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魔法
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アレクは私の瞼に手を当てると、何かを呟いたようだ。
アレクの手から瞼へと優しい光が入って来るみたい。
温かいような冷たいような不思議な感覚が私を襲う。
目から入ったその光はやがて全身にめぐり、ぽかぽかと温まり、とても気持ちが良くて嬉しくなった。
「ゆっくり目を開けて」
一瞬、周りが眩しい光に包まれているように見え、それが落ち着いてきたら、私は凄く驚いた。
裸眼ではっきりと周りが見えるようになっていたから。
「アレク、一体何が起こったの?目が見える。視力が良くなってるみたい」
「そう、良かった」
これはもしかして、もしかして!
「あのアレク、もしや今のは魔法なの?」
「さあね」
アレクは私から視線を外し、遠い目をしている。
なんだかあまり話したくなさそう。
でも、これが魔法だったら凄い事なのに。
この世界には魔法が存在する。
でもそれを使えるのは人口の一%に満たない。
魔法を使える人間は生まれながらにエリートなんだ。
回復系の魔法は、使い手が少なくて特に貴重なんだとか。
先程アレクが使ったのは、私の視力が良くなった事から回復魔法で間違いないはずなんだけど···。
普通だったら自慢しても良い所なのに、なぜかアレクはあまり触れたがらない。
何か訳があるんだろうけど、根掘り葉掘り聞くのも違うと思うし。
それでも、確かに私の目はアレクのおかげで回復した。
今までぼんやりとしか見えなかった世界が、こんなにも綺麗で光り輝いてるって知らなかった。
「アレク、ありがとう。私、凄く嬉しい」
本当はこの感動をもっと伝えたいんだけど、言葉にならなかった。
アレクは私の言葉に目を瞠った。
そして、深くため息を吐き、淋しげに笑った。
「···ティア、今の内緒にしてね」
「·····」
ああ、やっぱり。
これ以上魔法のことに触れるのは止めておこう。
「ティア、もうメガネ無しでも平気だね。このまま行くよ」
そうだった!
繋いだ手を離さないと。
でも、アレクは手をしっかりと握っているため、どうやっても離せない。
うう、ファンクラブに睨まれたら怖いんですけど。
見上げる私の視線に気付いたアレクは、やれやれと肩を竦めた。
「一つ言うとね。メガネのない君は、君と認識されないだろう。だから手は繋いだままで平気だよ」
「や、そんな事ないと思う」
「まあ、見ていてごらん」
私達は手を繋いだままで生徒会室を出た。
時計塔へ歩いていく道すがら、当然ながら多くの生徒がこちらに注目している。
ざわめきとささやき声があちらこちらから聞こえてくるのを、私は注意して聞いた。
「ああ!ちょっとあれ見てよ!氷の王子様が女の子と手を繋いでる!!ショック··。誰よあれ?見たことない子ね」
「うわあーー!私の王子がー王子がー(涙)もう誰よ、あの女は」
「おい、見たか!?あんな綺麗な娘、この学園にいたっけ?」
······確かに誰も私ってわからないみたい。
でも、普段が地味すぎて、単にみんなの記憶に残っていないだけなのかも·······。
あ!!フィンさんもいる。
なんだかとても驚いた顔をしてこちらを見ているけど。
···驚きすぎにも程があるんじゃないだろうか?
メガネをしてないだけなのに。
「ほらね」
「······」
アレクは握る手の力を強め、ほくそ笑んだ。
わかりましたよ。
私は、はあっとため息を一つ吐いて、手を離すのを諦めた。
アレクの手から瞼へと優しい光が入って来るみたい。
温かいような冷たいような不思議な感覚が私を襲う。
目から入ったその光はやがて全身にめぐり、ぽかぽかと温まり、とても気持ちが良くて嬉しくなった。
「ゆっくり目を開けて」
一瞬、周りが眩しい光に包まれているように見え、それが落ち着いてきたら、私は凄く驚いた。
裸眼ではっきりと周りが見えるようになっていたから。
「アレク、一体何が起こったの?目が見える。視力が良くなってるみたい」
「そう、良かった」
これはもしかして、もしかして!
「あのアレク、もしや今のは魔法なの?」
「さあね」
アレクは私から視線を外し、遠い目をしている。
なんだかあまり話したくなさそう。
でも、これが魔法だったら凄い事なのに。
この世界には魔法が存在する。
でもそれを使えるのは人口の一%に満たない。
魔法を使える人間は生まれながらにエリートなんだ。
回復系の魔法は、使い手が少なくて特に貴重なんだとか。
先程アレクが使ったのは、私の視力が良くなった事から回復魔法で間違いないはずなんだけど···。
普通だったら自慢しても良い所なのに、なぜかアレクはあまり触れたがらない。
何か訳があるんだろうけど、根掘り葉掘り聞くのも違うと思うし。
それでも、確かに私の目はアレクのおかげで回復した。
今までぼんやりとしか見えなかった世界が、こんなにも綺麗で光り輝いてるって知らなかった。
「アレク、ありがとう。私、凄く嬉しい」
本当はこの感動をもっと伝えたいんだけど、言葉にならなかった。
アレクは私の言葉に目を瞠った。
そして、深くため息を吐き、淋しげに笑った。
「···ティア、今の内緒にしてね」
「·····」
ああ、やっぱり。
これ以上魔法のことに触れるのは止めておこう。
「ティア、もうメガネ無しでも平気だね。このまま行くよ」
そうだった!
繋いだ手を離さないと。
でも、アレクは手をしっかりと握っているため、どうやっても離せない。
うう、ファンクラブに睨まれたら怖いんですけど。
見上げる私の視線に気付いたアレクは、やれやれと肩を竦めた。
「一つ言うとね。メガネのない君は、君と認識されないだろう。だから手は繋いだままで平気だよ」
「や、そんな事ないと思う」
「まあ、見ていてごらん」
私達は手を繋いだままで生徒会室を出た。
時計塔へ歩いていく道すがら、当然ながら多くの生徒がこちらに注目している。
ざわめきとささやき声があちらこちらから聞こえてくるのを、私は注意して聞いた。
「ああ!ちょっとあれ見てよ!氷の王子様が女の子と手を繋いでる!!ショック··。誰よあれ?見たことない子ね」
「うわあーー!私の王子がー王子がー(涙)もう誰よ、あの女は」
「おい、見たか!?あんな綺麗な娘、この学園にいたっけ?」
······確かに誰も私ってわからないみたい。
でも、普段が地味すぎて、単にみんなの記憶に残っていないだけなのかも·······。
あ!!フィンさんもいる。
なんだかとても驚いた顔をしてこちらを見ているけど。
···驚きすぎにも程があるんじゃないだろうか?
メガネをしてないだけなのに。
「ほらね」
「······」
アレクは握る手の力を強め、ほくそ笑んだ。
わかりましたよ。
私は、はあっとため息を一つ吐いて、手を離すのを諦めた。
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