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第1章 龍の巫女クリム誕生
第9話 クリムゾン出生の秘密
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異形のドラゴン・クリムゾンが海でぼんやりしているところに、同族であるロード・ドラゴンのクチナシ、セイランの二頭が唐突に訪れた。彼らは目的を果たすと早々に自身の縄張りへと帰ってしまったが、残されたクリムゾンには得る物があったようだ。
クリムゾンは彼らとの交流を通じてドラゴンの基本的な生態を思い出し、それにより対戦相手に疎まれることなく戦闘を行いたいという、地味な悩みを解決する名案を思い付いたのだった。
その方法とは・・・他のドラゴン達が行っているのと同様に、クリムゾンも眷属を産み出して悩み相談に乗ってもらう、というものだった。眷属を産み出すのは龍種の頂点に立つほどの力を蓄えたロード・ドラゴンであれば当たり前の行為であるが、縄張りも持たずフラフラと戦いを求めて彷徨っていた異端のロード・ドラゴンであったクリムゾンからすれば、目から龍麟が落ちる程の大発見であった。
一見他力本願な方法ではあるが、ドラゴンが単体で産み出す眷属は子供であるのと同時に、言わば自身の分身体でもあるため、自力本願と言っても差し支えないだろう。
また産まれたての赤ん坊に何を期待しているのだ、と疑問に思われる方もいることだろう。それは当然の事で、いかにドラゴンと言えども産まれた直後は無垢な赤ん坊であり、なんの知識も経験もない非力な存在である。そしてドラゴンが成龍へと成長するには、個体差はあるが数百年から千年程の長き時を要する。
もちろんクリムゾンは赤子をゼロから育てよう等という、気の長い計画を考えているわけではない。かといってまだ見ぬ眷属に多大な期待を寄せているのは、根拠のない自信からというわけでもない。その自信にはクリムゾンの出生の秘密が絡んでいるのだ。
クリムゾンの出生は通常のドラゴンとは異なり少々特殊であった。本筋と無関係であるため今はあえて詳細を省くが、当時クリムゾンの母は産まれてくる我が子を即座に戦場に送り込む必要に駆られていたのだ。そのために取られた危急の策は、産み出した卵に魔力を注ぎ込み急速成長させるというものであった。この方法を用いた場合、ドラゴンは産まれた直後でも成龍と変わらぬ強大な力を持ち、ある程度の知識は母の魔力を通して継承するため精神的にも一応の自立を果たし、即戦力として期待できるレベルまで成長するのだ。
ただし経験不足からくる精神的な幼さの問題や、急速成長に際して異常が発生する可能性、自身の経験に基づかない母の知識を継承することによる弊害等を孕んでいるため、よほど緊急の場合でなければこの方法がとられることはない。
クリムゾンは自身が産まれたのと同様に、自身の眷属もまたその特殊な方法で産み出すつもりであった。というかクリムゾンにとってはそれが普通の方法であり、他の出産方法は知らず、この方法こそがドラゴン種共通の通常の出産方法だと思い込んでいるのである。
とっておきの秘策を思い付いた赤き巨龍は、善は急げとばかりに海上を飛び立ち、産卵に適した場所を求めて移動を開始するのだった。
クリムゾンにとっては身に覚えのない話であるが、その魔力によって命を救われたいくらかの海鳥たちは、巨大な龍の背中をいつまでも見送っているのだった。猫の様な鳴き声は、まるで巨大なドラゴンへの感謝を示しているようであった。
なお海鳥たちに災難が降りかかったのは元をただせばクリムゾンに原因があるのだが、彼らがそんな事を知る由もない。
クリムゾンは彼らとの交流を通じてドラゴンの基本的な生態を思い出し、それにより対戦相手に疎まれることなく戦闘を行いたいという、地味な悩みを解決する名案を思い付いたのだった。
その方法とは・・・他のドラゴン達が行っているのと同様に、クリムゾンも眷属を産み出して悩み相談に乗ってもらう、というものだった。眷属を産み出すのは龍種の頂点に立つほどの力を蓄えたロード・ドラゴンであれば当たり前の行為であるが、縄張りも持たずフラフラと戦いを求めて彷徨っていた異端のロード・ドラゴンであったクリムゾンからすれば、目から龍麟が落ちる程の大発見であった。
一見他力本願な方法ではあるが、ドラゴンが単体で産み出す眷属は子供であるのと同時に、言わば自身の分身体でもあるため、自力本願と言っても差し支えないだろう。
また産まれたての赤ん坊に何を期待しているのだ、と疑問に思われる方もいることだろう。それは当然の事で、いかにドラゴンと言えども産まれた直後は無垢な赤ん坊であり、なんの知識も経験もない非力な存在である。そしてドラゴンが成龍へと成長するには、個体差はあるが数百年から千年程の長き時を要する。
もちろんクリムゾンは赤子をゼロから育てよう等という、気の長い計画を考えているわけではない。かといってまだ見ぬ眷属に多大な期待を寄せているのは、根拠のない自信からというわけでもない。その自信にはクリムゾンの出生の秘密が絡んでいるのだ。
クリムゾンの出生は通常のドラゴンとは異なり少々特殊であった。本筋と無関係であるため今はあえて詳細を省くが、当時クリムゾンの母は産まれてくる我が子を即座に戦場に送り込む必要に駆られていたのだ。そのために取られた危急の策は、産み出した卵に魔力を注ぎ込み急速成長させるというものであった。この方法を用いた場合、ドラゴンは産まれた直後でも成龍と変わらぬ強大な力を持ち、ある程度の知識は母の魔力を通して継承するため精神的にも一応の自立を果たし、即戦力として期待できるレベルまで成長するのだ。
ただし経験不足からくる精神的な幼さの問題や、急速成長に際して異常が発生する可能性、自身の経験に基づかない母の知識を継承することによる弊害等を孕んでいるため、よほど緊急の場合でなければこの方法がとられることはない。
クリムゾンは自身が産まれたのと同様に、自身の眷属もまたその特殊な方法で産み出すつもりであった。というかクリムゾンにとってはそれが普通の方法であり、他の出産方法は知らず、この方法こそがドラゴン種共通の通常の出産方法だと思い込んでいるのである。
とっておきの秘策を思い付いた赤き巨龍は、善は急げとばかりに海上を飛び立ち、産卵に適した場所を求めて移動を開始するのだった。
クリムゾンにとっては身に覚えのない話であるが、その魔力によって命を救われたいくらかの海鳥たちは、巨大な龍の背中をいつまでも見送っているのだった。猫の様な鳴き声は、まるで巨大なドラゴンへの感謝を示しているようであった。
なお海鳥たちに災難が降りかかったのは元をただせばクリムゾンに原因があるのだが、彼らがそんな事を知る由もない。
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