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第7章 三年一学期
第207話 突然の宿泊に
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サトシは、桜井の母の実家に泊めていただくことになった。
「桜井、実は俺、泊まるつもりで来てないから、着替えが無いんだけど」
「あ、そっか。おじさんので良ければ、借りようか」
「先生、俺ので良ければ貸しますよ」
「ありがとうございます」
ヤンキーおじさんが持ってきたのは、甚平とTシャツだった。
何枚かあるTシャツを眺めたが、どれも個性的なデザインだ。
「かなり過激だな、髑髏マークとは……。甚平も着たことがないし……」
サトシは戸惑い気味につぶやいた。
「おや、お気に召しませんでしたか?」
ヤンキーおじさんが威圧的な目で睨んできた。
「いいえ、とんでもございません。どれも個性的で素敵なデザインで、ま、迷ってしまいました」
「へへへ、だろう?」
見た目恐いが本当はいい人である。
そんなヤンキーおじさんは、一緒に夕食を楽しんだ後に、自分の家へと帰った。
居間でのサトシはあきらかによそ者で、気まずい空気が流れていた。
桜井がおばあさんと食事の後片付けをしている間、サトシは甚平に着替えて、お爺さんの前で正座していた。
「先生は、美柑と婚約していると聞いたが……」
サトシは緊張して背筋を正した。
「はい、真摯にお付き合いさせていただいております」
「美柑は、高校生で来年は大学に行くのかと思ってたがの」
「これから大学受験して、来年には大学生になりますね」
「ふん、先生はそれでも美柑と結婚するつもりかの」
「……はい、お孫さんを幸せにします」
暫く、重い沈黙が続いた。
かわいい孫娘が、男と喧嘩して、東京から泣きながら帰って来たのだ。
おじいさんにしてみたら、サトシはとんでもない男だ。
「……、じゃ、布団は同じ部屋に敷いていいかの。それを聞きたかったんじゃ」
サトシは力が抜けた。
(よかった。組長に切られるかと思った)
二階の和室を開けると、布団が二組敷いてあった。
(まるで旅館みたいだな)
部屋の横に置いてある座卓には、英単語帳と古語単語帳が置いてあった。
(俺の家を飛び出しても、ちゃんと勉強していたのか。偉いというか、真面目というか……。桜井は一体どこで気を抜いているんだろう)
サトシはスマホを充電しようと、画面を見た。
すると、たくさん着信履歴が来ていることに気づいた。
(うわっ! ヤバい、レイコ姉さんからだ。帰国するって言っていたっけ。忘れていた)
サトシは、さっそくレイコ姉さんに電話した。
「レイコ姉さん? サトシだけど」
―「サートーシー!! あんた、どこにいるの? 家にはいないし、お母さんもサトシが旅行に行くとは聞いていないって言うし……」
「えっと、急遽山梨に来ることになって……」
―「山梨? 何、もしかしてフェス?!」
「違うよ。桜井のお母さん方の実家にいる」
―「え、どうしたの。何か不幸でも……」
「やめて! 縁起でもない。ええーっと、何と言うのか、そのぅ」
サトシは、ケンカしたら出て行った桜井を追いかけにとは、言えなかった。
「……婚約の報告に」
―「あ、そっか。そうよね。それは必要だわね」
(よかった。セーフ。案外チョロかった)
―「ところで、桜井さんは元気? 栗栖も帰国したから、会いたがっていんだけど、都合着くかしら」
「ん? 二人だけで会わせるの?」
―「心配? 大丈夫、わたしも同席するわ」
「わかった、桜井に伝えておく」
「じゃ、お願いねー」
電話を切ったところに、ちょうど桜井がお風呂からあがってきた。
「先生、お風呂空いたよー」
「あ、ごめん。レイコ姉さんと電話で話してたけど、たった今切ってしまった」
「えええ!? なんでよー。レイコ姉さんと話かったのにぃ!」
桜井はサトシに飛び掛かって、小さなげんこつでポカポカ殴って来た。
「うわっ! 痛っ、よせ!」
サトシは桜井の腕をつかんで、そのまま布団に押し倒した。
「きゃっ! ……えっ?」
桜井のドキドキしている鼓動が聞こえた。
「桜井、……俺」
やわらかくて温かい布団はお日様の香りがした。
(うわー、桜井も布団もふかふかして気持ちいい、なにこれ……)
「先生、いきなり?!」
「……俺……、俺もう疲れた……寝る」
サトシはそのまま桜井の上に覆いかぶさった。
桜井は突然の出来事に、理解が追い付かない。
「な、何?!」
サトシは、桜井が家を飛び出してから、一睡もしていなかった。
そして、横になったタイミングでそのまま寝落ちした。
「……先生……」
(突然いなくなったわたしのため、こんな遠くまで迎えに来てくれて……、心配して疲れたんだ……。ごめんね。そして、お疲れ様。大好きよ)
