樹くんの甘い受難の日々

生梅

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第一章

28.幕間「ある日の午後」②

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ひょぇぇぇえええ!!!!
部屋に入ってその場で音を立てないように足をバタバタさせた。
ぐはぁ!マジか!マジなのか!!!
今みたのは私の願望が見せた白昼夢じゃないよね?


つーか、王子えっろお。マジでエロかった。言葉攻めとか似合い過ぎてつらい。
てか!それよりもお兄ちゃんのエロさやばくない?
言葉攻めされていっちゃうとかたまらんだろ!ご馳走様!
肉親のベッドシーンではあったけど、あまりにもエロすぎて可愛すぎて嫌悪感一ミリもなかったわ。


「はぁ。マジかー」


小さく呟いた。
最近、王子が全然女子とエッチしてないって噂になってたけど、まさかその原因が実の兄とはねぇ…。
あれ、絶対惚れてるでしょ。
お兄ちゃんを愛おしそうに見る目にドキドキした。
口からだらしなく垂れてる唾液とかもペロペロしてたし。
はぁ~いいもん見せてもらったぁ。


パンツを下すと、ぐっしょり濡れていた。
そりゃそうだよねぇ。あんな濡れ場見せられたら濡れますって。淫語すごかったな。もろエロ本やん!
お、おまんことか赤ちゃんできちゃうとか、もろ淫語!滾るわぁ~。
かすかにベッドが軋む音と、艶やかな声が途切れとぎれに聞こえてくる。


そんな最高のシチュエーションで、滾る心をそのままに机に向かう。
ノートパソコンを立ち上げて書きかけの小説のフォルダを開けて続きを書きだす。
ムラムラはオナニーではなくて、作品に思いっきりぶつけるのが私流。
滾る心をそのままに一気に書き上げる。
私が愛してやまない、BL作品を。


そうか。兄の肛門はもう、王子たちのおまんこなのね―――


がはぁ!さいっこう。



どのくらい時間がたったのだろう。
コンコンと扉をノックされる音がして我に返った。


「は、はい?」


恐る恐る扉を開けるといかにも事後です、という色気ダダ洩れの王子がそこに立っていた。


「ちょっと、いい?」
「は、はい!どうぞ!…お兄ちゃんは?」
「今は眠ってるよ。いきすぎちゃってそのまま」
「ほ、ほぅ」
「俺は別にいいんだけど、樹はゆかちゃんにバレたって知ったらこの世の終わりみたいな状態になるだろうからね。
この事は内緒にしてくれるかな?」
「もっ、もちろんです!!!」
「良かった。ありがとう」


にっこり甘く微笑まれた。
うっ!事後の色気とその笑顔は目に毒ですっ。


「あ、あのぅ…」
「ん?」
「ま、勝君も…?」
「あぁ。聞いちゃってたか。そう、勝もなんだよ。ゆかちゃん、鼻息荒くなってるよ?」
「はっ!すみませんっ」
「もしかしてゆかちゃんて腐女子?」
「えっ?!」
「それ…」


私の後ろを指さしてニコリと笑った。
振り向くと、開けたままのノートパソコンと、直前まで書いていたガッツリな濡れ場のシーンが。


「ひゃ、ひゃぁぁ~~!」


慌ててノートパソコンを閉じる。


「み、見…」
「見た」


にっこり。

あぁぁ…王子スマイルが腹黒スマイルに見えてきた。


「こ、この事は内緒に…」
「もちろん。どう見てもさっきの俺らが元ネタっぽかったけどね?」
「ご、ごめんなさぃぃいい」
「ふふふ。いいよ。俺らの事見守ってくれると嬉しいんだけどな」
「はいっ!それはもうっ!!!全力でっ!」
「ふふ。ありがとう」


部屋を出ていこうとした王子が「あ。そうだ」と言って振り向いた。


「これから勝が来るんだよね。ゆりちゃんにバレたって事を伝えるけど…あいつ、絶対我慢できないと思うんだよ」
「そ、それは…まさか…」
「うん。絶対に樹を隅々まで美味しく頂く」
「ひょーーー!」
「嫌かもしれないけ…」
「いいえ!ぜんっぜん!これっぽっちも!!!」


食い気味に言うと、王子はびっくりして目をぱちりとさせた後、にこりと笑った。


「じゃあ、遠慮なく」


そう言って部屋を出て行ったけど…遠慮なく??
それって3…P…
バフンとベッドに飛び込んで足をバタバタさせて悶えた。
お兄ちゃん、私、お兄ちゃんの妹で本当に良かった!!!


