14 / 69
第3話 水鏡塾の異端児たち5/6
しおりを挟む
6.夜の自習室
月が中天にかかる頃。水鏡塾の寄宿舎の一室、向朗たちの部屋には、まだ灯りがともっていた。狭い部屋には、竹簡の山と、男四人のむさ苦しい熱気が充満している。
「……あー、くそっ!なんで『人』って字は二画なのに、『道』って字はこんなに複雑なんだ!歩くなら真っ直ぐ歩きゃいいじゃねえか!」
徐福が筆を投げ出し、頭を抱えて叫んだ。机の上には、ミミズがのたうち回ったような文字が書かれた木札が散乱している。向朗による「補習」の時間である。
「文句を言わない。文字は世界の理(ことわり)を写し取る絵だ。『道』が複雑なのは、人が歩むべき道が平坦ではないからだよ」
向朗は淡々と諭しながら、新しい木札を差し出した。
「ほら、次は『義』だ。あと百回書いて」「鬼か、お前は……」
「義を見て為さざるは……向朗、えと、なんだった。?」
「だーかーら!『論語』の暗記なんて後回しでいいって言ってるだろ!」
向朗が竹簡を放り投げた。
「君の目的は『勝つための知恵』だろう?なら、まずはこっちだ」
向朗が広げたのは、兵法書『孫子』だった。
「いいかい、徐福。文字を覚えるんじゃない。意味を覚えろ」
向朗は筆を取り、木簡にさらさらと文字を書いた。
『兵とは詭道なり』
「……なんて読むんだ?」
「へいとは、きどうなり。……意味はわかるか?」
「……戦いは、綺麗事じゃねえってことか?」
「半分正解。戦いとは『騙し合い』だということだ。敵を欺き、予期せぬところを突き、最小の犠牲で最大の戦果を上げる。それが兵法だ」
向朗は徐福の目を見て言った。
「君が喧嘩で勝った時のことを思い出せ。自分よりデカい相手を倒す時、どうした?」
「……砂をかけて目を潰した。あと、路地裏に誘い込んで、動きを封じた」
「それが『詭道』であり、『地利』だ。君はすでに、実戦で兵法を使っているんだよ」
目から鱗が落ちるようだった。
向朗の解説は、実用的で分かりやすかった。徐福の脳内で、過去の路地裏での喧嘩の記憶と、兵法書の難解な文字が結びついていく。
兵法書を読んでいた石韜が、くつくつと笑った。
「まあ、そう虐めてやるな、向朗。徐福くんの頭は、まだ墨よりも血の巡りの方がいいらしい」
石韜は手元の竹簡――『孫子』の兵法書を指先で叩いた。
「徐福くん。文字を覚えるのが辛いなら、少し趣向を変えようか。……君は喧嘩が得意なんだろう?」
「ああ?まあな。この辺のゴロツキで俺に勝てる奴はいねえよ」
「では、喧嘩の極意とは何だと思う?」
徐福は少し考え、拳を握った。
「そんなもん、相手がビビってる間に殴る。相手が息を吸った瞬間に蹴る。……あとは気合だ」
単純すぎる答えに、石韜はニヤリとした。
「なるほど。……孫子曰く、『兵は詭道(きどう)なり』。『その無備を攻め、その不意に出ず』」
「あ?」
「つまり、戦争とは騙し合いだということさ。敵が『来ないだろう』と油断している場所を攻め、敵が思いもよらない時に動く。……君の言う『ビビってる間に殴る』というのは、兵法の理にかなっている」
石韜はさらに続けた。
「例えば、わざと弱ったふりをして敵を誘い出し、伏兵で囲む。あるいは、東に逃げると見せかけて西を攻める。これを『声東撃西(せいとうげきせい)』と言うんだが……」
徐福の目が、パチリと瞬いた。文字の話の時は死んだ魚のような目をしていたが、今の瞳には生気が宿っている。
「なんだ、そりゃあ俺がよくやる手じゃねえか」
