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立冬
9*.
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片桐は、ボタンを引き千切るようにシャツを脱ぎ捨てながら、俺の晒された肌の全面に唇を落とし、どこか余裕のない様子で、俺の身体を探る。
あ、と思った。初めて目にした片桐の身体は、予想に違わず彫像のようだったが、印象よりも幾分と細身に見えた。もしかしたら、明るい時間に片桐を見るのは初めてかもしれない。
あまりに視線がしっかりしていて、今までと違った居心地悪さを感じる。そして、自分も朝の光に晒されていることに改めて気づく。この明るさからは、どうやっても逃れられない。隠すものが欲しくて、シーツがどこに行ったか目を走らせた。
片桐は一瞬たりとも俺から意識を外さなかった。こちらに集中しろとでも言うように、胸の先に歯を当てる。
「……っ」
不意打ちしやがって、と睨むと、思いの外厳しい片桐の視線と行き交う。片桐はわざと舌を見せて、べろりと舐めた。
「も、やめて……そういうの」
見ていられない。腕で目を覆う。色気合戦なら、端から勝ち目がない。
「どういうのだ」
片桐は、口を乳首に当てたまま、訪ねて来る。絶対、わざとだ。
悲鳴が上がりそうなのを堪える。
「そういうのだよ、わかってんだろっ」
「わからない。……何一つ、わからない」
片桐は、指先から手首から、触られていないところがないくらいに唇を付けて、今まで見逃されていたベルトを解くと、下着から何から、全て一気に引き下ろした。
自分の中心が押さえようもなく持ち上がるのを脚を閉じて隠そうとしたけれど、片桐は身体を挟みこんで、それをさせなかった。
涙を流しながら起きている俺自身を迷いなく咥えて、その雫を舐め取った。
声も出せずに強烈な刺激を受け流そうとしている俺に、片桐は再び顔を寄せる。
昨夜とは打って変わった、性急な愛撫。昨日のように、俺をあやすだけのものじゃない。身体が付いて行けるぎりぎりのペースで、煽って来る。
身体の熱が頭に伝わるラグがあるおかげで、理性が残ったまま隅々まで探索されるのが、余計にはっきりわかって、蕩かされるよりもずっと恥ずかしい。
はあ、と息が上がって来ると、片桐は俺の隣に来て、背中を密着させた。今朝は片桐の熱を直接背中に感じる。でも、また肩口を吸われて、俺は跳ね起きた。
「嫌だ!」
肩で息をしていると、すかさず身体を起こした片桐が手を添えようとして───それを、引っ込めた。
普通に話をしようとしたけれど、必死だったのは、多分隠せていない。
「正面から、来たら……?」
片桐は、襲い掛かるようにして再び俺を引き倒して、えずきそうになるほど深く舌を絡めてきた。口を離して、焼き付きそうな目でこちらを見る。
「辛いぞ」
俺は首を振った。顔を見せられないより辛いなんて、あるはずがない。
あ、と思った。初めて目にした片桐の身体は、予想に違わず彫像のようだったが、印象よりも幾分と細身に見えた。もしかしたら、明るい時間に片桐を見るのは初めてかもしれない。
あまりに視線がしっかりしていて、今までと違った居心地悪さを感じる。そして、自分も朝の光に晒されていることに改めて気づく。この明るさからは、どうやっても逃れられない。隠すものが欲しくて、シーツがどこに行ったか目を走らせた。
片桐は一瞬たりとも俺から意識を外さなかった。こちらに集中しろとでも言うように、胸の先に歯を当てる。
「……っ」
不意打ちしやがって、と睨むと、思いの外厳しい片桐の視線と行き交う。片桐はわざと舌を見せて、べろりと舐めた。
「も、やめて……そういうの」
見ていられない。腕で目を覆う。色気合戦なら、端から勝ち目がない。
「どういうのだ」
片桐は、口を乳首に当てたまま、訪ねて来る。絶対、わざとだ。
悲鳴が上がりそうなのを堪える。
「そういうのだよ、わかってんだろっ」
「わからない。……何一つ、わからない」
片桐は、指先から手首から、触られていないところがないくらいに唇を付けて、今まで見逃されていたベルトを解くと、下着から何から、全て一気に引き下ろした。
自分の中心が押さえようもなく持ち上がるのを脚を閉じて隠そうとしたけれど、片桐は身体を挟みこんで、それをさせなかった。
涙を流しながら起きている俺自身を迷いなく咥えて、その雫を舐め取った。
声も出せずに強烈な刺激を受け流そうとしている俺に、片桐は再び顔を寄せる。
昨夜とは打って変わった、性急な愛撫。昨日のように、俺をあやすだけのものじゃない。身体が付いて行けるぎりぎりのペースで、煽って来る。
身体の熱が頭に伝わるラグがあるおかげで、理性が残ったまま隅々まで探索されるのが、余計にはっきりわかって、蕩かされるよりもずっと恥ずかしい。
はあ、と息が上がって来ると、片桐は俺の隣に来て、背中を密着させた。今朝は片桐の熱を直接背中に感じる。でも、また肩口を吸われて、俺は跳ね起きた。
「嫌だ!」
肩で息をしていると、すかさず身体を起こした片桐が手を添えようとして───それを、引っ込めた。
普通に話をしようとしたけれど、必死だったのは、多分隠せていない。
「正面から、来たら……?」
片桐は、襲い掛かるようにして再び俺を引き倒して、えずきそうになるほど深く舌を絡めてきた。口を離して、焼き付きそうな目でこちらを見る。
「辛いぞ」
俺は首を振った。顔を見せられないより辛いなんて、あるはずがない。
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