307 / 603
第7章 新しい出来事
あのダンジョンはどうなった?
冒険者ギルドの中に入るととても閑散していたが、ちょうど今が昼時で冒険者はみんな出払っているからだろう。
夕方前になればその日の依頼達成の受付で混雑するはずた。
皆でぞろぞろ行くのもなんだからとスコットさんだけ受付に行き、俺達はこの後の昼食のためにギルド併設の食堂へと向かう。
そこは意外と混雑していたので、もしかすると提供される料理が美味しいと評判なのかもしれない。
俺たちは空いているテーブルへと座り、足りない椅子は自前で鞄から取り出す。
「じゃあスコットが来るまでに料理を考えておこうぜ?」
リッキーはそう言うとウエイトレスの女性に声をかける。
ウエイトレスはメニュー表を手にこちらへとやってきて、それを置いていった。
どうやら注文が決まったらまた呼ぶらしい。
俺たちはメニューを見てそれぞれ食べたいものを選ぶ。
ちなみに俺はオーソドックスにオーク肉の野菜炒めにした。バランスは大事だよね!
みんなが注文を終えた頃、スコットさんが帰ってきた。
彼の分はリッキーと同じく、ブル系のお肉のステーキを頼んだよ。ちなみにリッキーの1.5倍だ。
「どうだった?やっぱりダンジョンで何かありそうなのか?」
スコットさんがテーブルにつくと、すかさずリッキーがそう聞いた。
余程気になっていたのだろう。
するとスコットさんは何ともいえない顔をして口を開く。
「いや、ダンジョンはそこまでの大変な状態にはなっていないらしい。俺達がダンジョンを去ってから暫くして『変換期』は終了したとギルドに連絡が来たらしい。だが、その後に一応軍が最下階層から最上階層までどんな魔物が出るのかや休憩所の被害がどの程度あるのかを調べているらしい。それに時間がかかっているらしく、まだ帰ってきていないんだそうだ。ギルドにまわっている噂によると、今回の『変換期』で最下層から10階層くらいまではそこまで急激な魔物の強さの変化は無かったらしい。そこから上は強さが以前より2割増しくらいだとの話もあった。とりあえず俺が収集してきた話はそんなところだ。」
なるほど、そんな大した問題が起こっているわけじゃなかったから、あんな表情だったんだね?
とりあえず俺達は大したことがなかったようでホッとした。
この分なら学校が始まる週明けにはリーシェさんは帰ってきて、教鞭を振るうはずだ。……多分。
「とりあえすダンジョンの方は大丈夫だったとして、だ。今度はシエルの件なんだが……この後、また学校に行ってソエル先生に直談判をしてこようと思っているんだが……お前らはどう思う?」
リッキーはそう言うとスコットさん達の顔を見回す。
皆は頷いて返答した。
それから俺達は運ばれてきた料理を堪能し、ギルドを出ようと受付前を横切っていると声をかけてきた人がいた。
「よう、もう帰るのか?もし時間あるなら手持ちの魔物の素材を売りに出さないか?」
その男性は受付のカウンター越しに、スコットさんにそう声をかける。
スコットさんはチラッとリッキーの顔を見ると、リッキーは頷いた。
「……よく俺達がダンジョンの品をまだ持っているって気づいたな?」
「いや、だってお前たち、他の街でもドロップ品を売ってないだろ?そういうのって案外ギルド同士で情報交換をするんだよ。……で、売ってくれないのか?」
その男性はスコットさんに向かって「頼むよぉ~」と両手を合わせて頼み込んでいる。
……おかしいなぁ、軍からのドロップ品は無いのだろうか?
あんなに魔物を倒していたのに、回せないほど少なかった訳が無い。
俺がそう思った時、リッキーがその男性に対して話しかけた。
「ギルマス、軍が大量のドロップ品をギルドに回してこなかったのか?」
「そうなんだよ。俺たちとしてもかなり期待していたんだけど、今のところ冒険者が持ち込んだ物しか入荷していないんだ。一体どうしたんだろうな?」
リッキーの問いかけに、その『ギルマス』と言われた人が首を捻ってそう答えた。
「まっ、そういう事だからお前達がうちに卸してくれるのを期待しているんだよ。どうだ、売ってもらえるか?」
ギルマスは期待を込めた目で俺達を見た。
「まぁ……別に出し渋っているわけじゃなく、たまたまギルドに行く時間がなかったんだ。じゃあ聞くけど、どんなのが欲しいんだ?防具にできそうな物とか、武器にできそうな物とかのほうが良いのか?」
「おいおい、そんな色々とあるのか?」
「ああ、あそこのダンジョンは一番上まで行ったからな。そこに行くまでの間は魔法師団長のリーシェさんと一緒に行動していたから、俺達が倒した魔物のドロップ品の半数近くは渡したんだけど、それでもかなりの数があるぞ?」
「本当か!?じゃあ……防具用の素材と魔石なんかもあるか?武器用素材は少量でも良いんだが、この所強めの魔物が街の外にも出るようになってな。それで防具用の良い素材があれば、討伐に向かう冒険者が多少は安全になるから助かるんだ。」
「……なるほど。じゃあフォレストアントと25階層の熊の毛皮と爪のドロップ品を譲るよ。この熊の毛皮、リーシェさんの話だと刃物が通らない程の丈夫さらしいから良い防具になるんじゃないかな。」
「……熊?」
「そう、熊。名前はよく分からん。」
「とりあえず奥の解体場に来てくれ。あそこなら大量の品を受け取れるからな。」
ギルドマスターはそう言うと、俺達を連れてギルドの奥へと向かった。
さて、あの量のアントの外殻や熊の毛皮を見たらどんな顔をするかな?
俺はこのギルドマスターの驚く顔を想像してクフフフと笑ったのだった。
あなたにおすすめの小説
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界で 友達たくさん できました ~気づいた時には 人脈チート~
やとり
ファンタジー
異世界に突然迷い込んだ主人公は、目の前にいた人物に何故かぶぶ漬け(お茶漬け)を勧められる。
そして、自身を神の補佐である天使というその人物(一応美少女)に、異世界について教わることに。
それから始まった異世界での生活は、様々な種族や立場の(個性的な)人に出会ったり、魔界に連れていかれたり、お城に招待されたり……。
そんな中、果たして主人公はどのような異世界生活を送るのだろうか。
異世界に迷い込んだ主人公が、現地の様々な人と交流をしたり、一緒に何かを作ったり、問題をなんとかしようと考えたりするお話です。
山も谷も大きくなく、話の内容も比較的のんびり進行です。
現在は火曜日と土曜日の朝7時半に投稿予定です。
感想等、何かありましたら気軽にコメントいただけますと嬉しいです!
※カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様にも投稿しています
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました。