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第515話 星の決断力
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「そなた達! ここに居たのか!」
ノアに呼び出されてこき使われた妖精王は、カイからの連絡を受けてすぐさま地下に戻ると、子どもたちは全員核に居た。
「妖精王! 母さま達が危ないんだ! あと、オズがこっちに向かってるかもしれない!」
「なに!?」
ノエルの言葉に妖精王は息を呑んで天井を見上げた。
今のところ何も問題は無さそうだが、観測者が抱えるモニターからルークの淡々とした各地で起こっている情報を聞く限り、どうやらノエルの言う事は間違ってはいないようだ。
「いっそ天井を塞ぎたいが、ここだけは我も干渉出来んのだ」
「そうなの?」
「ああ。妖精王もソラすらもここへは手出しは出来ない。ここを守れるのはディノと星だけなのだ」
「……そうなの……」
「……すまぬ……」
あどけないアミナスの質問に正直に答えた途端、アミナスはしょんぼりと俯いてしまう。何だかそれがとても申し訳なくて妖精王も肩を落としていると、そこにディノの幻が現れた。
「ディノだ! ディノ、オズとヴァニタスがこっちに向かってる。何か対策は取れる?」
突然現れたディノの幻にレックスが問うと、ディノは少しだけ考えるような仕草をしてポンと手を打った。どうやら何かを思いついたようだ。
それに気づいたレックスが目を閉じると、ディノの思考が滝のように流れ込んでくる。いつもならディノは情報を整理してからレックスに教えてくれるが、どうやら今はまとめる時間すら惜しいらしい。
「水……妖精……リゼ……逃げろ……どういう意味だろう?」
「水、ですか。それに妖精?」
「リゼの後の逃げろ、とはリゼを連れて逃げろと言う意味でしょうか? 観測者さん、分かりますか?」
「わ、私に聞くの!? 分かる訳ないじゃない! ていうかディノってばこんなちっちゃくなっちゃって! 随分久しぶりねぇ」
懐かしさのあまり思わず幻のディノに声をかけた観測者を皆が睨みつけてくる。
「ご、ごめんなさい。何だか懐かしくなっちゃって。それにしてもこれまた可愛らしい妖精の樹ね。こんな所に根を張っちゃって、まるでユグドラシルだわね」
普通は地上に生えている妖精の樹が何故こんな所にあるのか。観測者が感心したように言うと、突然モニターの向こうからテオの声が聞こえてきた。
『ノエル! 今すぐに水を用意して! それからカイ! 君はリゼを連れてディノの部屋に戻るんだ。他の皆もだよ!』
「テオ?」
『それは妖精の樹だ。水を与えたら途端に凶暴化する。ノエル、君たちはヴァニタス達がそこに現れたらその樹に水を与えてすぐさまそこから逃げて。そうしたら後は妖精の樹が勝手に敵を捕まえてくれる』
「なるほど! 分かった。それじゃあカイ、リゼをよろしくね!」
「分かりました。星、リゼを一時ここから連れ出す許可を」
『守って……姫を……お願い……』
「もちろんです。リゼには手出しさせません。妖精の樹、少しだけここを通してください」
星の返事を聞いたカイは急いで樹の根っこの隙間からドームの中に入り込もうとしたが、樹の根はカイを避けてはくれない。これではリゼを連れ出す事など出来ない。そんな事を考えていると、ふとアミナスが後から近づいてきた。
「私もね、傷つけたくない。母さまがいっつも言うんだけど、無益な殺生はダメだと思う。でもね、今は緊急なんだよ。言う事聞かないと端っこの方焦がしちゃうぞ!」
そう言ってアミナスは小さな手のひらに火の玉を作った。それを見てまずはディノが鱗を逆立てて両目を抑える。続いて星の声が聞こえてきた。
『乱暴は止めて! 燃やさないで!』
「言ったでしょ!? 緊急事態ってやつだよ! ヴァニタスにリゼ連れて行かれてもいいの!?」
『……良くない……良くない……やっちゃって……』
「ちょっとぉぉぉ! 星ちゃん! あなたよく考えなさいよ!? ディノが動揺してるじゃないの!」
案外あっさりアミナスの言う事を聞いた星に観測者が驚いたように抗議すると、そのまま星は黙り込んだ。
目の前ではディノがブルブルと鱗を逆立てて震えている。
「ディノ、おぬしパスタを茹でる火力は平気になったのだろう?」
呆れた妖精王の言葉にディノは首をぶんぶんと激しく振った。
「それとこれとは別って言ってる。パスタの火は調節されてて大きくならないけど、アミナスの火はどんな燃え方するか分らないから怖いみたい」
「まぁ、それは一理あります。そんな訳で妖精の樹さん、お嬢様がここで火を使えば下手したらあなたは丸焼けになってしまいます。早いところどこか開けてください」
いつでも冷静なレオが静かに言うと、樹はようやく言葉に従った。
仕方ないな、とでも言いたげにノロノロと根っこの一部を開けた妖精の樹の中にカイと、何故かアミナスが入り込んで行く。
「何故お嬢様まで?」
それに気づいたカイが振り返ると、アミナスは何故かリュックを漁って大きなローストビーフを取り出した。
ノアに呼び出されてこき使われた妖精王は、カイからの連絡を受けてすぐさま地下に戻ると、子どもたちは全員核に居た。
「妖精王! 母さま達が危ないんだ! あと、オズがこっちに向かってるかもしれない!」
「なに!?」
ノエルの言葉に妖精王は息を呑んで天井を見上げた。
今のところ何も問題は無さそうだが、観測者が抱えるモニターからルークの淡々とした各地で起こっている情報を聞く限り、どうやらノエルの言う事は間違ってはいないようだ。
「いっそ天井を塞ぎたいが、ここだけは我も干渉出来んのだ」
「そうなの?」
「ああ。妖精王もソラすらもここへは手出しは出来ない。ここを守れるのはディノと星だけなのだ」
「……そうなの……」
「……すまぬ……」
あどけないアミナスの質問に正直に答えた途端、アミナスはしょんぼりと俯いてしまう。何だかそれがとても申し訳なくて妖精王も肩を落としていると、そこにディノの幻が現れた。
「ディノだ! ディノ、オズとヴァニタスがこっちに向かってる。何か対策は取れる?」
突然現れたディノの幻にレックスが問うと、ディノは少しだけ考えるような仕草をしてポンと手を打った。どうやら何かを思いついたようだ。
それに気づいたレックスが目を閉じると、ディノの思考が滝のように流れ込んでくる。いつもならディノは情報を整理してからレックスに教えてくれるが、どうやら今はまとめる時間すら惜しいらしい。
「水……妖精……リゼ……逃げろ……どういう意味だろう?」
「水、ですか。それに妖精?」
「リゼの後の逃げろ、とはリゼを連れて逃げろと言う意味でしょうか? 観測者さん、分かりますか?」
「わ、私に聞くの!? 分かる訳ないじゃない! ていうかディノってばこんなちっちゃくなっちゃって! 随分久しぶりねぇ」
懐かしさのあまり思わず幻のディノに声をかけた観測者を皆が睨みつけてくる。
「ご、ごめんなさい。何だか懐かしくなっちゃって。それにしてもこれまた可愛らしい妖精の樹ね。こんな所に根を張っちゃって、まるでユグドラシルだわね」
普通は地上に生えている妖精の樹が何故こんな所にあるのか。観測者が感心したように言うと、突然モニターの向こうからテオの声が聞こえてきた。
『ノエル! 今すぐに水を用意して! それからカイ! 君はリゼを連れてディノの部屋に戻るんだ。他の皆もだよ!』
「テオ?」
『それは妖精の樹だ。水を与えたら途端に凶暴化する。ノエル、君たちはヴァニタス達がそこに現れたらその樹に水を与えてすぐさまそこから逃げて。そうしたら後は妖精の樹が勝手に敵を捕まえてくれる』
「なるほど! 分かった。それじゃあカイ、リゼをよろしくね!」
「分かりました。星、リゼを一時ここから連れ出す許可を」
『守って……姫を……お願い……』
「もちろんです。リゼには手出しさせません。妖精の樹、少しだけここを通してください」
星の返事を聞いたカイは急いで樹の根っこの隙間からドームの中に入り込もうとしたが、樹の根はカイを避けてはくれない。これではリゼを連れ出す事など出来ない。そんな事を考えていると、ふとアミナスが後から近づいてきた。
「私もね、傷つけたくない。母さまがいっつも言うんだけど、無益な殺生はダメだと思う。でもね、今は緊急なんだよ。言う事聞かないと端っこの方焦がしちゃうぞ!」
そう言ってアミナスは小さな手のひらに火の玉を作った。それを見てまずはディノが鱗を逆立てて両目を抑える。続いて星の声が聞こえてきた。
『乱暴は止めて! 燃やさないで!』
「言ったでしょ!? 緊急事態ってやつだよ! ヴァニタスにリゼ連れて行かれてもいいの!?」
『……良くない……良くない……やっちゃって……』
「ちょっとぉぉぉ! 星ちゃん! あなたよく考えなさいよ!? ディノが動揺してるじゃないの!」
案外あっさりアミナスの言う事を聞いた星に観測者が驚いたように抗議すると、そのまま星は黙り込んだ。
目の前ではディノがブルブルと鱗を逆立てて震えている。
「ディノ、おぬしパスタを茹でる火力は平気になったのだろう?」
呆れた妖精王の言葉にディノは首をぶんぶんと激しく振った。
「それとこれとは別って言ってる。パスタの火は調節されてて大きくならないけど、アミナスの火はどんな燃え方するか分らないから怖いみたい」
「まぁ、それは一理あります。そんな訳で妖精の樹さん、お嬢様がここで火を使えば下手したらあなたは丸焼けになってしまいます。早いところどこか開けてください」
いつでも冷静なレオが静かに言うと、樹はようやく言葉に従った。
仕方ないな、とでも言いたげにノロノロと根っこの一部を開けた妖精の樹の中にカイと、何故かアミナスが入り込んで行く。
「何故お嬢様まで?」
それに気づいたカイが振り返ると、アミナスは何故かリュックを漁って大きなローストビーフを取り出した。
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