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第一章
49.まだ思い出には出来ない(番外編⑨)
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異世界に召喚された時は、投げ出されたが今回はそのまま周りの景色が変わった。
パチパチと瞬きをして周りを見渡す。
「学校だ…」
教室の自分の机の横に立っていた。
「アディーロ…」
自分は戻ってきたのか。最後に見たアディーロの目が脳裏に焼き付いて離れない。
目の前でいなくなってしまい、アディーロの気持ちを考えると胸を掻きむしりたくなるような痛みが走った。
充分な心構えができずに戻ってきてしまって、心にぽっかりと空洞が開いたのは自分も同じだ。だからこそ、彼の事を慮ってしまう。
「あでぃー…」
唇から零れ落ちた言葉と一緒に、涙もぽろりと落ちた。
体にはまだアディーロとした感覚が残っているのに。
胸元を触ると、アディーロからもらったネックレスはついていた。
ぎゅうと握りしめて震える吐息を出す。
「良かった。ちゃんと持ってこれたんだ」
服を見ると、神殿扱いだったから服装も白い膝丈のワンピースみたいな恰好のままだった。これで外を歩くとギョッとされるだろうなとふっと笑う。
美鈴は、無事に戻れたんだろうか。それも心配だ。
確か雅樹の幼馴染だと言っていたから、雅樹に聞けば美鈴の居所も分かるだろう。
自分が異世界に行っていた間、こちらではどのような扱いになってたんだろうか。
失踪者になっていたら面倒な事になるなぁとため息をつく。
日常の喧騒に紛れるうちに、アディーロの事も思い出になっていくんだろうか。
思い出に、できるんだろうか。
結論からいって、樹は失踪者扱いになっていた。
あの日、校舎から出ようとした樹を見咎めた教師が泡を食って駆け寄ってきて、
あれよあれよと各所への連絡がいった。
警察に色々聞かれたけど、馬鹿正直に異世界に召喚されてそこの国の王様とセックス三昧でした、なんて言えるはずがない。
だから「なーんにも覚えてません」という体でゴリ押しした。
着ていた服からどこかに監禁されていたのだろうと結論づけられた。
10代の家出とも思われてもおかしくはなかったけど、保護された時の樹の様子からそう判断されたようだった。
樹が失踪していたのは約3週間ほど。
異世界では数ヶ月いたような覚えがあるが、それも体感でしかないから分からない。
連日の調書という名の取り調べを受け、病院の診察やらなんやらで気が付けば1週間経っていて、その間は雅樹たちとも会っていなかった。
と、いうよりも会う気になれなかったというのが本音だ。
まだ、気持ちの整理がついてなかったのだ。
ラインも電話も全部無視。
3人には申し訳なかったけど、どうしても無理だった。
自分の中の禊が必要だったのだ。
「樹……!」
そんなこんなで雅樹と勝と会えたのは実に1ヶ月ちょっとぶりだった。
久しぶりに会った彼らは愛情と喜びを隠そうともせず、樹をぎゅうぎゅうに抱きしめた。
「樹!良かった!もう、生きた心地がしなかった…」
「お前ともう二度と会えないかもしれないと思って怖かった」
2人が男泣きしたのを初めて見た。
あぁこんなにも心配をかけていたのだなぁとちょっとだけ罪悪感を持った。
「「樹、おかえり」」
泣きながら全身にキスの雨を降らす彼らの気持ちに、少しずつ底辺に潜っていた気持ちが浮上していく。
「樹、これは?」
シャツのボタンを開けていた手が止まった。
樹の首に見慣れないネックレスを見つけた雅樹が訝しげに聞いた。
「これは…もらったんだ」
「誰に?こんなのもらうような人がいたの?」
「お洒落用って感じのじゃねーよなぁ、これ」
2人は目の前で樹がいなくなったから、どこぞへいざなわれた事を知っている。
「これは…なんというか探知機?」
「「探知機??」」
「おう。俺の居場所が分かるようになってる、GPS的なやつ」
「え。なにそのヤンデレ的な道具…うらや…じゃなくて、そんなの必要な理由があったの?」
「あー、まぁ。実際にこれで助けられた事もあったし、有用だよ。
…今となっちゃ意味をなさないけどな」
「なのにまだ着けてるのか?」
樹の事になるとやたらと粘着気質で嫉妬深い奴らだ。
帰ってきたのにこれを着け続けている理由は勘づいているだろう。
だから、殊更あかるく答える。
「そ!向こうで好きな奴にもらったんだ~」
「「はぁ?」」
「だから、ごめんな……しばらくは着けちゃうかも」
2人は複雑そうな顔をしていたけど、俺の顔を見て渋々頷いてくれた。
「色々と根掘り葉掘り聞きたいけど、いや聞くけど!
