43 / 124
二章~親交会・対立~
※鈴木のお願い
しおりを挟む一夜が明けて、多少の疲れが取れた千里はしっかりと身支度を整え、部屋を出る。
「おはようございます。」
玄関から出ると、美しい姿勢の執事が目に入る。
「おはよう、夏雪。」
学校生活の執事という物はよく分からないが、夏雪が言うには登下校や昼休みは、千里の邪魔にならぬ様に控えているそうである。
執事って面倒な仕事だな。
そう思っていると、夏雪の姿は消えた。たぶん呼べば直ぐに出てくるのだろうか。ふと、昨日の電話の内容を思い出す。
夏雪の忠誠を得る…か。なんだか、まるで当主になる力量を試されているみたいだ。
考えながらだったからか、教室に着き席に座る。
………はあ。
行事の疲れか、登校している生徒も少ない。
恵とか明日霞とかは休みそうだな。僕は皆勤したいから休まないけど。
知らず、腕を枕にして顔を伏せる。
そろそろ…来年の生徒会とかの話しも来そうだしな。忙しくなりそうだね。
「どうした?気分でも悪いのか?」
心配そうな声に顔を上げると、千里だけに向ける優しい瞳が映る。
「ん?いや、大丈夫だよ。おはよう、直久。」
顔を上げて、挨拶を交わせば直久も笑みを浮かべ座る。
「そうか、無理すんなよ?」
直久こそ疲れてないのかい?と聞けば「何処かの誰かが、実行委員長の仕事をほとんどやってくれてたからな。」と返された。
そういや、そうか。
クスクスと笑う千里の様子に、直久の表情が和らぎ目が細まる。千里と接する直久は、年相応に話すし、好意を示して優しい。しかし、それは千里が彼の信頼と好意を向けられているからだ。千里とは違い、普段の直久は周囲の者を寄せ付けぬ雰囲気を纏っている。
普通に話すのって、桐埼ぐらい?恵とか、明日霞は喧嘩してる姿しか浮かばないな。美景や守山なんて、直久と会話してたっけ?そういえば…。
昨日の二件目の電話を思い返す。
直久にも、その話しは来てるのだろうか。
何か言おうとしかけ、やはり止める。
横目で読書をする直久を見ながら、思考を巡らしていく。
聞かない方が良いよね。何処で知ったかなんて、言えないし。
千里が内心考え込みつつ、親睦会の事後書類を整理してる時、後方から声が掛かった。
「おはようございまあす、春宮様!」
「ああ。おはよう、鈴木。今日も可愛いね?その瞳に吸い込まれそうだよ。」
可愛らしく小首を傾げる相手に、微笑みを浮かべる。誉め言葉など、千里にとっては挨拶である。
162センチの小柄な鈴木は、頬を赤らめ照れつつも話しを続けた。
「…あ、ありがとおございまあす。ええとお、あのお~。僕う春宮様にお願いがあ。」
両手を組んで千里を見つめる鈴木は、真剣そのものである。直久は、可愛いらしいタイプの者が千里に近づくのは、割りと気にしないが、恵や美景はまた別だ。
(園原様や桜川様が居ない内に!)
「ん?何だい?」
千里の問い掛けに、鈴木は懐から1枚のカードを取り出す。
「春宮様に、お願い券を~使わせてえ、頂きたいのですう。」
うわ、まさか昨日の今日で使う子が居たのか。
それも、明日霞の親衛隊隊長が僕に?あまり良いお願いの気がしないな。
そう思うが、顔には出さずに微笑を浮かべたまま、首を傾げる。
「本当に僕で良いのかい?僕で良いなら構わないけど。」
「はい。是非!」
(むしろ、春宮様じゃないと困ります!)
鈴木は何度も力強く頷いた。
「それで、どんなお願いなのかな?」
千里の質問に、鈴木はそっと小さなメモ用紙を手渡した。
この場では言えない事…?
怪しいとは思うが、明日霞の親衛隊隊長が自分を敵にする様な事はしないだろう。
そう、思っておこう。
授業が始まり、教科書を開きながらメモを読む。
ええと?
『今日の夜、11時45分に秋道寺明日霞様の部屋にいらっしゃって下さい』
…へんなお願いだな?まあ断る程では無いけど。
お願い券のカードを鞄にしまいつつ、板書をしながら今後の事も考えておく。
夏雪と話し合った方が良いだろうか?月宮を軽く探っておこうか。
授業が終わり、親睦会担当教師に書類を出す。
…さてと、今夜どうなるのかな?部屋に行くだけだから、そこまで気にしなくても良いか。
*
11時45分。千里は時計を確認し、自室を出て明日霞の部屋の前に居た。服装はシンプルに、下はジーンズに上は長袖シャツに青色のパーカーだ。
さあ、どうなるのか。
予め聞いて置いた鈴木のメールに来た事を伝えると、直ぐに扉が開かれた。
「…いらしゃっいませえ。どうぞ、お入りくださいい。」
音を立てずに小声で促され「お邪魔するよ」と静かに入室する。
………ん?
ふと、耳に入る音と声に気付く。歩みを止めて、少し困惑する鈴木の視線の先を追う。
「ああああああ!あ…すか、様あああ…もう、むっ…あうっ…!」
「えー?うーん。ちょお~っと待ってね?」
それは、千里も動揺を隠すのが大変な光景だった。
ベッドに両手を固定され、足を大きく開いた少年は全裸で、尿道には見知らぬ器具が入れられ、男根の根本はキツく紐で縛られている。
後孔には見える範囲で3つのローターが入れられ、激しく振動を続けていた。
「さーてと!」
上機嫌な明日霞は、小さい瓶を取り出すと、蓋を開けて相手の口をこじ開けて中身を飲ませる。
うわー。あれ、媚薬だよね?
飲んだ少年は、一瞬で全身を痙攣させて涎を垂らして涙を流す。
「…っやだ…も、むりいいい!!イカせてええええええええええ!」
固定された四肢をよじらせ泣きわめく相手に、明日霞はただ微笑んでいる。
なんという…狂気だろうか。
千里は僅かに眉を寄せるだけに留め、近付いて来た鈴木に気づいた。
「…今日は、親睦会がお楽しみ頂けたのかあ、ご機嫌よろしく…とても軽い方ですう。」
軽い方って…。この学校は、性に対しては進んでいるとは思ったが。明日霞は特殊だろう。
鈴木の申し訳無さそうに眉を下げる様が視界に入る。
「ねえ、僕にこれを見せて、どうにかして欲しいのかい?」
「………はい。」
長い溜め息を吐いて、米神を押さえてしまう。
「…性的嗜好って変えられないと思うけどな。」
「…でも、春宮様だけなんですう。明日霞様がお気を使われるのは。」
鈴木は視線を落とし、ますます悲しげに瞳を揺らす。
はあ。僕って結構弱いな…可愛い子が悲しんでいるのは。
王子様的振る舞いを意識するからか、女性的な雰囲気を持つ者により優しく接する千里は、悩んでしまう。しかし、明日霞の嗜好を変えさせるなんて、出来るのか?うん。まあ。物は試しか。
千里の足が更に進み、享楽の宴に近づく。
「明日霞。」
この日が、秋道寺明日霞を変える事になるなんて、誰も知らない。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる