王子様が居ないので、私が王子様になりました。

由紀

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二章~親交会・対立~

※鈴木のお願い

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一夜が明けて、多少の疲れが取れた千里はしっかりと身支度を整え、部屋を出る。

「おはようございます。」

玄関から出ると、美しい姿勢の執事が目に入る。

「おはよう、夏雪。」

学校生活の執事という物はよく分からないが、夏雪が言うには登下校や昼休みは、千里の邪魔にならぬ様に控えているそうである。

執事って面倒な仕事だな。

そう思っていると、夏雪の姿は消えた。たぶん呼べば直ぐに出てくるのだろうか。ふと、昨日の電話の内容を思い出す。

夏雪の忠誠を得る…か。なんだか、まるで当主になる力量を試されているみたいだ。

考えながらだったからか、教室に着き席に座る。

………はあ。

行事の疲れか、登校している生徒も少ない。
恵とか明日霞とかは休みそうだな。僕は皆勤したいから休まないけど。

知らず、腕を枕にして顔を伏せる。
そろそろ…来年の生徒会とかの話しも来そうだしな。忙しくなりそうだね。

「どうした?気分でも悪いのか?」

心配そうな声に顔を上げると、千里だけに向ける優しい瞳が映る。

「ん?いや、大丈夫だよ。おはよう、直久。」

顔を上げて、挨拶を交わせば直久も笑みを浮かべ座る。

「そうか、無理すんなよ?」

直久こそ疲れてないのかい?と聞けば「何処かの誰かが、実行委員長の仕事をほとんどやってくれてたからな。」と返された。

そういや、そうか。

クスクスと笑う千里の様子に、直久の表情が和らぎ目が細まる。千里と接する直久は、年相応に話すし、好意を示して優しい。しかし、それは千里が彼の信頼と好意を向けられているからだ。千里とは違い、普段の直久は周囲の者を寄せ付けぬ雰囲気を纏っている。

普通に話すのって、桐埼ぐらい?恵とか、明日霞は喧嘩してる姿しか浮かばないな。美景や守山なんて、直久と会話してたっけ?そういえば…。

昨日の二件目の電話を思い返す。

直久にも、その話しは来てるのだろうか。
何か言おうとしかけ、やはり止める。
横目で読書をする直久を見ながら、思考を巡らしていく。

聞かない方が良いよね。何処で知ったかなんて、言えないし。

千里が内心考え込みつつ、親睦会の事後書類を整理してる時、後方から声が掛かった。

「おはようございまあす、春宮様!」
「ああ。おはよう、鈴木。今日も可愛いね?その瞳に吸い込まれそうだよ。」

可愛らしく小首を傾げる相手に、微笑みを浮かべる。誉め言葉など、千里にとっては挨拶である。
162センチの小柄な鈴木は、頬を赤らめ照れつつも話しを続けた。

「…あ、ありがとおございまあす。ええとお、あのお~。僕う春宮様にお願いがあ。」

両手を組んで千里を見つめる鈴木は、真剣そのものである。直久は、可愛いらしいタイプの者が千里に近づくのは、割りと気にしないが、恵や美景はまた別だ。

(園原様や桜川様が居ない内に!)

「ん?何だい?」

千里の問い掛けに、鈴木は懐から1枚のカードを取り出す。

「春宮様に、お願い券を~使わせてえ、頂きたいのですう。」

うわ、まさか昨日の今日で使う子が居たのか。

それも、明日霞の親衛隊隊長が僕に?あまり良いお願いの気がしないな。
そう思うが、顔には出さずに微笑を浮かべたまま、首を傾げる。

「本当に僕で良いのかい?僕で良いなら構わないけど。」
「はい。是非!」
(むしろ、春宮様じゃないと困ります!)

鈴木は何度も力強く頷いた。

「それで、どんなお願いなのかな?」

千里の質問に、鈴木はそっと小さなメモ用紙を手渡した。

この場では言えない事…?

怪しいとは思うが、明日霞の親衛隊隊長が自分を敵にする様な事はしないだろう。

そう、思っておこう。

授業が始まり、教科書を開きながらメモを読む。
ええと?

『今日の夜、11時45分に秋道寺明日霞様の部屋にいらっしゃって下さい』

…へんなお願いだな?まあ断る程では無いけど。

お願い券のカードを鞄にしまいつつ、板書をしながら今後の事も考えておく。

夏雪と話し合った方が良いだろうか?月宮を軽く探っておこうか。

授業が終わり、親睦会担当教師に書類を出す。

…さてと、今夜どうなるのかな?部屋に行くだけだから、そこまで気にしなくても良いか。





11時45分。千里は時計を確認し、自室を出て明日霞の部屋の前に居た。服装はシンプルに、下はジーンズに上は長袖シャツに青色のパーカーだ。

さあ、どうなるのか。

予め聞いて置いた鈴木のメールに来た事を伝えると、直ぐに扉が開かれた。

「…いらしゃっいませえ。どうぞ、お入りくださいい。」

音を立てずに小声で促され「お邪魔するよ」と静かに入室する。

………ん?

ふと、耳に入る音と声に気付く。歩みを止めて、少し困惑する鈴木の視線の先を追う。

「ああああああ!あ…すか、様あああ…もう、むっ…あうっ…!」
「えー?うーん。ちょお~っと待ってね?」

それは、千里も動揺を隠すのが大変な光景だった。
ベッドに両手を固定され、足を大きく開いた少年は全裸で、尿道には見知らぬ器具が入れられ、男根の根本はキツく紐で縛られている。

後孔には見える範囲で3つのローターが入れられ、激しく振動を続けていた。

「さーてと!」

上機嫌な明日霞は、小さい瓶を取り出すと、蓋を開けて相手の口をこじ開けて中身を飲ませる。

うわー。あれ、媚薬だよね?

飲んだ少年は、一瞬で全身を痙攣させて涎を垂らして涙を流す。

「…っやだ…も、むりいいい!!イカせてええええええええええ!」

固定された四肢をよじらせ泣きわめく相手に、明日霞はただ微笑んでいる。

なんという…狂気だろうか。
千里は僅かに眉を寄せるだけに留め、近付いて来た鈴木に気づいた。

「…今日は、親睦会がお楽しみ頂けたのかあ、ご機嫌よろしく…とても軽い方ですう。」

軽い方って…。この学校は、性に対しては進んでいるとは思ったが。明日霞は特殊だろう。

鈴木の申し訳無さそうに眉を下げる様が視界に入る。

「ねえ、僕にこれを見せて、どうにかして欲しいのかい?」
「………はい。」

長い溜め息を吐いて、米神を押さえてしまう。

「…性的嗜好って変えられないと思うけどな。」
「…でも、春宮様だけなんですう。明日霞様がお気を使われるのは。」

鈴木は視線を落とし、ますます悲しげに瞳を揺らす。
はあ。僕って結構弱いな…可愛い子が悲しんでいるのは。

王子様的振る舞いを意識するからか、女性的な雰囲気を持つ者により優しく接する千里は、悩んでしまう。しかし、明日霞の嗜好を変えさせるなんて、出来るのか?うん。まあ。物は試しか。
千里の足が更に進み、享楽の宴に近づく。

「明日霞。」

この日が、秋道寺明日霞を変える事になるなんて、誰も知らない。



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