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第一章
53.志木の元カノと俺の気持ち
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「じゃーな、樹ちゃん。気ぃつけて帰れよ」
「おう。志木もな!」
塾が終わって、一緒に駅まで帰る途中に数分だけ公園に引っ張りこまれて
腰が砕けそうなキスされて、駅に向かう。その時も好きだと何度も囁かれる。
志木は、その気持ちに対して俺の答えを求めない。
どんだけイケメンなんだよ。
そんな志木に対して、少しずつ気持ちが育っていくのが分かる。
少しの浮かれた気持ちと、罪悪感。
でも、この罪悪感は仕方ない。
「ねぇ…」
改札を通った所で声をかけられて振り向くと、三条の制服を着た女子が立っていた。
「なに?3分の電車乗らないといけないんだけど」
「あのさ、志木とどういう関係?」
「えっ?」
「私、志木の彼女。最近すごく冷たくて。鳳凰の男子にお熱だって聞いてさ」
「は?え?だって、志木は別れたって…」
「別れてないっ!!!!!」
血の気が下がってキーンと耳鳴りがする。息苦しい。
「ていうか!さっき見たんだけど!!!あんた、志木とキスしてたでしょ!駅まで手ぇ繋いでさ」
「…」
「あんたホモ?ノンケの志木に手ぇ出してんじゃないよ。マジでキモイ」
悪意のこもった言葉が胸にグサグサ刺さる。
「志木はねぇ、カッコいい漢なの!あんたみたいな生っちろくてひょろひょろしてパッとしないホモといちゃついているとか、あいつの評判に傷が付くのよ!」
い、痛い…なかなか抉ってくる。
「ねぇ、別れてくんない?」
「は?」
「別れてよ。お願い。あいつの評判を落とさないでよ」
「い、いや別に付き合ってるとかじゃないし」
「はぁぁ?付き合ってないのにキスしていちゃついてんの?」
「うぅぅ」
「まぁ、私と付き合う前は色んな女としてたけどさぁ」
「やっぱモテるよなぁ、志木って」
「とーぜんでしょ!」
鼻息荒くドヤ顔で言うその女子に思わず笑ってしまった。
「志木の事、大好きで自慢なんだな」
「えっ?あ、ま、まぁ…うん」
照れて顔を真っ赤にしているその子を見ていると、なんだか憎み切れない。
言葉の刃でグッサグサに刺されたけど!
「うーん…でも、ごめん。志木と離れるって今は考えられない」
「…」
ちょっと前までの俺だったら、さっさと手を離してたと思う。
だけど、今はもう俺の中で志木の存在は大きくなってきてて、そう簡単にはいさよなら、
とは言えない状況になっている。
フラれちゃったら仕方ないと思ってるけど…。
だけど…
「でも!もし本当に志木がまだ別れてないっていうんだったら、俺は志木の手を離すよ」
それだけは、確かだ。
「だからごめんな。志木の口からちゃんと話を聞いてから決める」
「うっ…」
「う?」
「うえぇぇぇーーーーーん!!!」
突然大声で泣きだしてビックリする。
ちらと時計を見ると、電車は行ってしまっていた。しゃーない。
「な、なぁ…泣くなよ」
オロオロする俺とその子に他の客の好奇心を隠そうともしない目線が集まる。
「しっ、志木とはっ ひっく わ、私のっ 一目ぼれっで…ぐすっ」
「うんうん」
「ら、らぶらぶだった ときっはっ…ひっく 志木、デロあまっでっ」
「うんうん」
俺はホームの端っこにあるベンチに座って彼女の話を聞く事にした。
自販機で飲み物を買って彼女にも渡す。
彼女から聞かされる志木の話は、知らない志木が知れると共に、胸にずくずくしたものを生んだ。
彼女に尽くして甘やかしている話。思った以上にダメージがあった。
シュンとなったその子は、最初の威勢のよさはどこへやら、今は志木に恋する等身大の女の子でしかなかった。しょげているその子を見ていると、なんだか妹のゆりが重なって思わず頭をよしよしと撫でてしまった。
「な、なに」
「あ。勝手に触ってごめん。思わず。なんかうちの妹思い出しちゃって」
へへへと笑うと、毒気を抜かれた顔をした。
「はぁ。もう、なんか調子狂うなぁ」
「ごめん」
「…ごめん。さっきは言い過ぎた。ひょろいとか、キモイとか冴えないとかチビとか」
なんか増えてるし。
「いやいいよ。本当の事だし」
「あと、ごめん。さっき嘘ついた。もう別れてる」
「そっか…」
「好きな子が出来たって言われてさ。悔しくて。私、カッとなると考えなしに口に出しちゃうクセがあって。こないだ最後の信頼まで踏みにじっちゃって…メールしても返信してくれないし、口もきいてくれない…だから、塾終わるの待っててさ…それで」
「あぁ…」
俺らがキスしているのを見たってわけね。
「まさか、好きな相手が本当に男だったなんて。キスしてる所みて頭に血が上っちゃって。
志木のあんたを見る目がさ、もう完全に惚れ込んでて。ごめん。八つ当たりした」
「うん。仕方ないよ」
その子ははぁぁ~と深いため息をついて、俺を見た。
「あんたと話してて、敵わないと思っちゃった。傷つける事言ってごめんね。まだ、志木の事諦められない気持ちはあるけど…いい加減前向くわ!志木をよろしくね!」
「うん」
泣きすぎてメイクが崩れて酷い顔になっているけど、キラキラして可愛く見えた。
「君は可愛いから、すぐにいい人が見つかるよ…って俺が言うのもなんだけど」
「本当だよ!でも、ありがとう。ところでさ…」
急に声を潜めたから体を彼女に近づけた。
「志木ってさ、絶倫じゃん?そこんとこどうなの?」
「ぶっふぉお!」
お茶が鼻から飛び出した。いてぇ。
「あ、その反応。もうヤったでしょ?」
「ゲホゲホッ!ちょ、ちょっと」
「いいじゃーん。お互い知ってるわけだし!ていうか、男の場合どうしてんだろって思ってさ。興味ある」
確かに、志木は性欲が強いと思う。抜かずの3発とか初めて経験した。
その時の事を思い出して、下半身がズクンと反応して慌てて振り払った。
「う、ん、ま…そ、そうだな」
「ひゃーーーー!やっぱ男相手でも凄いんだ。
けっこうしんどくない?私はしんどかった…求められるのは嬉しいけど」
「あー…うん」
腰がったがたになったもんな。
「さーて、帰ろうかな!話聞いてくれてありがとうね。さっきは本当、ごめんなさい。志木と仲良くやってね!」
ぺこりと頭を下げて謝ってくれる。顔を上げた彼女は、明るい表情はしてるけどまだちょっと切なそうな顔で笑った。
彼女の後姿を見送りながら、早く覚悟を決めなきゃなと思った。
「おう。志木もな!」
塾が終わって、一緒に駅まで帰る途中に数分だけ公園に引っ張りこまれて
腰が砕けそうなキスされて、駅に向かう。その時も好きだと何度も囁かれる。
志木は、その気持ちに対して俺の答えを求めない。
どんだけイケメンなんだよ。
そんな志木に対して、少しずつ気持ちが育っていくのが分かる。
少しの浮かれた気持ちと、罪悪感。
でも、この罪悪感は仕方ない。
「ねぇ…」
改札を通った所で声をかけられて振り向くと、三条の制服を着た女子が立っていた。
「なに?3分の電車乗らないといけないんだけど」
「あのさ、志木とどういう関係?」
「えっ?」
「私、志木の彼女。最近すごく冷たくて。鳳凰の男子にお熱だって聞いてさ」
「は?え?だって、志木は別れたって…」
「別れてないっ!!!!!」
血の気が下がってキーンと耳鳴りがする。息苦しい。
「ていうか!さっき見たんだけど!!!あんた、志木とキスしてたでしょ!駅まで手ぇ繋いでさ」
「…」
「あんたホモ?ノンケの志木に手ぇ出してんじゃないよ。マジでキモイ」
悪意のこもった言葉が胸にグサグサ刺さる。
「志木はねぇ、カッコいい漢なの!あんたみたいな生っちろくてひょろひょろしてパッとしないホモといちゃついているとか、あいつの評判に傷が付くのよ!」
い、痛い…なかなか抉ってくる。
「ねぇ、別れてくんない?」
「は?」
「別れてよ。お願い。あいつの評判を落とさないでよ」
「い、いや別に付き合ってるとかじゃないし」
「はぁぁ?付き合ってないのにキスしていちゃついてんの?」
「うぅぅ」
「まぁ、私と付き合う前は色んな女としてたけどさぁ」
「やっぱモテるよなぁ、志木って」
「とーぜんでしょ!」
鼻息荒くドヤ顔で言うその女子に思わず笑ってしまった。
「志木の事、大好きで自慢なんだな」
「えっ?あ、ま、まぁ…うん」
照れて顔を真っ赤にしているその子を見ていると、なんだか憎み切れない。
言葉の刃でグッサグサに刺されたけど!
「うーん…でも、ごめん。志木と離れるって今は考えられない」
「…」
ちょっと前までの俺だったら、さっさと手を離してたと思う。
だけど、今はもう俺の中で志木の存在は大きくなってきてて、そう簡単にはいさよなら、
とは言えない状況になっている。
フラれちゃったら仕方ないと思ってるけど…。
だけど…
「でも!もし本当に志木がまだ別れてないっていうんだったら、俺は志木の手を離すよ」
それだけは、確かだ。
「だからごめんな。志木の口からちゃんと話を聞いてから決める」
「うっ…」
「う?」
「うえぇぇぇーーーーーん!!!」
突然大声で泣きだしてビックリする。
ちらと時計を見ると、電車は行ってしまっていた。しゃーない。
「な、なぁ…泣くなよ」
オロオロする俺とその子に他の客の好奇心を隠そうともしない目線が集まる。
「しっ、志木とはっ ひっく わ、私のっ 一目ぼれっで…ぐすっ」
「うんうん」
「ら、らぶらぶだった ときっはっ…ひっく 志木、デロあまっでっ」
「うんうん」
俺はホームの端っこにあるベンチに座って彼女の話を聞く事にした。
自販機で飲み物を買って彼女にも渡す。
彼女から聞かされる志木の話は、知らない志木が知れると共に、胸にずくずくしたものを生んだ。
彼女に尽くして甘やかしている話。思った以上にダメージがあった。
シュンとなったその子は、最初の威勢のよさはどこへやら、今は志木に恋する等身大の女の子でしかなかった。しょげているその子を見ていると、なんだか妹のゆりが重なって思わず頭をよしよしと撫でてしまった。
「な、なに」
「あ。勝手に触ってごめん。思わず。なんかうちの妹思い出しちゃって」
へへへと笑うと、毒気を抜かれた顔をした。
「はぁ。もう、なんか調子狂うなぁ」
「ごめん」
「…ごめん。さっきは言い過ぎた。ひょろいとか、キモイとか冴えないとかチビとか」
なんか増えてるし。
「いやいいよ。本当の事だし」
「あと、ごめん。さっき嘘ついた。もう別れてる」
「そっか…」
「好きな子が出来たって言われてさ。悔しくて。私、カッとなると考えなしに口に出しちゃうクセがあって。こないだ最後の信頼まで踏みにじっちゃって…メールしても返信してくれないし、口もきいてくれない…だから、塾終わるの待っててさ…それで」
「あぁ…」
俺らがキスしているのを見たってわけね。
「まさか、好きな相手が本当に男だったなんて。キスしてる所みて頭に血が上っちゃって。
志木のあんたを見る目がさ、もう完全に惚れ込んでて。ごめん。八つ当たりした」
「うん。仕方ないよ」
その子ははぁぁ~と深いため息をついて、俺を見た。
「あんたと話してて、敵わないと思っちゃった。傷つける事言ってごめんね。まだ、志木の事諦められない気持ちはあるけど…いい加減前向くわ!志木をよろしくね!」
「うん」
泣きすぎてメイクが崩れて酷い顔になっているけど、キラキラして可愛く見えた。
「君は可愛いから、すぐにいい人が見つかるよ…って俺が言うのもなんだけど」
「本当だよ!でも、ありがとう。ところでさ…」
急に声を潜めたから体を彼女に近づけた。
「志木ってさ、絶倫じゃん?そこんとこどうなの?」
「ぶっふぉお!」
お茶が鼻から飛び出した。いてぇ。
「あ、その反応。もうヤったでしょ?」
「ゲホゲホッ!ちょ、ちょっと」
「いいじゃーん。お互い知ってるわけだし!ていうか、男の場合どうしてんだろって思ってさ。興味ある」
確かに、志木は性欲が強いと思う。抜かずの3発とか初めて経験した。
その時の事を思い出して、下半身がズクンと反応して慌てて振り払った。
「う、ん、ま…そ、そうだな」
「ひゃーーーー!やっぱ男相手でも凄いんだ。
けっこうしんどくない?私はしんどかった…求められるのは嬉しいけど」
「あー…うん」
腰がったがたになったもんな。
「さーて、帰ろうかな!話聞いてくれてありがとうね。さっきは本当、ごめんなさい。志木と仲良くやってね!」
ぺこりと頭を下げて謝ってくれる。顔を上げた彼女は、明るい表情はしてるけどまだちょっと切なそうな顔で笑った。
彼女の後姿を見送りながら、早く覚悟を決めなきゃなと思った。
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