樹が落ち着いたら全部教えろよな?」
「おう。ありがとう、勝」
「はぁ、取り敢えずは樹が帰ってきてくれたから良しとするか。最悪は樹を永遠に失ってたかもしれないわけだし。――ホント、おかえり」
「ただいま!」
今は何も聞かずにいてくれる親友たちに感謝をしながらぎゅっと抱きついた。
◇◇◇◇◇◇
「そうだ!雅樹に聞きたいことがあったんだ!!!美鈴っていう幼馴染いるだろ?」
「うん?いるけど、なんで知ってるの?」
その時、遠くから誰かが叫んでいる声が切れ切れに聞こえてきた。
「ん?なんだありゃ??」
勝がぐるりと首を回して声のする方を見て怪訝そうな声を出した。
「たーーつーーーきーーーくーーーーーーん!!!!!!」
声がどんどん近づいてきて、黒い塊が弾丸のように俺に抱き着いてきて、
勢いのままにその塊と後ろに倒れーーーーそうになって、雅樹に抱きとめられた。
「美鈴?!」
「樹くんっ!!!やっと会えた!!!」
ぐりぐりと顔に頬を犬のように擦りつけられる。
顔を離した美鈴がキラキラ輝く笑顔と瞳で俺を見た。
「っっっ可愛い!!樹くん!かっわいい!!」
「みっ、みれ…」
ちゅっちゅちゅっちゅ顔中にキスをされる。
「ちょっと、みぃ何してんの。樹から離れて」
「マサ君??」
勝が美鈴の脇に手を入れて持ち上げてくれてやっとキスの豪雨から抜け出せた。
猫の子のようにブラーンとされている。
やっと周りの状況を確認した美鈴が俺の後ろにいる雅樹を見てキョトンとしている。
「樹?説明してくれるよね?」
「異世界でさ、美鈴も召喚されてたんだよ!でも、俺は強制的に帰されちゃって、美鈴を残してきちゃったから気になってた」
「はぁぁ~~~?!みぃが異世界に??」
あ。
なんか、その呼び名チクッとした。幼馴染だって分かってるけど。。
「あぁ。そっか。樹くんとマサ君は親友だって言ってたね」
「俺だけ先に帰って残しちゃってごめんな」
「謝らないでよ!あれは不可抗力だって!あぁ~もう二度と会えないかと思った。
樹くんにまた会えて嬉しい♡」
「美鈴も戻ってこられたんだな。安心した。あれからどうなった?」
パチパチと瞬きをして周りを見渡す。
「学校だ…」
教室の自分の机の横に立っていた。
「アディーロ…」
自分は戻ってきたのか。最後に見たアディーロの目が脳裏に焼き付いて離れない。
目の前でいなくなってしまい、アディーロの気持ちを考えると胸を掻きむしりたくなるような痛みが走った。
充分な心構えができずに戻ってきてしまって、心にぽっかりと空洞が開いたのは自分も同じだ。だからこそ、彼の事を慮ってしまう。
「あでぃー…」
唇から零れ落ちた言葉と一緒に、涙もぽろりと落ちた。
体にはまだアディーロとした感覚が残っているのに。
胸元を触ると、アディーロからもらったネックレスはついていた。
ぎゅうと握りしめて震える吐息を出す。
「良かった。ちゃんと持ってこれたんだ」
服を見ると、神殿扱いだったから服装も白い膝丈のワンピースみたいな恰好のままだった。これで外を歩くとギョッとされるだろうなとふっと笑う。
美鈴は、無事に戻れたんだろうか。それも心配だ。
確か雅樹の幼馴染だと言っていたから、雅樹に聞けば美鈴の居所も分かるだろう。
自分が異世界に行っていた間、こちらではどのような扱いになってたんだろうか。
失踪者になっていたら面倒な事になるなぁとため息をつく。
日常の喧騒に紛れるうちに、アディーロの事も思い出になっていくんだろうか。
思い出に、できるんだろうか。
結論からいって、樹は失踪者扱いになっていた。
あの日、校舎から出ようとした樹を見咎めた教師が泡を食って駆け寄ってきて、
あれよあれよと各所への連絡がいった。
警察に色々聞かれたけど、馬鹿正直に異世界に召喚されてそこの国の王様とセックス三昧でした、なんて言えるはずがない。
だから「なーんにも覚えてません」という体でゴリ押しした。
着ていた服からどこかに監禁されていたのだろうと結論づけられた。
10代の家出とも思われてもおかしくはなかったけど、保護された時の樹の様子からそう判断されたようだった。
樹が失踪していたのは約3週間ほど。
異世界では数ヶ月いたような覚えがあるが、それも体感でしかないから分からない。
連日の調書という名の取り調べを受け、病院の診察やらなんやらで気が付けば1週間経っていて、その間は雅樹たちとも会っていなかった。
と、いうよりも会う気になれなかったというのが本音だ。
まだ、気持ちの整理がついてなかったのだ。
ラインも電話も全部無視。
3人には申し訳なかったけど、どうしても無理だった。
自分の中の禊が必要だったのだ。
「樹……!」
そんなこんなで雅樹と勝と会えたのは実に1ヶ月ちょっとぶりだった。
久しぶりに会った彼らは愛情と喜びを隠そうともせず、樹をぎゅうぎゅうに抱きしめた。
「樹!良かった!もう、生きた心地がしなかった…」
「お前ともう二度と会えないかもしれないと思って怖かった」
2人が男泣きしたのを初めて見た。
あぁこんなにも心配をかけていたのだなぁとちょっとだけ罪悪感を持った。
「「樹、おかえり」」
泣きながら全身にキスの雨を降らす彼らの気持ちに、少しずつ底辺に潜っていた気持ちが浮上していく。
「樹、これは?」
シャツのボタンを開けていた手が止まった。
樹の首に見慣れないネックレスを見つけた雅樹が訝しげに聞いた。
「これは…もらったんだ」
「誰に?こんなのもらうような人がいたの?」
「お洒落用って感じのじゃねーよなぁ、これ」
2人は目の前で樹がいなくなったから、どこぞへいざなわれた事を知っている。
「これは…なんというか探知機?」
「「探知機??」」
「おう。俺の居場所が分かるようになってる、GPS的なやつ」
「え。なにそのヤンデレ的な道具…うらや…じゃなくて、そんなの必要な理由があったの?」
「あー、まぁ。実際にこれで助けられた事もあったし、有用だよ。
…今となっちゃ意味をなさないけどな」
「なのにまだ着けてるのか?」
樹の事になるとやたらと粘着気質で嫉妬深い奴らだ。
帰ってきたのにこれを着け続けている理由は勘づいているだろう。
だから、殊更あかるく答える。
「そ!向こうで好きな奴にもらったんだ~」
「「はぁ?」」
「だから、ごめんな……しばらくは着けちゃうかも」
2人は複雑そうな顔をしていたけど、俺の顔を見て渋々頷いてくれた。
「色々と根掘り葉掘り聞きたいけど、いや聞くけど!
樹が落ち着いたら全部教えろよな?」
「おう。ありがとう、勝」
「はぁ、取り敢えずは樹が帰ってきてくれたから良しとするか。最悪は樹を永遠に失ってたかもしれないわけだし。――ホント、おかえり」
「ただいま!」
今は何も聞かずにいてくれる親友たちに感謝をしながらぎゅっと抱きついた。
◇◇◇◇◇◇
「そうだ!雅樹に聞きたいことがあったんだ!!!美鈴っていう幼馴染いるだろ?」
「うん?いるけど、なんで知ってるの?」
その時、遠くから誰かが叫んでいる声が切れ切れに聞こえてきた。
「ん?なんだありゃ??」
勝がぐるりと首を回して声のする方を見て怪訝そうな声を出した。
「たーーつーーーきーーーくーーーーーーん!!!!!!」
声がどんどん近づいてきて、黒い塊が弾丸のように俺に抱き着いてきて、
勢いのままにその塊と後ろに倒れーーーーそうになって、雅樹に抱きとめられた。
「美鈴?!」
「樹くんっ!!!やっと会えた!!!」
ぐりぐりと顔に頬を犬のように擦りつけられる。
顔を離した美鈴がキラキラ輝く笑顔と瞳で俺を見た。
「っっっ可愛い!!樹くん!かっわいい!!」
「みっ、みれ…」
ちゅっちゅちゅっちゅ顔中にキスをされる。
「ちょっと、みぃ何してんの。樹から離れて」
「マサ君??」
勝が美鈴の脇に手を入れて持ち上げてくれてやっとキスの豪雨から抜け出せた。
猫の子のようにブラーンとされている。
やっと周りの状況を確認した美鈴が俺の後ろにいる雅樹を見てキョトンとしている。
「樹?説明してくれるよね?」
「異世界でさ、美鈴も召喚されてたんだよ!でも、俺は強制的に帰されちゃって、美鈴を残してきちゃったから気になってた」
「はぁぁ~~~?!みぃが異世界に??」
あ。
なんか、その呼び名チクッとした。幼馴染だって分かってるけど。。
「あぁ。そっか。樹くんとマサ君は親友だって言ってたね」
「俺だけ先に帰って残しちゃってごめんな」
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