起きたら伝説の正妃様になっていた件

伯王

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怒っている人には鏡を・・・

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  ピョン、ズザーー。

「誠に申し訳ありませんー。どうかお許しをーーーーーーーー」

 それは、足が不自由な老人の動きとは、思えない見事なジャンピング土下座だった。

 時は、数分前に遡る。
 
 僕は、激昂している老人を落ち着かせる為に、日本の病院での、長期に渡る入院生活で見聞きして培ったコミュニケーション力と、この異世界で不本意ながら身に付けた女子力を使い説得を試みた。

 僕は今、白地に薄紅色の華柄が描かれた着物のような服を着ている。 
 
柄が華である事から女物の服だとわかる。

 その服の胸もとの前会わせに手を入れて、そこから女子の3点セットの櫛・鏡・手巾の中の鏡を取り出す、その時は素早く動かないように気を付ける。  

  素早く動くと相手に警戒されたり、威圧感をあたえるので普段からゆっくり動く人も意識的にゆっくりを心がけて女性らしいく上品に動く事がポイントだ。
 
 胸もとから取り出した鏡を老人に向ける。

 興奮した時に心を落ち着かせる1番の方法は、興奮している自分を客観的に見せてあげる事だ。 
 今の自分を客観的に見る事で、

 「あれ、今の自分なんでこんなに興奮しているの~?」

 とか、

 「興奮しているけど、不安がってもいるなぁー」

 「うわ! 酷い顔!」

 と自分を自己分析して感情をコントロールできるようになるらしい。

 これは、医療の現場と言う精神的にも肉体的にもキツイ仕事でイライラが溜まった看護士さんが、疲れた顔したりムスッとした自分の姿を鏡で見る事で、

 「ヤバー、酷い顔してるなー」

 「疲れが溜まっているなぁー」

 と、客観的に自己評価する事で心を落ち着かせて、

 「こんな顔で患者さんに接したら不安がらせてしまうから笑顔を心がけよう」

 とか、

 「こんなに疲れた顔になるくらい自分は頑張っているんだ」

 と、自分をプラス+に持って行きやすくなるんだと教えてくれた看護士さんの受け売りだ。

 体の麻痺が進行して寝たきりになり、落ち込んでいた僕に鏡を持って来て、 

 「そんな顔をしていたら。君の大好きなお兄さんが悲しむぞ~。 病気だって気の持ちようで悪くなる事があるんだぞ。 
 笑おうよ、顔が笑顔になるだけで気持ちも明るくなるんだぞ。
 それに笑顔の人を見ると回りの人もつられて笑顔になりやすいんだからネッ! 
 お兄さんの笑顔みたいでしょう?」

 と、言ってくれた事で僕が普段から心がけるようになった事だ。

 今、見知らぬ怒れる老人は転んで土まみれになった自分の姿に気づいていない。
 
だから鏡で自分の現状を客観的に見てもらう。

 老人は、僕が差し出した鏡に映った自分の姿を認識すると足が不自由なせいで多少もたついたが立ち上がり服や顔についた、土を払い出した。

 しかし、転んだ時に手をついたので手も汚れてしまっている、なかなか顔や服に付いた汚れをおとせずにいた。

 そこですかさず、僕はゆっくりな動きを意識しながら手巾を老人に差し出す。

 「僕は、月狐です。 これ、使って下さい」

  自己紹介は、自分から。

 この時気をつけるのは、次の2つだ。

 一つは、低い声で話す事。

 低いよく響く声は説得力があり、相手に信頼感を与えやすい。

 二つ目は、ゆっくり話す。

 声のトーンを落としても早口で話しては、相手に威圧感を与え、伝えたい事が相手に届きにくいからだ。

  「僕は、500年の眠りから覚めたばかりなのでよくわからないのですが、何か失礼な事をしてしまったでしょうか?」

 そして、話しの核心を最初に持ってくる。

 初対面の相手と話す時、時間の経過化とともに緊張感は薄れていく、だから集中して聞いてくれる冒頭に核心をそして後半に他愛ないおしゃべりをするのが望ましい。

 特に、女だけのお茶会では最初が肝心だった。

 あれは思いだしたくもない、異母兄のパートナーとしてお茶会に参加し、いつの間にか異母兄とはぐれたところを女達に取り囲まれて、興奮気味にまくし立てられた時の恐怖。

孤立した戦場で、数十人の敵と戦う方がまだましだった。

 老人は、暫くの時間を有して僕の言葉を理解した後に、僕の名前をもう一度問うてきた。

 僕は、ゆっくりはっきりと答える。

 「僕の名前は、月狐です。 ちなみに、性別は男です」

 と、言う。

 老人は、僕の名前を口の中で呟く。

 「月狐? 月狐、月狐、月狐どこかで・・・」

 そう、僕の名前は月狐。
 500年前に異母兄の部下として働いていた時と女装していた時それぞれ偽名を使っていた。
 
 けれど、僕の本当の名前は月狐だ。

 「あ! まさか、まさか正妃さま? 
 正妃さまだーーーーー! 
 正妃さまがお目覚めになったー」

 ピョン、ズザーー。

 冒頭に戻る。

 正妃さまてなんぞ?

 
 
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