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一章~新入生親睦会~
台詞合わせ
しおりを挟むシンデレラの台本を受け取り、本日は体育館のステージで軽い練習を行っている。大まかな流れを書いてある台本だが、細かい場所はアドリブらしい。
結構アバウトだよね?というか、役の設定が結構酷い。
ぺらりと台本を捲っていく。
・天使で純粋無垢なシンデレラ
・美しく気高い継母
・理知的で品のある姉1
・色気のある妖艶な姉2
・ミステリアスな魔法使い
・華麗で冷徹な孤高の王
・見目麗しい完璧な太閤
・物静かな王子
うん。逆に清々しいよ。
練習が始まると、ほとんど即興劇にも関わらず皆戸惑わずに進めていく。確か、ナレーションって恵の親衛隊隊長だっけ?凄く嬉しそうだな。
「…此処が舞踏会の会場ね。素敵な場所だわ。」
あまりやる気の無い恵の台詞に、王子役の木村がガチガチに緊張して台本を見ながら近付く。
「お、おお!これは、うう美しい人だ。ぜ、是非とも、僕と…踊って下さいませんか?」
汗を掻き震える木村。それはそうだろう、恵の親衛隊の厳しい目付きは、誰だって穏やかでは居られない筈だ。
役なんだから、もっと優しい目で見てあげなよ。あ、そうだ。
台本を捲ると、この場面で太閤の台詞が入ってくる様だ。
えーっと、何々?…適当にお願いします?ざっくばらん過ぎる。
内心溜め息を洩らし、二人に近付く。
「…殿下、これは素敵な姫君をお見つけになられましたね?」
「え?!……あ、うん。」(えーっと、この次は~。)
木村がわたわたする中、千里の瞳が恵に向き手を取り、指先に口づける。
「これは素敵なお姫様。どうか、殿下の一時をよろしくお願い致します。…ああ、でも残念ですね?」
瞳を細め、恵の腰を抱き寄せると色っぽく吐息を洩らす。恵の顔が熱を孕んだ様に赤くなり、ぽうっと千里を見上げた。
「…もし、貴女を見つけたのが僕なら、生涯この腕から離さないのに。…ね?」
だめ押しに恵の頭をそっと撫でて、流し目を送れば既に恵の表情は蕩けきっている。
「失礼致します」と礼をし、その場を離れると恋する乙女の恵と、絶望した木村が残った。
(千里い…僕の王子様は千里だけだよ~)
(おいおいおい、この後をどうれば良いんだよ!公開処刑か?!)
のんびりステージ下の席に座った千里を横に、脚本担当の生徒は本気で悩んでいた。
(…はあ、本気で木村君だけなんだよな。空気感が違うのは。)
例えば、木村が王子とシンデレラ以外ならやりようはあったが。王子役の時点で、既にどうも出来ない。また、桜川 恵の親衛隊の思いもそれに似ているものがある。
恵の評判を落とす訳にはいかず、表だって木村を虐めたりはしないが、こっそり幾つかの事は仕掛けていたりするのだ。腹を下さないかと、冷たい物を差し入れたり、彼の食堂でのメニューのたぬきうどんを冷やしたぬきにしたり。
どうにか、本番までに木村の体調が崩れないかと。
木村が出られなければ、代わりがきく太閤役の千里が王子役になる確立が高いからだ。
勿論、そんな思いに気付いている千里は、美景率いる自分の親衛隊を使い、木村のフォローをさせていたりする。
僕の為に、一般生徒の木村に害を与えると可哀想だしね。
台詞の練習が終わると、実行委員会のメンバーで書類の作成、教師や各委員会への根回しも行う。千里の方は、借り物競争に使うカードを整理していた。美景と共に。
「…なんというか、クリアさせるつもりが無いですね。」
カードを整理する美景は、そのふざけた内容に眉を潜める。
「そうだね」と薄く笑い答えるが、千里も既に呆れ果てていた。
酷過ぎるな。何々?相撲部主将をおんぶ?教頭の鬘?裏庭の草を100キロ?門前の銅像2体?
「これ、誰が考えたんだっけ?」
傷む米神を押さえ、溜め息を吐く美景に視線を向ける。
「…確か、桜川君と秋道寺君の担当ですね。お二人は親衛隊に任せたそうですし、親衛隊の責任とも言えますが。」
苦笑する美景だが、内心は呆れ果てていた。
(バカじゃないのか?もう少し考えて作れば良いのに…全く品性を疑う。)
恵と明日霞の親衛隊か。実は、良く知らないんだよね?
千里の親衛隊は、美景が統率して規律を保っている。直久の親衛隊は、真面目な桐埼が毎月メンバーのチェックをしているらしいし。守山の親衛隊は、親衛隊隊長が双子の武闘派で、その二人が恐怖政治で支配?しているんだっけ。 恵と明日霞の親衛隊って良くは知らない。
噂では、恵の親衛隊は天使の様な恵を信望する過激な集団って噂だけど。 少し、親衛隊の様子を見てみるか。僕と恵との関係をどう捉えているか、知っておかないとだしね?あ、あと、明日霞の親衛隊って…ほとんどセフレだっけ。うん。大体想像がつく。
「美景。実現可能な物以外は処分して、後はうちの親衛隊で作ろうか。」
とりあえず独断でそう決めると「はい」と美景の涼やかな返事が返される。
「お任せ下さい。一晩で完成させます。」
銀髪がサラリと揺れ、手際良くカードを整えて既に箱にしまっている。
流石、優秀だな。
「期待してるよ、僕の可愛いお姫様。」
そう言って額に軽く口づけると、真っ赤になって固まると、その数秒後には部屋から出て行ったのである。
園原 美景はその夜、一晩所か一時間弱で完璧に仕上げてしまったそうである。その作業中の親衛隊は、まるで機械の様な早さと無感情さであったらしい。
千里の親衛隊の暗黙のルールは、こう語られている。スイッチの入った親衛隊隊長には、反抗してはならない。
である。
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