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Episode3:崇弥の気持ち
③
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「君は?」
研ぎ澄まされた刃のごとく、鋭い視線。
匡士郎のこの問いには、ありとあらゆる疑念が凝縮されているように感じられた。
呼吸を整える。気持ちを撫でつける。
瑛茉は、ゆっくりと匡士郎のほうへ向き直ると、静かに口を開いた。
「はじめまして。佐伯瑛茉と申します」
細く透明な雨越しに、匡士郎の顔をまっすぐ捉える。
理由はわからない。けれど、なぜだか目を逸らしてはいけないような気がした。
「……君は日本人か?」
「いえ。アメリカ人です」
「崇弥と一緒に住んでいるのか?」
「……はい。訳あって、お世話に——」
「彼女と付き合ってる」
思わず、目を見開いた。
対峙している匡士郎もまた、目を見開いている。
瑛茉の返事に被せるように崇弥が放った言葉。迷いのない、はっきりとした口調だった。
驚きのあまり頭が真っ白になってしまった瑛茉とは対象的に、匡士郎の顔はみるみる青ざめていった。全身をわななかせ、叫声にも似た声で、激しく崇弥を糾弾する。
「……っ、お前は……っ、いったい何を考えているんだ……!!」
今にも掴みかからんばかりに詰め寄る匡士郎に対し、先ほどよりも冷徹な態度で崇弥が吐き捨てる。
「姻戚関係を結びさえすれば会社は安泰だと、本気で思い込んでいるあなたの想像力のなさにはほとほと呆れる。……俺は心を殺してまで結婚するつもりはない」
これだけ言うと、いまだ固まったままの瑛茉の手を掴み、崇弥はその場を後にした。後ろで自身の名を呼ぶ父を顧みることなく、エントランスへと歩みを進める。
篠突く雨が、あたりを白く染める。
匡士郎の声は、それきり聞こえなくなった。
研ぎ澄まされた刃のごとく、鋭い視線。
匡士郎のこの問いには、ありとあらゆる疑念が凝縮されているように感じられた。
呼吸を整える。気持ちを撫でつける。
瑛茉は、ゆっくりと匡士郎のほうへ向き直ると、静かに口を開いた。
「はじめまして。佐伯瑛茉と申します」
細く透明な雨越しに、匡士郎の顔をまっすぐ捉える。
理由はわからない。けれど、なぜだか目を逸らしてはいけないような気がした。
「……君は日本人か?」
「いえ。アメリカ人です」
「崇弥と一緒に住んでいるのか?」
「……はい。訳あって、お世話に——」
「彼女と付き合ってる」
思わず、目を見開いた。
対峙している匡士郎もまた、目を見開いている。
瑛茉の返事に被せるように崇弥が放った言葉。迷いのない、はっきりとした口調だった。
驚きのあまり頭が真っ白になってしまった瑛茉とは対象的に、匡士郎の顔はみるみる青ざめていった。全身をわななかせ、叫声にも似た声で、激しく崇弥を糾弾する。
「……っ、お前は……っ、いったい何を考えているんだ……!!」
今にも掴みかからんばかりに詰め寄る匡士郎に対し、先ほどよりも冷徹な態度で崇弥が吐き捨てる。
「姻戚関係を結びさえすれば会社は安泰だと、本気で思い込んでいるあなたの想像力のなさにはほとほと呆れる。……俺は心を殺してまで結婚するつもりはない」
これだけ言うと、いまだ固まったままの瑛茉の手を掴み、崇弥はその場を後にした。後ろで自身の名を呼ぶ父を顧みることなく、エントランスへと歩みを進める。
篠突く雨が、あたりを白く染める。
匡士郎の声は、それきり聞こえなくなった。
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