「ほう?」
「相手の股間をジロジロ見てな、『おっ、隙あり』って顔をするんだ。そうすりゃ相手は慌てて股を閉じる。意識が下にいくから、その瞬間にガラ空きになった顔面に頭突きをぶち込む。……それと同じことだろ?」
石韜は目を丸くし、それから吹き出した。
「ぶっ……ハハハ!股間と頭突きか!随分と下品な『声東撃西』だが……本質は完全に捉えている。驚いたな」
石韜は感心したように唸った。
高尚な兵法用語を、一瞬で路地裏の喧嘩術に翻訳して理解したのだ。
すると今度は、横で歴史書を整理していた孟建が、面白そうに顔を出した。
「なら、これはどうだい?『左伝』にある曹劌(そうけい)という人物の言葉だ」
孟建は、芝居がかった口調で朗誦した。「『一鼓(いっこ)して気を作(ふる)い、再すれば衰え、三すれば渇(つ)く』……。これは、敵軍が攻めてきた時、太鼓を鳴らして攻めかかってきても、一度目は迎え撃たずにじっと耐えろ、という教えだ。二度、三度と太鼓が鳴る頃には、敵の士気は下がっている。そこを叩けとな」
孟建は徐福を見て、試すように微笑んだ。
「意味が分かるかい?臆病風に吹かれて逃げろという意味じゃないよ」
徐福は鼻を鳴らし、筆をクルクルと回した。
「当たり前だろ。……あれだ。イキがってる奴ほど、最初に大声で吠える」
「ほう」
「『殺すぞオラァ!』って喚いてるうちは、手を出さねえでニヤニヤ見てりゃいいんだ。そのうち喚くのに疲れて、肩で息をし始める。……そこを土手っ腹に一発入れれば、一撃で沈む。最初に喚く奴ほど、スタミナ配分を考えてねえからな」
孟建は、ポカンと口を開けた。自分の説明した古典の教えが、あまりにも的確な「喧嘩の極意」に変換されて返ってきたからだ。
その様子を見て、石韜がますます面白そうに身を乗り出した。
「面白い。……じゃあ徐福くん、次は『呉子(ごし)』だ。分かるかい?」
石韜は手元の竹簡を持ち替え、厳かに読み上げた。
「『兵戦の場は立屍(りっし)の地なり』。……戦場というのは、一歩間違えば死体が棒立ちになっているような死地だという意味だ」
石韜は徐福の目を見て続けた。
「『死を必すれば則(すなわ)ち生き、生を幸(ねが)わば則ち死す』。……死ぬ気で戦えば逆に生き残れるが、まぐれで助かろうとすれば死ぬ。なぜだと思う?」
徐福は眉をひそめ、天井を仰いで少し考えた。そして、自分の古傷が残る拳をじっと見つめ、ぽつり、ぽつりと、言葉を探すように言った。
「……『迷い』……だな」
石韜の目が大きく開かれた。徐福は続ける。
「『助かりてえ』と思った瞬間、人間は無意識に『逃げ道』を探しちまう。……足が止まる。目が泳ぐ。……喧嘩で一番ヤベェのは、その一瞬だ」徐福の瞳に、ギラリと冷たい殺気が宿った。「逆に、『相打ち上等』で突っ込んでくる奴は、迷いがねえから動きが速ぇ。……刃物みてえに真っ直ぐだ。だから相手がビビって、結果的にそいつが勝つ」
徐福はニヤリと笑った。「『幸(ねが)わば』ってのは、運任せに逃げ道を探すってことだろ?……そんな半端な奴から、真っ先に死ぬんだよ」
部屋に一瞬、静寂が流れた。それは、書物の中の知識が、血肉を通った「真理」として具現化した瞬間だった。石韜は、ゆっくりと隣の孟建と顔を見合わせた。
横で見ていた孟建が感心して言った。
「驚いたな。こいつ、吸収が早いぞ。経典の解釈じゃ凡庸だが、実学となると天才的だ」
石韜も頷く。
「文字という『鍵』さえ手に入れれば、化けるかもしれんぞ」
