の前にしてそれ言われるの、なんか気まずいんだけど?
「……まぁね。でも多少スコットさんに怒られるくらいで済んでよかったよ。」
「そりゃ怒られるさ。お前、意識なかったから知らないだろうけど、そりゃあ大変だったんだぞ?あの2人、お前があいつの手を握って意識がないことで相当焦ったようでな。父上にまで話がいったほどだぞ?結構な大事になっていたみたいだ。」
「えっ、そんなに?」
セインの言葉に俺は驚いてしまった。
まさかスコットさんとリッキーの2人が、そこまで騒ぎ立てるとは思ってもいなかったのだ。
俺が少し驚いていると、セインは急に俺の耳元に口を寄せ、「まぁ大騒ぎになったのはそれだけじゃなかったんだがよ?」とコソッと耳打ちをした。
そしてチラッとアンドリューを見たので、彼が意識を取り戻した事も大騒ぎの原因の1つだったのだろう。
「まぁ何にせよ、すっかり元に戻ったようで良かったよな!だって俺達の国に来て大怪我……はお前がいるから無いにしても、意識が戻らないなんて事があれば『国交間の問題』ていうのになるんだって聞いたからさ。」
セインがそんな事を苦笑いしながら言った。
そっか、誰かがセインにそんなこと言ったんだね。
通りでセインらしくない言葉を喋ったわけだ。
そこまで話をしたところでマール先生がやってきて学活が始まる。
マール先生はその中で、各学年のトーナメント戦が終了したから今度は全校での総当たり戦をすると言っていた。
今はそれに出場する選手決めをしているらしい。
「その中で出場させるかどうかで悩まれているのが、シエルくん、君だ。君は確かに圧倒的な強さで優勝したのだが、そのあまりの強さに他の学年が異論を言ってきてね。どうやっても1年生代表が優勝するのは目に見えていると言って聞かないんだ。そんなに言うのなら、能力制限の魔道具をつけたままで戦ってはどうか?ということも話しあわれていて、それによっては出場は諦めてもらうかもしれないが……良いかい?」
マール先生は申し訳なさそうに、俺にそう言った。
いや、俺は別にその大会に出場しなくても良いんだけど?
そこまで目立ちたいわけじゃないし。
そこまで考えたところで周りを見ると、なんだか皆ががっかりした顔をしている。
……えっ、もしかして俺が出ることを期待していた?
俺が目をパチクリさせて見回していると、隣のクロードが「やっぱり優勝したいからね」と苦笑いする。
なるほど……俺にそこまで期待していたのか……。
俺がそんな事を考えていると、マール先生も皆の表情を見て「能力制限をかけてもいいから出させてもらえないか、もう一度先生からもお願いしてみるよ」と言って頷く。
まぁ……しょうがないよね。
それに能力制限をかけたってあまり関係ないかもだし。
逆にそっちの方が周りと能力が近づくから楽しめるかもしれない。
俺はとりあえずそう思うことにして、出場しない事は諦めた。
それから1日普段通りの授業だったが、クラスには少し変化があった。
そう、アンドリューの方からセインやローラに話しかけるようになったのだ。
それも以前のような上から目線の話し方ではなく、なんとなく対等な感じの『普通の話し方』に頑張って変えようとしているのが分かる話し方だった。
更には、あれだけトーナメント戦で俺に対抗心を燃やしていたアンドリューが、俺に対して少しは敬うような態度を取るようになったのも、彼にとっては『劇的な変化』といえるだろう。
そんなアンドリューを見て、クラスの皆は「昏睡から目覚めたら、今までとはかなり違う人格になった」と認識したらしい。
彼がどちらかというと良い方向へと変わった事で、「その時に一緒に意識がなかったシエルが何かしたのではないか?」という内容をあちこちで話しているのも聞こえてきた。
……それに関しては俺っていうより、先代の風の属性竜の長であるウィンディさんのおかげじゃないかな?
なにはともあれ、アンドリューが昏睡前よりかなり柔らかい性格になった事でクラスメイトも少しずつだが話しかけようとしはじめたようだ。
これからまだ何年も彼らは一緒に学ぶんだから、よそよそしい態度で過ごすよりも仲良くやっていければ、それはアンドリューにとっても一生の思い出になるんじゃないかな?
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