そのあと、勝君が家に来てお兄ちゃんの部屋に行った。
期待で心臓がどうにかなりそうだった。
そっと自分の部屋の扉を開けると、ベッドの軋みとお兄ちゃんの嬌声が明瞭に聞こえてきた。
非常にはしたないけれど、じっくり堪能させてもらった。
妹に了承を得たとはいえ、年頃の女子が同じ階にいるのにエッチをするのだ。
これくらは許してほしい。


兄は、言葉攻めが非常にお好みらしい。
2人が卑猥な言葉で煽れば煽るほど、イイ声で啼くのだ。
我が兄ながらエロすぎである。ご馳走様。
最近、なんか色気が出てきたなと思ってたけど、これが原因だったのねぇ。
イケメン2人に愛されまくってるとか誰の話やねん!

我が兄の話や!!!

意味不明な1人乗り突っ込みをしてしまうくらい、錯乱した。



しばらく時間がたって、お兄ちゃんの部屋から人が出てくる気配がした。
どうやら皆で階下に行くようだ。
部屋を通り過ぎたのを見計らって扉を薄く開けて覗くと、勝君がバスタオルに包まれたお兄ちゃんをお姫様抱っこして運んでいる。


「樹~。ぼーっとして可愛いなぁ。お風呂で綺麗にしような」
「たくさん出しちゃったからねぇ。俺達の精液まみれだからな」


合間合間にリップ音が何度も聞こえてくる。
おいおい。どんだけ溺愛してんだよ。
お兄ちゃんの声は一切聞こえてこないから、朦朧としてるんだろう。

…ごっつぁんでっす!


それからしばらくしてご飯を食べようとリビングに行くと、3人がソファーに座っているのはいいんだけど、何故に兄を膝に乗せてるかなぁ!勝くんっっ!もう、腐った乙女の心が反応しまくるやないかい!


気にしないふりしてがっつり横目で堪能する。二人は姫(兄)を親鳥よろしく甲斐甲斐しくお世話を焼いている。


「樹。何か飲む?それとも食べる?」
「水」
「はい…本当は飲ませてあげたいんだけど」


えっ?!
王子!それってまさか口移しでつか!


「あぁ樹。まーた口の周り汚して。お前は子供かっ!」
「うるせぇ…」


勝くんがだらしない笑顔で口周りを拭いてあげている。普段なら嫌がるお兄ちゃんはされるがままだ。妹がいるのに膝に乗せられたまま。あれは完全に頭が回ってないな。

気を抜くとニヤニヤしそうな口元をぎゅっと引き締めて努めて何でもない風を装う。
心のカメラでは連写しまくって、バックアップも取っている。

はぁ、最高。


私が背を向けていると、時おりリップ音が聞こえてくる。お願いです!見せて下さいッッ!




「あら。もう帰るの?」
「はい。俺らお暇しますね。今日は夕飯までご馳走になってありがとうございました」
「いいえぇ。あら?樹は?」


お母さんの問いに思わず私がびくつく。


「あー…樹なら寝てます。なんか、疲れたみたいで。寝かせてあげて下さい」


苦笑しながら答えた勝くんは、さっきまでデレデレだらしない笑顔だった人と同一人物とは思えないほどイケメンだ。


「あの子ったら、もう。来てくれた友達のお見送りもしないで。2人に甘えすぎよねぇ」


お母さん、お母さん。お兄ちゃんを潰した当事者は目の前ですよ!
ため息をつきたいのはお兄ちゃんですよ!


「いや。いいんですよ。樹には存分に甘えてもらって。
俺らそれが嬉しいんで(これからもずっぶずぶに甘やかします)」
「そそ。気にしないでください。樹はあれでいいんです。
俺らだけに見せる顔なんで(俺らだけの樹なんで)」
「2人とも優しすぎるわよぉ。あんまりあの子を甘やかさないでね?調子に乗っちゃうから」
「「いやいや。そんな樹が好きなんで(逃がす気は1ミリもないんで)」」
「あらまぁ」


額面通りに受け取って、コロコロと笑うお母さんだけど、
私にはしっかりと副音声で伝わっている。
2人と目があって、にっこり微笑まれた。

(ネタは提供してあげるから、これからもよろしくね?)

声には出さないけど、しっかりと伝わりましたよ!
こちらこそ、不束な兄ですが今後とも(ネタ提供共々)よろしくお願いしますね!
そんな気持ちを込めて、にっこりと笑い返した。
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