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第124話.丁半「東京視点」
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その頃、東京湾要塞司令部のその隷下にある部隊は昼夜問わず忙しく働いていた。
明而海軍は浮き足立っていたのだ。それは浅間中将より、ルシヤ艦隊は必ず札幌近海に現れるはずであるから海軍はそれを阻止撃滅すべしとの連絡があった為である。
東京湾要塞。
維新の後、首都である東京を防衛するために神奈川、千葉を中心に建設された複数の海堡からなる防衛ラインだ。来るべきルシヤ艦隊の襲撃を見据えた本土防衛のための施設である。
ここには流石に金の無かった明而政府においても重視され、数多くの砲台、そして弾薬庫を備えている。
その生命線とも言える砲と弾薬が分解運搬され、海軍艦に積み込まれていった。将兵らが口々に不平を言いながら作業を進めている。
「こんなこと、本当に良いんですか?」
砲台を分解しながら、一人が言った。
「皇都の防衛に支障が出ますよ。もし東京湾にルシヤ艦隊が現れれば日本皇国は終わりだ」
「俺に言ってくれるな。上の判断だ」
「湾内の軍艦もほとんど出航(で)るらしいぞ。東京湾はガラガラさ」
「正気なのか?捨て身どころじゃあないだろう」
「なんせ北部雑居地で海戦があるんだと。国家命運を分ける大海戦らしい」
東京湾要塞にある大砲と、その砲弾はすっかり海軍の船に積み込まれた。それらは軍艦で、そして札幌で使用される。
……
東京湾要塞司令部では、未だに今回の作戦の是非について将校らが司令官に意見していた。
「閣下、東京湾要塞の兵力まで投入して。彼奴等の目的が札幌攻撃ではなく、皇都への直接攻撃であれば問題になります!」
「ここは、東京の守りを固めるべきではないか。守りに徹せばこの地の迎撃戦力は万全であるからな」
「情報元の浅間中将閣下には悪いが根拠が薄い。識者と何か約束をしたそうだが、海戦の事は海軍が一番熟知している。陸軍の将軍に何がわかりましょう」
黙って、部下らの話を聞いていた司令官が組んでいた腕を解いて机を撫でた。
動きを見せた彼の姿を男たちの視線が追いかける。何か発せば熱くなった将兵らが爆発しそうな緊張感の中、司令官はゆっくり口を開いた。
「いや、敵は必ず札幌に現れる。俺は浅間クンを信じる」
彼はすぐに何か言いかけた部下を手で制する。
「浅間クンが信じた識者に賭けよう。この件はすでに陛下の御決断も得ている。今更言うな」
「我々は!何も陛下に異を唱えるつもりはありません。ただ……心配なだけです」
「お前達の言うこともわかる。しかし、敵はあの大国ルシヤなのだ。真っ当にやってやり切れる相手ではない、どこかで賭けに出ねばならん時が来る」
「それが今だと」
深い呼吸を挟んで言った。
「俺は全く外れているとは思わん。決戦も決戦、大決戦だ。我らが明而連合艦隊を万全の状態で送り出してやろうではないか」
明而海軍は浮き足立っていたのだ。それは浅間中将より、ルシヤ艦隊は必ず札幌近海に現れるはずであるから海軍はそれを阻止撃滅すべしとの連絡があった為である。
東京湾要塞。
維新の後、首都である東京を防衛するために神奈川、千葉を中心に建設された複数の海堡からなる防衛ラインだ。来るべきルシヤ艦隊の襲撃を見据えた本土防衛のための施設である。
ここには流石に金の無かった明而政府においても重視され、数多くの砲台、そして弾薬庫を備えている。
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「こんなこと、本当に良いんですか?」
砲台を分解しながら、一人が言った。
「皇都の防衛に支障が出ますよ。もし東京湾にルシヤ艦隊が現れれば日本皇国は終わりだ」
「俺に言ってくれるな。上の判断だ」
「湾内の軍艦もほとんど出航(で)るらしいぞ。東京湾はガラガラさ」
「正気なのか?捨て身どころじゃあないだろう」
「なんせ北部雑居地で海戦があるんだと。国家命運を分ける大海戦らしい」
東京湾要塞にある大砲と、その砲弾はすっかり海軍の船に積み込まれた。それらは軍艦で、そして札幌で使用される。
……
東京湾要塞司令部では、未だに今回の作戦の是非について将校らが司令官に意見していた。
「閣下、東京湾要塞の兵力まで投入して。彼奴等の目的が札幌攻撃ではなく、皇都への直接攻撃であれば問題になります!」
「ここは、東京の守りを固めるべきではないか。守りに徹せばこの地の迎撃戦力は万全であるからな」
「情報元の浅間中将閣下には悪いが根拠が薄い。識者と何か約束をしたそうだが、海戦の事は海軍が一番熟知している。陸軍の将軍に何がわかりましょう」
黙って、部下らの話を聞いていた司令官が組んでいた腕を解いて机を撫でた。
動きを見せた彼の姿を男たちの視線が追いかける。何か発せば熱くなった将兵らが爆発しそうな緊張感の中、司令官はゆっくり口を開いた。
「いや、敵は必ず札幌に現れる。俺は浅間クンを信じる」
彼はすぐに何か言いかけた部下を手で制する。
「浅間クンが信じた識者に賭けよう。この件はすでに陛下の御決断も得ている。今更言うな」
「我々は!何も陛下に異を唱えるつもりはありません。ただ……心配なだけです」
「お前達の言うこともわかる。しかし、敵はあの大国ルシヤなのだ。真っ当にやってやり切れる相手ではない、どこかで賭けに出ねばならん時が来る」
「それが今だと」
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「俺は全く外れているとは思わん。決戦も決戦、大決戦だ。我らが明而連合艦隊を万全の状態で送り出してやろうではないか」
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