お飾り王妃は愛されたい

神崎葵

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十七話

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 沈黙が落ちる。
 こちらを見つめるオーギュストの赤色の瞳の奥は揺らぐことすらなく、何を考えているのかわからない。
 これで私を王妃として迎えようとした理由を話してくれるのなら、未来はどうあれ彼自身は誠実な人だと思えるかもしれない。

 だけど、そんなことはないと――期待しても無駄だということを、私は知っている。

「……共に過ごす時間があれば、君は満足なのか」

 彼は必要なことしかしない人だった。
 招く客のリストを覚えておくようにと用意しても、彼が自ら渡すわけではなく侍女経由。
 ライナストンの踊りを覚えるための練習も、実際に踊る相手であるオーギュストではなく講師を相手に。
 いつだって彼は、自分に必要なことしかしない人だった。

「陛下はお忙しい方でしょう。共に過ごしたいと望んだとしても、そうできないことは存じております」

 王妃を娶る必要があったら娶って、だけど交流する必要はないからしない。ただ、それだけの話だ。
 オーギュストにとって私はそれだけでしかない存在なのだと――今、私の言葉に少しだけ安堵しているオーギュストの姿が物語っている。

 彼がどうして忙しいのかは、知っている。
 先王が若くして亡くなり、本来王位を継ぐはずだった兄もほどなくして亡くなった。
 そして彼は幼いころに王位を継ぐことになった。子供であった彼を侮る者も、きっといたに違いない。子供だからと悔しい思いをしたこともあっただろう。裏に誰かいるのではと、疑惑の目も向けられたこともあったかもしれない。

 だから、王として、この国を率いる者として、民に家臣に認められるために必死なのだ。

 わかっている。理解しているから、多くは望まなかった。
 だけど私はそれでは駄目なのだと――私に多少でもいいから心を砕いて、歩み寄ってくれる人でないと幸せにはなれないのだと知ってしまった。

「ですが一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「俺に答えられることなら」
「陛下は……子を産めない女がお望みだったのでしょうか」

 子を産めない王妃にどのような価値があるのかは、私にはわからない。
 だけどそうである必要があるのなら、私はオーギュストの望むような王妃にはなれない。それはオーギュストもわかっているはずだ。

「……それは、そうだ」

 頷くオーギュストに私は小さく息を吐く。

「でしたら、私との結婚はどうされますか? 破談とされる場合、いただいた支援をお返しする……というのは現状では難しいですが、お望みでしたら何年かかろうと、我が国は返還されることでしょう」

 大国であるライナストンが望めば、小国であるリンエルは従うしかない。
 だけど今はまだ建て直したばかりで、いただいただけの物資を返す術がない。

「……与えたものを返せと言うきはない……だが、君との結婚は……」

 少し考えさせてほしい。そう締めくくって、オーギュストとの対談は終わった。
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