【完結】夕凪のピボット

那月 結音

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Episode10:はじまりの場所

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 高い天井と、無駄のない洗練された空間が、格調高さをより引き立てる。
 九条光学本社応接室。広々としたその中央に設置された重厚な木製テーブルには、スーツ姿の男性が十名ほど座していた。
 社長の匡士郎と副社長の崇弥、以下重役七名。そして、米国Novaria社副社長兼プレジデントのオリヴァー・アーロン。
 崇弥が東京へと戻った昨夜、急遽この日の午後に重役会議が決定した。オリヴァー直々の訪問ということで、会議の開催に異を唱える者は誰ひとりとしていなかった。
 オリヴァーの目的は、この場にいる全員が事前に共有してある。
 Novaria社が誇るサービスのひとつで、世界じゅうの道路や街を360度のパノラマ画像で仮想的に歩くことのできる〝Vision Streetビジョン・ストリート〟。そのサービス改善の一環として、九条光学の高性能カメラを取り入れたいとの申し出だった。
 Novaria社は、自社の命運を左右すると言っても過言ではないビジネスパートナーとして、このたび九条に白羽の矢を立てたのだ。
「Novaria社との業務提携は我が社にとって百益あって一害なし。反対する理由などないのでは?」
 重役のひとりがこう切り出すと、他の重役たちもそれに追随するように肯いた。進言を受けた匡士郎も、とくに異論はなさそうだ。
 互いにとって利点しかない。会議の進行はいたって順調。重役の誰もがそう信じて疑わなかった。
 だが。
「Thank you very much. ……However, we must stipulate one condition for the contract to be finalized.(ありがとうございます。……ただし、契約締結に際して、ひとつ条件があります)」
 オリヴァーが不意に放ったこのひとことが、室内をざわつかせた。重役たちの顔色が、一瞬にして冴えわたる。何か著しく不利な条件を加えられるのだろうかと身構えた。
「……条件、とは?」
 努めて冷静に、匡士郎がオリヴァーに対して言を促す。
 オリヴァーは、崇弥を一瞥して全体を見渡すと、明快な口調でこう告げた。
「We insist that Mr. Takaya Kujo, your Executive Vice President, continue to be part of the management.(副社長のクジョータカヤ氏を、引き続き経営陣の一員として残留させること。これが、我々の条件です)」
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