お飾り王妃は愛されたい

神崎葵

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十六話

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 予知夢の中で私がオーギュストの妻として過ごした期間はおよそ二年。
 たった二年ではあるけど、それでも私にとっては長い二年だった。

 初夜にすら訪れず、公の場では妃として扱ってはくれたけど私的な会話はいっさいなく、せめて食事ぐらいは一緒にと望んでも忙しいからと素っ気なく返され。
 役立たずと称された私を娶ってくれたことや、支援してくれたことに対する恩と、最初に愛することはできないと告げられていたことで、政略結婚はこういうものなのだろうと、諦めていた。

 子供ができれば労わってくれるかもしれない――そんな幻想すら抱けないほど没交渉の夫に愛する人ができたと知った時は、頭がおかしくなるかと思った。

 誰も愛することはできないと言っていたから諦めていたのに、忙しいからと言うからできるだけ邪魔にならないように過ごしていたのに、誰かを愛することも、愛する時間もあっただなんて、信じたくはなかった。

 だけど子供ができたと、その子供を私の子供として――たった一晩すら共に過ごしたことのない私の子供として公表すると聞いて、怒りを通り越して絶望した。

 役立たずだから、恩があるからと、どうしてここまで踏みにじられないといけないのか。
 私だって誰かを愛して、愛されたかった。

 オーギュストのように、誰かを愛する喜びを、愛する人との間に子を持つ喜びを知りたかった。

 だから私は――予知夢の中の私は、これから一生、喜びを得ることができないことに絶望し、自ら命を絶った。

「……陛下のおかげでリンエル国は持ち直せました。そして王家において役立たずと称されていた私を娶ろうと、そう思っていただいたことには感謝しております。ですが……子を産めないと思っていながら私を娶ろうとしたのか――当事者であるはずの私にすら、関係ないとおっしゃるあなたを、どうして誠実であると思えましょうか」

 未来を知っているからよくない想像をしてしまうのか。
 未来を知らなくても同じような想像をしていたのかはわからない。

 だけど彼を誠実な人だと思うには情報が足りない。
 愛することはないと最初から教えてくれたのは、誠実だからと言えなくもない。
 準備期間が必要だと言って、それを受け入れてくれたのも紳士な対応だと思えなくもない。

 だけど、いまだ妻ではないにしても、妻として訪れた女性を侍女に丸投げして放置して、食事を共にする時間すら惜しむのは誠実とは言えないだろう。

「私は陛下のことを詳しくは存じません。ライナストンで過ごしている間、あなたとお会いしたのは最初と今だけです」

 二年間彼の妻として過ごしていた時も、彼が何を思い、何を考えて生きているのかわからなかった。
 わかるほど、同じ時間を過ごすことができなかったから。

「だから、考えてしまうのです。当事者である私にすら伏せないといけない理由は何か――あなたが誠実な方なのか、不誠実な方なのか。それすらもわからないから」
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