二人の秀才からの予想外の評価に、徐福は「けっ、おだてても何も出ねえぞ」と照れ隠しにそっぽを向いた。
その様子を、向朗は黙って見ていた。彼の手は、墨をするのを止めている。
(……驚いた。石韜と孟建の言う通りだ)
向朗は、徐福の横顔を見つめた。
この男は、単なる「腕っぷしの強い相棒」ではないかもしれない。 既存の形式や常識に囚われない発想。複雑な事象を、極めてシンプルで残酷な「暴力の理屈」に変換して本質を掴む直感力。それは、机の上で兵法を学ぶ自分たちには決して持ち得ない、天性の才能だ。
(……もし彼が、文字を覚え、古今の知識をその身に取り込んだとしたら。……彼は、僕たちよりも恐ろしい『策士』の素質があるかも知れない)
向朗の背筋に、ゾクリとしたものが走った。それは恐怖ではなく、原石を見つけた宝石商の興奮に近かった。
「……徐福」
「あんだよ、向朗」
「『義』の文字だ。あと百回……いや、二百回追加だ」
「はあ!?なんで増えるんだよ!」
「君にはその価値があるからだよ。……さあ、夜はまだ長い。徹底的に叩き込んでやる」
向朗はニヤリと笑い、新しい木札の山をドンと積んだ。
悲鳴を上げる徐福と、それを肴に酒を飲み始める石韜と孟建。
夜の自習室は、未来の英雄たちの喧騒と、微かな希望の光に満ちていた。
徐福は、油が切れかけた灯火の下で、筆を握りしめた。もっとだ。もっと知恵をくれ。力だけでは守れないものがある。柳安のような正しい人間が、馬鹿を見ない世の中にするために。俺は、強くならなきゃいけねえ。
その夜、徐福の筆は止まることがなかった。不格好な文字が、木簡を埋め尽くしていく。それは、彼が初めて手にした「世界と戦うための武器」だった。
月が中天にかかる頃。水鏡塾の寄宿舎の一室、向朗たちの部屋には、まだ灯りがともっていた。狭い部屋には、竹簡の山と、男四人のむさ苦しい熱気が充満している。
「……あー、くそっ!なんで『人』って字は二画なのに、『道』って字はこんなに複雑なんだ!歩くなら真っ直ぐ歩きゃいいじゃねえか!」
徐福が筆を投げ出し、頭を抱えて叫んだ。机の上には、ミミズがのたうち回ったような文字が書かれた木札が散乱している。向朗による「補習」の時間である。
「文句を言わない。文字は世界の理(ことわり)を写し取る絵だ。『道』が複雑なのは、人が歩むべき道が平坦ではないからだよ」
向朗は淡々と諭しながら、新しい木札を差し出した。
「ほら、次は『義』だ。あと百回書いて」「鬼か、お前は……」
「義を見て為さざるは……向朗、えと、なんだった。?」
「だーかーら!『論語』の暗記なんて後回しでいいって言ってるだろ!」
向朗が竹簡を放り投げた。
「君の目的は『勝つための知恵』だろう?なら、まずはこっちだ」
向朗が広げたのは、兵法書『孫子』だった。
「いいかい、徐福。文字を覚えるんじゃない。意味を覚えろ」
向朗は筆を取り、木簡にさらさらと文字を書いた。
『兵とは詭道なり』
「……なんて読むんだ?」
「へいとは、きどうなり。……意味はわかるか?」
「……戦いは、綺麗事じゃねえってことか?」
「半分正解。戦いとは『騙し合い』だということだ。敵を欺き、予期せぬところを突き、最小の犠牲で最大の戦果を上げる。それが兵法だ」
向朗は徐福の目を見て言った。
「君が喧嘩で勝った時のことを思い出せ。自分よりデカい相手を倒す時、どうした?」
「……砂をかけて目を潰した。あと、路地裏に誘い込んで、動きを封じた」
