起きたら伝説の正妃様になっていた件

伯王

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僕が正妃になっちゃってた、マジで?

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 「ヒィグ、ぜい妃ざまー、ヒィグ、正妃さまがーーー目、目覚められてほ、本当によがっだです。
 ほんどに、本当にーーーーーうぁわわ(泣)」

 ご老人、お名前を趙 黒(ちょう へい)と言うそうだ。
 これから趙(ちょう)老人と呼ぶ事にしよう。
  
 趙老人は、僕が引くほど感涙に咽び泣きながら、僕が眠ってからの事を簡単に教えてくれた。

 と、その前に少し僕がこの世界で生きていた時の話しをしよう。

 この僕が月狐として生れた時、いやそのずっと前から、世は正に戦乱の時代だった。
 
 長過ぎる戦の中で、国などと呼べるモノはなく、強い力をもった一族が各土地を治めており、その土地をめぐって一族の中や他の一族との争いが頻発していた時代。
 
 弱い者が強い者に当たり前のように虐げられていた。

 僕の異母兄はそれを憂い、各部族を統一した争いのない国を作ろうと仲間を集めて、時に話し合いでまた時には、武力を使って世界を統一する一歩手前まで登り詰めたのだった。

 そして、各部族の代表が集められた話し合いの場を設ける事に成功し、その開催日を明日に控えたある晩の事。
 その日は、雲1つない月の美しい夜だった。
 
僕と異母兄は、月を肴に酒を傾けていた。

 各部族の代表が集まると言う偉業を目前に、これまでの苦労をねぎらうように、穏やかに酒を飲み交す、そうなる筈だったその日、僕達兄弟の他にその場には招かざる客が紛れ混んでいた。  

 招かざる客達は、全身を黒装束で包み、不可思議な術を使い突然、気配もなく僕達の前に表れ異母兄の命を狙った。

 僕は、咄嗟に身を踊らせて異母兄と黒装束の間にたちはだかる。

 黒装束が放った術をその身に浴びたところで僕の記憶は途切れている。

   そこから先を趙老人が語る。

 僕が敵の術を受け倒れたのと同じ時、一抱えほどの大きさの酒が入った壷を黒装束に投げつけた異母兄は、自身の横に控えてあった剣を抜刀、2~3人 に切りつけながら燭台の火を酒を浴びた黒装束に投げつける。
 酒に火が着き火ダルマになる黒装束。
 火を消そうと床にころがる。するとまたたく間に建物に火がつく。

 乱闘の喧騒と建物の一部から上がる炎に建物の中や外に配置されていた守備隊が気付き、速やかに行動を開始した、最初に乱闘の現場についたのは外を担当する守備隊だった。
 彼ら守備隊は手傷を負いながらも獅子奮迅の戦いを見せる異母兄を庇う陣形をくみ、次に到着した建物内を守っていた守備隊は、黒装束達を囲い込み、追い詰める事に成功した。

 守備隊の優秀な働きによって黒装束達は、その人数を減らし、後はリーダー格を残すのみとなった。

 リーダー格の男は、懐から禍禍しいナイフを取りだし自身の胸に突き立てた。

 リーダー格の男はそのまま絶命。

 その直後、空に雷鳴轟き夥しい数の異形の化け物が降って来た。

 その場は、大混乱に陥り収拾がつけられない状態になった。

 しかし、その場で誰よりも早く混乱から回復した異母兄は、もっとも信頼する仲間と共に長く辛い激闘を繰り広げた。
 8日に及ぶ、後に大災厄と歴史に記される日を乗り越えたのだった。

 大災厄の最期には、天から光の剣が降りそそぎ、数多の魔物を消滅させ、魔物に破壊され汚された世界を聖霊王達が再生すると言う奇跡が起きたと伝えられている。

 魔物がほとんど討伐され平和になった世界。

 しかし、空や大地が浄化され再生されても、失った命は還らなかった。

 もともと、戦乱で減っていた人口は更に激減し、中には一族の全てが滅んだ者達さえいた。

 それらの事象の中で皮肉な事は、異母兄の発案による会議に出席予定の多大な力を持つ一族の者達が全員無事だったと言う事だ。

 会議に出席するため、異母兄が統治する土地に集まっていた一族の代表者。
  そして、代表者の親族それらを守る歴戦の兵達。
 会議の噂を聞きつけ有力者に仕官しようと集まった腕に自信がある戦士達、それらが意図せず協力関係を築いたことによる当時の最高戦力があったゆえの偶然だった。

 もしあの日、各一族がおのおのの領地にいた時は、夥しい化け物に物量で圧され人族は滅んでいただろうと後の歴史家は語る。

 そして、各一族の代表者達は生き残ったが、あまりにも少ない人数。
 人族は、一族に括って歩むのをやめ、異母兄が目指した統一された国を作る事になった。

 その先頭に立つのに選ばれたのは異母兄だった。
 会議の発案者であり、大災厄では最前線で戦い最も多くの化け物を葬った英雄。

 満場一致だった。

 異母兄を王に頂き、国が作られる。

 復興は、急速に進んだ。

 あらゆる一族の特色を取り込んだ 新しい文化を花開かせながら・・・・・。

 だが大きな問題があった。

 1番が決まった。その回りで働く部下達も異母兄の集めた優秀な者達がいた。

 しかし、王の隣に立つ妃が不在だった。

 一族の代表者は、少しでも王に近い関係を築くため自身に連なる者から王の妃が選ばれるようにあの手その手と策を労するようになった。

 異母兄は悩んだ。   元々、女好きの 異母兄は次々と自分の元に送られてくる美女達を歓迎したが、またそのせいで争いたくはない。

 そこで異母兄は一計を案じた。
 自身をその身を呈して守り、何故だか眠ったまま年をとることのない様子の美貌の弟。

 一族の代表者達は、元々敵対関係者だったゆえに弟の事を知らなかったので、弟の性別と自身との関係性を歪めて、弟の事を女で自分がこの世で最も愛する女だと宣伝し、弟を正妃に据え、それ以外の妃を同列に扱う事にしたのだった。

 僕が起きていた時も女装して、異母兄の女避けの盾をしたことがあったが、嫌嫌だった。

 僕を正妃にするとか僕が起きていたら絶対反対しただろう。

 正に死人にくちなし(僕は生きているけれど)

 
 それから、眠り続ける僕を守る一族を結成して、その子孫が趙黒老人なのだった。

 異母兄が作った国は、あれから繁栄して500年たった現在まで続いているそうだ。

 とりあえずあらかたの現状を知った僕は趙老人が住まう村に身を寄せる事になった。

 趙老人が住む村は、隠れ里になっており木で作られた家々がポツポツと点在していた。

 趙老人に案内されて村にある家の中で、1番大きな建物の中に入った。そこでは、上は15~17才、下は3~4才くらいの子供達がいた。

 子供達は趙老人に紹介された僕の性別に驚いていたが、そこは子供柔軟な思考でアッサリ受け入れてくれた。

 もちろん、僕が500年の眠りから覚めた正妃様と言うのは伏せてもらった。
 僕は全力で正妃ではないと否定する所存だ。

 僕がそのような事を考えていると、1人の幼女が僕に近付いてくる。

 僕は膝をおり幼女と視線を合わせる。

 「お兄ちゃんキレイねぇ~。 姫さまみたい。
姫兄さまだね」

 僕が着ている白地に華が描かれた服は、確かにお姫様が着ていても可笑しくない品質の物だったが、その呼び名は承服しかねる。

 しかし、子供達はこれまたアッサリ受け入れ、僕の呼び名は、姫兄さま(お姫様みたいにキレイなお兄ちゃん)になった。

 某、日本が誇るアニメーションの風の~の姫姉さまに近い呼び名だ。

 「お兄ちゃんか、僕の名前の月狐から月兄ちゃんて呼んでー」

 と、僕が子供達を説得するも子供達は不服のようで、

 「姫兄さまは、姫兄さまだよー」

 と、一蹴されたのだった。
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