寝落ちしたサトシは、桜井に抱きしめられていることすら気づかず夢の中だった。
「桜井、実は俺、泊まるつもりで来てないから、着替えが無いんだけど」
「あ、そっか。おじさんので良ければ、借りようか」
「先生、俺ので良ければ貸しますよ」
「ありがとうございます」
ヤンキーおじさんが持ってきたのは、甚平とTシャツだった。
何枚かあるTシャツを眺めたが、どれも個性的なデザインだ。
「かなり過激だな、髑髏マークとは……。甚平も着たことがないし……」
サトシは戸惑い気味につぶやいた。
「おや、お気に召しませんでしたか?」
ヤンキーおじさんが威圧的な目で睨んできた。
「いいえ、とんでもございません。どれも個性的で素敵なデザインで、ま、迷ってしまいました」
「へへへ、だろう?」
見た目恐いが本当はいい人である。
そんなヤンキーおじさんは、一緒に夕食を楽しんだ後に、自分の家へと帰った。
居間でのサトシはあきらかによそ者で、気まずい空気が流れていた。
桜井がおばあさんと食事の後片付けをしている間、サトシは甚平に着替えて、お爺さんの前で正座していた。
「先生は、美柑と婚約していると聞いたが……」
サトシは緊張して背筋を正した。
「はい、真摯にお付き合いさせていただいております」
「美柑は、高校生で来年は大学に行くのかと思ってたがの」
「これから大学受験して、来年には大学生になりますね」
「ふん、先生はそれでも美柑と結婚するつもりかの」
「……はい、お孫さんを幸せにします」
暫く、重い沈黙が続いた。
かわいい孫娘が、男と喧嘩して、東京から泣きながら帰って来たのだ。
おじいさんにしてみたら、サトシはとんでもない男だ。
「……、じゃ、布団は同じ部屋に敷いていいかの。それを聞きたかったんじゃ」
サトシは力が抜けた。
(よかった。組長に切られるかと思った)
二階の和室を開けると、布団が二組敷いてあった。
(まるで旅館みたいだな)
部屋の横に置いてある座卓には、英単語帳と古語単語帳が置いてあった。
(俺の家を飛び出しても、ちゃんと勉強していたのか。偉いというか、真面目というか……。桜井は一体どこで気を抜いているんだろう)
サトシはスマホを充電しようと、画面を見た。
すると、たくさん着信履歴が来ていることに気づいた。
(うわっ! ヤバい、レイコ姉さんからだ。帰国するって言っていたっけ。忘れていた)
サトシは、さっそくレイコ姉さんに電話した。
「レイコ姉さん? サトシだけど」
―「サートーシー!! あんた、どこにいるの? 家にはいないし、お母さんもサトシが旅行に行くとは聞いていないって言うし……」
「えっと、急遽山梨に来ることになって……」
―「山梨? 何、もしかしてフェス?!」
「違うよ。桜井のお母さん方の実家にいる」
―「え、どうしたの。何か不幸でも……」
「やめて! 縁起でもない。ええーっと、何と言うのか、そのぅ」
サトシは、ケンカしたら出て行った桜井を追いかけにとは、言えなかった。
「……婚約の報告に」
―「あ、そっか。そうよね。それは必要だわね」
(よかった。セーフ。案外チョロかった)
―「ところで、桜井さんは元気? 栗栖も帰国したから、会いたがっていんだけど、都合着くかしら」
「ん? 二人だけで会わせるの?」
―「心配? 大丈夫、わたしも同席するわ」
「わかった、桜井に伝えておく」
「じゃ、お願いねー」
電話を切ったところに、ちょうど桜井がお風呂からあがってきた。
「先生、お風呂空いたよー」
「あ、ごめん。レイコ姉さんと電話で話してたけど、たった今切ってしまった」
「えええ!? なんでよー。レイコ姉さんと話かったのにぃ!」
桜井はサトシに飛び掛かって、小さなげんこつでポカポカ殴って来た。
「うわっ! 痛っ、よせ!」
サトシは桜井の腕をつかんで、そのまま布団に押し倒した。
「きゃっ! ……えっ?」
桜井のドキドキしている鼓動が聞こえた。
「桜井、……俺」
やわらかくて温かい布団はお日様の香りがした。
(うわー、桜井も布団もふかふかして気持ちいい、なにこれ……)
「先生、いきなり?!」
「……俺……、俺もう疲れた……寝る」
サトシはそのまま桜井の上に覆いかぶさった。
桜井は突然の出来事に、理解が追い付かない。
「な、何?!」
サトシは、桜井が家を飛び出してから、一睡もしていなかった。
そして、横になったタイミングでそのまま寝落ちした。
「……先生……」
(突然いなくなったわたしのため、こんな遠くまで迎えに来てくれて……、心配して疲れたんだ……。ごめんね。そして、お疲れ様。大好きよ)
寝落ちしたサトシは、桜井に抱きしめられていることすら気づかず夢の中だった。
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