「それが『詭道』であり、『地利』だ。君はすでに、実戦で兵法を使っているんだよ」
目から鱗が落ちるようだった。
向朗の解説は、実用的で分かりやすかった。徐福の脳内で、過去の路地裏での喧嘩の記憶と、兵法書の難解な文字が結びついていく。
兵法書を読んでいた石韜が、くつくつと笑った。
「まあ、そう虐めてやるな、向朗。徐福くんの頭は、まだ墨よりも血の巡りの方がいいらしい」
石韜は手元の竹簡――『孫子』の兵法書を指先で叩いた。
「徐福くん。文字を覚えるのが辛いなら、少し趣向を変えようか。……君は喧嘩が得意なんだろう?」
「ああ?まあな。この辺のゴロツキで俺に勝てる奴はいねえよ」
「では、喧嘩の極意とは何だと思う?」
徐福は少し考え、拳を握った。
「そんなもん、相手がビビってる間に殴る。相手が息を吸った瞬間に蹴る。……あとは気合だ」
単純すぎる答えに、石韜はニヤリとした。
「なるほど。……孫子曰く、『兵は詭道(きどう)なり』。『その無備を攻め、その不意に出ず』」
「あ?」
「つまり、戦争とは騙し合いだということさ。敵が『来ないだろう』と油断している場所を攻め、敵が思いもよらない時に動く。……君の言う『ビビってる間に殴る』というのは、兵法の理にかなっている」
石韜はさらに続けた。
「例えば、わざと弱ったふりをして敵を誘い出し、伏兵で囲む。あるいは、東に逃げると見せかけて西を攻める。これを『声東撃西(せいとうげきせい)』と言うんだが……」
徐福の目が、パチリと瞬いた。文字の話の時は死んだ魚のような目をしていたが、今の瞳には生気が宿っている。
「なんだ、そりゃあ俺がよくやる手じゃねえか」
「ほう?」
「相手の股間をジロジロ見てな、『おっ、隙あり』って顔をするんだ。そうすりゃ相手は慌てて股を閉じる。意識が下にいくから、その瞬間にガラ空きになった顔面に頭突きをぶち込む。……それと同じことだろ?」
石韜は目を丸くし、それから吹き出した。
「ぶっ……ハハハ!股間と頭突きか!随分と下品な『声東撃西』だが……本質は完全に捉えている。驚いたな」
石韜は感心したように唸った。
高尚な兵法用語を、一瞬で路地裏の喧嘩術に翻訳して理解したのだ。
すると今度は、横で歴史書を整理していた孟建が、面白そうに顔を出した。
「なら、これはどうだい?『左伝』にある曹劌(そうけい)という人物の言葉だ」
孟建は、芝居がかった口調で朗誦した。「『一鼓(いっこ)して気を作(ふる)い、再すれば衰え、三すれば渇(つ)く』……。これは、敵軍が攻めてきた時、太鼓を鳴らして攻めかかってきても、一度目は迎え撃たずにじっと耐えろ、という教えだ。二度、三度と太鼓が鳴る頃には、敵の士気は下がっている。そこを叩けとな」
孟建は徐福を見て、試すように微笑んだ。
「意味が分かるかい?臆病風に吹かれて逃げろという意味じゃないよ」
徐福は鼻を鳴らし、筆をクルクルと回した。
「当たり前だろ。……あれだ。イキがってる奴ほど、最初に大声で吠える」
「ほう」
「『殺すぞオラァ!』って喚いてるうちは、手を出さねえでニヤニヤ見てりゃいいんだ。そのうち喚くのに疲れて、肩で息をし始める。……そこを土手っ腹に一発入れれば、一撃で沈む。最初に喚く奴ほど、スタミナ配分を考えてねえからな」
孟建は、ポカンと口を開けた。自分の説明した古典の教えが、あまりにも的確な「喧嘩の極意」に変換されて返ってきたからだ。
その様子を見て、石韜がますます面白そうに身を乗り出した。
「面白い。……じゃあ徐福くん、次は『呉子(ごし)』だ。分かるかい?」
