異世界のんびり漫遊記 子ドラゴンと冒険者ライフを楽しみます

カイ

文字の大きさ
545 / 584
第12章 新しい土地へ

里への襲撃 2


俺がそう思っていると、奴はもう俺達の事には興味を無くしたのか、その目はすぐ脇に聳え立っている世界樹へと向いていた。

そしておもむろにその両手を伸ばし、その両手の間に禍々しい色をした炎を作り出した。

「貴様、一体何をする気だ!?」

俺は慌てて結界を階段のように作り出すと一気にその神官の元へと向かう。

奴はそれを見て驚き、作り出していた炎を俺に向かって放った。

俺は奴が現れる前に、自分自身や仲間にも個別に結界を張っている。

もちろん武器にも魔力コーティングを施してある。

だからその炎を俺に向けられた時、愛刀でその炎を一刀両断して霧散させた。

するとそれを見た神官は目を見開き、今しがた何が起きたのか分からないといった表情をした。

「き……貴様、今、何をした……?」

神官は驚きのあまり、やっと言葉を紡いだといった感じで呟いた。

俺はそんなことに構わず、改めて刀を構える。

そして俺は奴に向かって巨大な結界を足元に張り、足場を完全に確保する。

よし、これなら安全に戦えるぞ。


そして準備ができた俺は、こちらから攻撃を仕掛けていく。

結界は透明なので、張った本人は見えるが、他の奴はよほどでないと見えない。

だから神官には、まるで俺が空中を走って来ているようにしか感じられず、あまりの恐怖に両手から無数の魔力弾を俺に向かって撃ち放ってきた。

俺はその全てを愛刀で全て斬って霧散させ、とうとう奴の目の前まで来た。

俺が刀を構えて振り下ろそうとすると、奴ももう姿に構っていられなくなったのだろう。

その本性を表し、硬化した腕で俺の刀を受け止めようとした。

その鉄の鱗の様な腕に俺の刀が当たると、一瞬だけ金属同士が触れ合う様な音がした。

だが俺が刀をそのまま力ずくで振り下ろすと、その腕はとても切れ味良く斬り落とされてしまった。

「なっ……!何だとっ!?」

神官は斬り落とされてしまった腕を見て驚き、一気に後ろへと下がり、俺とかなり距離を開けた。

奴の様子はもう落ち着いていて、傷口を見る様はまるで痛みを感じていないかのようだった。

それに、その切り口からはほとんど血が出てこない。

どういう事だ?と思っていると、その切り口から淡い光が漏れているので、いつの間にか回復魔法を使っていたようだ。

やはり神聖法国の神官だっただけあり、回復魔法はお手の物なのだろう。


俺が気を抜かずに神官の動向を注意していると、奴はまたもや世界樹に向かって攻撃をしようとし始める。

俺は肉薄して今度こそ致命傷を与えなければと思ったのだが、神官との距離がかなりあるので、空中に結界を出して向かうことによってタイムロスが生じ、奴に世界樹への攻撃を許してしまった。

それは小さな禍々しい黒炎だったはずなのだ。

だから俺も急いで水をかければ消えるだろうと高をくくっていた。

だがその黒炎は水では一切消えず、あっという間に世界樹の真ん中部分から上下へと火が移っていく。

俺は焦りのあまり、どうしたらいいのか分からずにパニックになってしまった。


神官はそんな俺を見て嘲笑うように酷薄な顔を向けた。

俺はどんどん燃え広がっていく世界樹を見て、呆然としていると、奴はそんな俺に向かって一気に飛んできた。

奴の手には短剣が握られており、目の前まで来ると俺の心臓をめがけて突きだしてきた。

だが俺は結界が張ってあるので、奴の攻撃は全く通用しなかった。

その攻撃により、俺はハッとして意識が戻った瞬間に無意識で奴の首をきり落とし、更に乱斬りをして細切れにしてしまった。

あそこまで粉々になってしまうともう回復をすることはないだろうとは思ったが、それでも念を入れてその細切れになった肉片は1つ残らず俺の作り出した業火の炎によって一瞬で灰になった。


俺の立っている結界の上に残った灰を見て、それから世界樹に目を向けた。

そこにはもう既に全身を黒炎で包まれている世界樹がいる。

俺はそれを見て力なく膝から崩れ落ちると、胸が張り裂けそうな思いがした。


ほんの少し前まで一緒にラドゥガを創っていた世界樹。

その世界樹が目の前でなすすべもなく燃え尽きるのを待つしかないのだ。


俺の目からは止めどなく涙が溢れ、自分の無力感をまざまざと感じる。

最近は本当にいろいろな事ができたことで、知らないうちに驕っていたのかもしれない……。

『ほんの少しの燃え移った炎が自分に消せないわけないじゃないか』、そんな風に思っていたのかもしれない。


それを思うと、後悔に苛まれて更に涙が止まらなくなってしまった。
感想 32

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。週一更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結 新作 【あやかしたちのとまり木の日常】 連載開始しました。