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第8章 国立学校編
模擬試合 4
しおりを挟む武器を変えてしばらく素振りをしていたスコットさんだが、暫くしてその剣をこちらに向けて構え直す。
「待たせたな。俺の準備はできたから、試合続行できるぞ。」
スコットさんはそう言うとニヤリと笑う。
……ホントはそっちの方が扱いやすいんでしょ?
とりあえずスコットさんの武器が素の剣なので、俺の方も魔力コーティングを強制的に解除する。
そうじゃないとフェアじゃないからね。
そして準備が完了すると、スコットさんが構えているので俺も構える。
俺が頷くと同時に互いに近づき、剣の応酬となった。
先ほどまでの疲れなど無くなったかのように、素早く剣を繰り出すスコットさん。
やはりあの大剣は筋肉を鍛える重石だったんじゃなかろうか?
それほどの速さの違いがある上に、すごく楽そうに剣を振っている。
……そりゃそうか、あんなに重いものをひょいひょいと動かしていたんだから、何分の1しかない重さの剣なんておもちゃの剣のように感じるのだろう。
時々スコットさんが打ち合いの間に素早く剣を振って俺を翻弄して調子を崩してくるが、なんとか耐えている俺。
たが俺も、さすがに2連戦なので疲れてきている。
少し疲れのせいで集中力が途切れた瞬間、スコットさんは急に剣を下段に構えて溜めを作り、居合斬りのように剣を繰り出した。
俺は慌ててその剣を受け流すと、スコットさんはその剣をひらりと翻し、上段から脳天に振り下ろす。
それも後ろに飛んで避けてたのだが、それを読まれていたのか、スコットさんも肉薄してくる。
それに慌てた俺の足が縺れて転んでしまい、素早く振るったスコットさんの剣が俺の首に添えられた。
……チェックメイトだ。
その瞬間、修練場が大歓声に包まれる。
まだマール先生の宣言はされていないが、どう見てもスコットさんの勝ちだからね。
スコットさんがマール先生に「一応勝敗を決めてくれ」というと、先生は慌てて俺たちの方へとやってきた。
「ものすごい試合だったな!スコットもここにいた時とは全くと言っていいほどの別人の動きだった。お前、このくらいの剣は得意だったっけ?」
スコットさんの勝ちを宣言したマーラ先生が、首を傾げながらスコットさんにそう言う。
……そりゃあ前世の技術を思い出した後では動きが違うだろうね?
苦笑いをしたスコットさんは、俺の手を引いて起こしつつ「まぁ……いろいろあったんで」と言った。
「それにしてもシエル君はこの2人についていけるほどの剣術の腕があるんだね。もう、先生が教えることはない気がするんだけど?……あ、逆に君から俺も含めて教わればいいのか。なるほど、その為の入学許可なのかもな。」
マール先生はそう言うとウンウン頷いている。
……それは……違うんじゃないかな?
「そういえば君たち、剣から光の刃が飛んでいたけど、あれは一体何なんだ?スコットはほとんど魔力がないから、あんな芸当はできないと思っていたんだが……。」
顎に手を当てながら考えていたマール先生は、そう言って首を傾げている。
「あれはですね、俺がスコットさんの大剣に魔力コーティングを何重にもかけてしまったせいで起こった現象なんじゃないかと思います。」
「……と、いうと?」
「その何重にもかけた魔力コーティングが、スコットさんの意思と関係なく急に剥がれて飛んでいった………ってところなんでしょう。最後の一重は残っていたので、それで間違いはないと思います。」
俺の説明にひとまず納得したのか、マール先生は「なるほどねぇ~」なんて言って頷いている。
それから俺は先ず結界を解除し、観客席から試合をした場所まで全校生徒に移動してもらうと、観客席も全て元に戻した。
「……君、剣術も魔法の腕も凄いんだね。」
俺のやることをずっと驚いた顔で見ていたマール先生。
そのマール先生の言葉にその場にいた先生も無言で頷いている。
生徒の方は上級生も含め、皆がざわざわと話をしている。
よく聞けば俺達3人の実力を目の当たりにしたことによる評価の変化の話がほとんどだ。
そんな俺達のところに王族3人組がやってくる。
「お前達……なんで国の支配下に入らないんだ?」
険しい顔をしたセインが俺たちに向かってそう言い放つ。
……よほど腹に据えかねているのか、声が少し震えている気がする。
「お父上から我々のことは話を聞いていないのでしょうか?」
セインの言葉にリッキーが答える。
それを聞いたセインはとうとう我慢ができなくなったらしく、声を荒げて叫んだ。
「聞いてはいるっ!いるが、俺は納得できん!それほどの実力があるのだから、国の為に働くのが筋じゃないのかっ!?」
そんなセインに対し、リッキーは声の大きさを抑えて口を開いた。
「我々は冒険者。国の所属ではなく、国を越えて世界中に支部のある『冒険者ギルド』の所属です。国と冒険者ギルドとの取り決めで『冒険者ギルドに所属している者を強制的に軍属させたりする事は禁止される。』とあるのをご存知ですか?」
「……。」
「それを破ることはたとえ国王であろうともできません。だから国王は我々に対して強気に出ることはないのですよ。」
リッキーのその落ち着いた態度も癪に障ったのか、苛々した顔で睨みつけてきた。
「そんなもの、俺が国王になったら撤回して廃止にしてやる!そうすればお前たちは俺の配下になるんだ!いい気になるなよ!?」
それを聞いたスコットさんは「もしそれを実行に移せたとして……」と前置きをして、しっかりとした目でセインを見た。
「我々はこの国には二度と戻らないでしょう。そんな国には自由を愛す我々冒険者は次第にいなくなるはずです。そうなった時、本当に困るのはあなた達王族でしょうね。この前のダンジョンでの『変換期』を乗り越えることができたのも、軍だけでなく我々冒険者がいたからです。もしいなかったら、それこそ軍には多大なる被害があったでしょう。これはその場にいた我々だからこそわかることですがね。」
スコットさんのその言葉に、口を噤んだセイン。
まさかそこまでのことになるとは思っていなかったようだ。
そんなセインを見て、クロードは一つため息をついて「もう諦めろよ。」と声をかけた。
「いいのよぉ~、シエルは私のものにするんだから。私の婚約者になってしまえばこの国から出ていくことはできないもの。早くお父様にお願いしなくちゃ!」
そんな事を言ったのはローラだ。
……言っとくけど、俺は拒否するからな。
俺が眉間に皺を寄せて嫌そうな顔をしていると、ローラは鼻息荒く「私の物なのになんでそんな顔するのよ!」と迫ってくる。……近寄らないでくれるかなぁ。
俺のそんな言葉が届いたのかはわからないが、クロードが間に入って「お前もやめろよ。何でもかんでも自分の思い通りになると思うな」と言ってくれた。
やばいなぁ……これ、早くなんとかならないのかな?
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−−−−−−
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