石韜は手元の竹簡を持ち替え、厳かに読み上げた。
「『兵戦の場は立屍(りっし)の地なり』。……戦場というのは、一歩間違えば死体が棒立ちになっているような死地だという意味だ」
石韜は徐福の目を見て続けた。
「『死を必すれば則(すなわ)ち生き、生を幸(ねが)わば則ち死す』。……死ぬ気で戦えば逆に生き残れるが、まぐれで助かろうとすれば死ぬ。なぜだと思う?」
徐福は眉をひそめ、天井を仰いで少し考えた。そして、自分の古傷が残る拳をじっと見つめ、ぽつり、ぽつりと、言葉を探すように言った。
「……『迷い』……だな」
石韜の目が大きく開かれた。徐福は続ける。
「『助かりてえ』と思った瞬間、人間は無意識に『逃げ道』を探しちまう。……足が止まる。目が泳ぐ。……喧嘩で一番ヤベェのは、その一瞬だ」徐福の瞳に、ギラリと冷たい殺気が宿った。「逆に、『相打ち上等』で突っ込んでくる奴は、迷いがねえから動きが速ぇ。……刃物みてえに真っ直ぐだ。だから相手がビビって、結果的にそいつが勝つ」
徐福はニヤリと笑った。「『幸(ねが)わば』ってのは、運任せに逃げ道を探すってことだろ?……そんな半端な奴から、真っ先に死ぬんだよ」
部屋に一瞬、静寂が流れた。それは、書物の中の知識が、血肉を通った「真理」として具現化した瞬間だった。石韜は、ゆっくりと隣の孟建と顔を見合わせた。
横で見ていた孟建が感心して言った。
「驚いたな。こいつ、吸収が早いぞ。経典の解釈じゃ凡庸だが、実学となると天才的だ」
石韜も頷く。
「文字という『鍵』さえ手に入れれば、化けるかもしれんぞ」
二人の秀才からの予想外の評価に、徐福は「けっ、おだてても何も出ねえぞ」と照れ隠しにそっぽを向いた。
その様子を、向朗は黙って見ていた。彼の手は、墨をするのを止めている。
(……驚いた。石韜と孟建の言う通りだ)
向朗は、徐福の横顔を見つめた。
この男は、単なる「腕っぷしの強い相棒」ではないかもしれない。 既存の形式や常識に囚われない発想。複雑な事象を、極めてシンプルで残酷な「暴力の理屈」に変換して本質を掴む直感力。それは、机の上で兵法を学ぶ自分たちには決して持ち得ない、天性の才能だ。
(……もし彼が、文字を覚え、古今の知識をその身に取り込んだとしたら。……彼は、僕たちよりも恐ろしい『策士』の素質があるかも知れない)
向朗の背筋に、ゾクリとしたものが走った。それは恐怖ではなく、原石を見つけた宝石商の興奮に近かった。
「……徐福」
「あんだよ、向朗」
「『義』の文字だ。あと百回……いや、二百回追加だ」
「はあ!?なんで増えるんだよ!」
「君にはその価値があるからだよ。……さあ、夜はまだ長い。徹底的に叩き込んでやる」
向朗はニヤリと笑い、新しい木札の山をドンと積んだ。
悲鳴を上げる徐福と、それを肴に酒を飲み始める石韜と孟建。
夜の自習室は、未来の英雄たちの喧騒と、微かな希望の光に満ちていた。
徐福は、油が切れかけた灯火の下で、筆を握りしめた。もっとだ。もっと知恵をくれ。力だけでは守れないものがある。柳安のような正しい人間が、馬鹿を見ない世の中にするために。俺は、強くならなきゃいけねえ。
その夜、徐福の筆は止まることがなかった。不格好な文字が、木簡を埋め尽くしていく。それは、彼が初めて手にした「世界と戦うための武器」だった。
0
あなたにおすすめの小説
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる