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第2章 一年二学期
第67話 ゆとり世代の青柳先生①
しおりを挟む白金女子学園のホームページ更新は、サトシの仕事だった。
白金祭の様子を記事にして紹介することで、少しでもこの学校に興味を持ってくれればと、この日も懸命にパソコンのキーボードを叩いていた。
「サトシ先生のクラスはいいですね」
声をかけてきたのは、育休中の工藤の代わりに採用された、臨時講師の青柳先生だった。
二十七歳という若手で、若い男性というだけで白金女子学園の生徒たちからは人気の的になっている。
「はい? 青柳先生、どうしたんですか? ホームページ更新に興味でもあります?」
「いいえ、そうじゃなくて。サトシ先生のクラスは体育祭も白金祭も、生徒たちが楽しそうに取り組んでいて、羨ましいなと」
「あれ? 何か悩んでいます?」
話があるなら聞くよという、親切心を見せておきながら、サトシの顔はパソコン画面に、手はキーボードから離さなかった。
青柳先生は前任の工藤のクラスの担任は任されていなかった。
二年の学年主任が担任に入って、青柳は副担任という立場だった。
それは、二年生は受験に向けて準備していく学年であり、臨時講師で担任では荷が重いだろうという学校側の配慮だった。
「なんだか私立の学校って大変ですね」
「そうですか?」
「学校の伝統を守る派の先生と、新しいことに挑戦していく派の先生がいるんですよね」
「あああ……、わかります。教頭対若手ってことですか。先生によって方針の違いはありますからね」
「はっきり言うとそういうことです。誰も臨時講師の僕の意見なんか聞いてくれませんよ」
「みんな、一生懸命なんですよ。まあ、それぞれの正義があるってことでしょう。校長先生に、相談してみるといいですよ。校長先生なら、きっと相談に乗ってくれます」
「こんな、臨時講師の僕が、相談していいのでしょうか」
「お給料もらっているんだから、臨時も正規も関係ないんじゃないですか?」
「そうですか……」
青柳先生は、なかなかサトシの席から離れなかったので、ちょっと仕事を振ってみた。
何かやりがいや楽しいことを見つけられたら、青柳先生は変われるかもしれないと思ったからだ。
「動画編集とかできます? 青柳先生。ちょっと手伝ってみませんか?」
「いいえ、僕、もう時間なので定時で帰ります」
サトシは、青柳先生の即答に呆れかえった。
(あれ? そこは臨時講師でもいいんだ)
「あ、そうですか。お疲れ様でーす」
(わからない人だなぁ)
次の日も、サトシの隣に青柳先生は座ってきた。
「サトシ先生、動画編集できました?」
「ああ動画ですね。それがねぇ、なかなか時間が無くて、まだなんです。早くやらないと旬のネタじゃなくなってしまうのは、わかっているんですが」
「手伝いますよ」
「それは助かります。お願いしていいですか?」
「大学時代に動画投稿していたんで、得意なんです」
青柳先生の意外な側面を見た気がして、サトシは喜んだ。
(なんだ、得意なら早く言ってくれよ)
その日の退勤時間が近づいてきて、サトシは青柳先生に声をかけた。
「青柳先生、定時だからあがっていいですよ。無理しないでください」
「あ、もう終わってます。このフォルダーに入れておきました」
「早い。もうできたんですか?」
「確認お願いします。じゃ、わたしはお先に失礼します」
「はい、お疲れ様でしたー」
サトシは、パソコンのファイルを開き、編集された動画を確認した。
動画にはテロップも入って、サムネイルまできれいに作られていた。
(ほぅ、さすが動画投稿経験者は違うな。まるでプロじゃないか)
出来上がった動画を校長と教頭にも見てもらい、許可をもらえば動画投稿サイトへの投稿ができる。
その前に、先輩である古松川先生に見てもらうことにした。
動画を見た古松川先生は、
「おおおお、いいじゃないですか。これで校長にオッケーもらいましょう」
「ですよね! これ、青柳先生が編集してくれたんですよ」
「へぇ、あの臨時の? 若手じゃなきゃできないねー。さすがだねー」
「ハハハ、わたしも一応ギリ若手なんですが、全然センスが違いますね」
古松川先生の同意を得て、一年A組のダンス動画は校長室で鑑賞されることになった
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