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第二章
73.絶不調の原因
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「なーにしてんの、お前ら。樹が潰れてるでしょ。ほら、どいたどいた」
「うるせー雅樹。俺は樹を補充してんだよー」
「俺も。はぁ~樹ちゃんの匂いだ…」
「はいはい。俺も補充したいんだからどいてー」
「お、俺!ちょっと用事思い出した!!」
「樹?」
雅樹の手が俺の腕を掴んだ時に思わず体がビクッとなってしまって、それを誤魔化そうと勢いよく立ち上がった。3人が怪訝な顔をしたのが分かったけど、今は雅樹に触れられたくないし、雅樹を前にして普通にしていられる自信がないからその場から逃げ出すしかなかった。
「樹!」
雅樹が呼んでるけど、声を聞いてると泣きそうだったから聞こえないふりをして教室を飛び出した。何も考えずに飛び出したから、特に目的があるわけでもないし行くあてもないから授業までの間時間をぶらいついて潰す事にした。
とにかく、今は雅樹の顔をまともに見れる自信もないし話すなんてもってのほかだ。
なんとか精神状態を立て直すまでは雅樹をさりげなく避ける事を心に決めた俺は、その後も何かと用事やらトイレやら呼び出しやらの言い訳を付けて雅樹から逃げ出した。
相変わらず委員会の時の雅樹は俺を避け、俺はそれ以外で避けるから俺らの接点はゼロになった。
そうなると、今度は雅樹と接する事が怖くなってしまってその怖さから逃げる為に逃げるという悪循環に陥った。だけどもう、自分でもどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
「どうした。また何かあったのか」
「———別に」
例によって中庭に逃げ込んでボケッとしていたら大我が来て隣に座った。あれから俺らは何事もなかったかのようにいつも通りに接している。
「……篠田だろ」
「!」
ぴくっと体が反応したから大我にはバレバレだろう。
「気にするな。期間限定だ」
「———期間限定、ね」
「樹?」
「期間限定って言うけど、心が離れてれば期間もクソもねぇんだよ」
情けないことに、最後は声が震えてしまった。
「俺は———俺の判断では何ひとつ言う事は出来ないが、大丈夫だ。篠田はお前の事を大切に思ってるよ」
カッと頭に血が上ったのが分かった。
「は?お前に何が分かるんだよ!適当な事いってんなよ!」
「……」
「今まで…今までどれだけあいつが俺を大切にしてくれてたのか、離れて初めて気づいたよ。他人に想われて大切にされるって、奇跡的な事で当たり前なんかじゃないって気づいたから、色々反省してさ。何が悪かったのかなって思って歩み寄ろうとしたけどその手を振り払われたらどうしたらいいのか分からなくなって。。
1回振り払われただけでバカみたいに動揺しちまって…そうしたらもう、また振り払われるのが怖くなって逃げちまって。。
俺、こんなに臆病だったんだって初めて知った。
———ごめん、大我。八つ当たりした。せっかく慰めてくれたのに、ごめん」
「気にしてない。泣くな。大切な奴に冷たくされたら怖くなって当然だ」
気が付いたら俺はボダボダと涙を流していた。大我が指で涙を拭ってくれるけど全然追いつかなくて、俺は思わず小さく噴出してしまった。
「———篠田が羨ましい」
「へ?」
「樹にそんなに想われてる篠田が羨ましい」
「えぇ…」
「本当は、傷心のお前に付け込みたい。けど、それはフェアじゃないからな。さっきも言ったが俺の口からは何も言うことは出来ないが、大丈夫だ。あいつはお前の事を大切に思ってるよ」
「な、なんでそんな事言えるんだよ…何を知ってるんだよ…でも、ありがとな。慰めでも嬉しいわ」
「慰めとかそんなんじゃないが…。美鈴もお前と友達になりたくてうずうずしてる」
「そうか?俺も友達にはなりたいと思ってるんだ。だけど、今はちょっと嫉妬してて…そうだな。落ち着いたら声かけてみようかな」
「そうしてくれ。喜ぶ」
「大我も———朱雀が好きなんだな」
「はぁ?違う。俺らはそんなんじゃない」
「えー。だって甲斐甲斐しく世話してんじゃーん」
「それは……」
「それにぃ?朱雀を見る目がすっげー優しい」
「う、うーん。それは…」
「まぁまぁ、照れんなって!仲良きことは美しきかな、ってな!」
イヒヒと笑いながらからかうように言うと、何かを言いかけたあと、はぁとため息をついて言葉を飲み込んだ。
「とにかく、俺は確かに美鈴を大切に思っているがそれはあくまで友人という意味でだ」
「おうおう。分かってるぜ」
「少しは元気になったか。じゃあ、戻るか?」
「うん。大我、ありがとな」
「あぁ」
俺の頭をくしゃりと撫でたあと、またぐしゃぐしゃにしやがった!
「お前っ!!もーーー」
「ははは。樹の髪の毛はふわふわ柔らかくて、触り心地がいいな。ずっと撫でていたくなる」
「その割にはぐっしゃぐしゃにするじゃん」
「反応が面白いからな」
「なんだよそれ」
じゃれながら委員会の会場に戻った。大我のおかげでさっきまで塞いでいた気持ちが軽くなった。いい加減、足引っ張るのやめないとな。お礼は仕事で返そう。そう、誓った。
「雅樹くぅ~ん♡」
室内に甘い声で雅樹を呼ぶ声が響いて、思わず反応してしまう。
委員会が始まってから雅樹に纏わりついている宝生 揚羽という男だ。
160センチもない小柄で華奢。キラキラネームに見合った、女子っぽく可愛らしい見た目だけど妖艶な色気がある。こいつが雅樹への思慕を隠しもせずベッタベタにくっ付いているんだ!
最初は朱雀にばっかり目がいってて気づかなかったし、宝生も初めは遠慮していたのかアピールがささやかすぎて気づかなかった。が、ここにきて一気にアピールしてきた。
委員会ももうすぐ終わりだからだろうけど。
マジで露骨に、物理的に朱雀との間に割り込んでくる。たまに朱雀が弾き飛ばされてるのを見る。宝生の方が少し小柄なのにすげぇなと驚いてガン見してしまう。
まぁ、すかさず雅樹が朱雀をかばって抱き起こすんだけどな。抱き起こすんだけどな!
腹が立つ、大切な事なので2回いいましたっ!
別に抱き起さなくてもいいじゃんかっ!
とはいえ、朱雀も物理的な意味で心配だから仕方ないんだけどさ。
「勝くん♡」
「志木…♡」
うがぁぁああああああ!!!!!
どいつもこいつも俺の恋人に気安くベタベタ触りやがってぇぇえええ!!!
勝にベタベタしてるのは佐久間ってやつ。こいつも女子っぽい見た目で小さくて可愛らしい。勝の腕に絡まりついてじぃっと勝を見つめる目はハートが飛んでいる。
志木に秋波を飛ばしてるのは北河。こいつは170ちょっとかな?足が長くてスラリとスタイルが良い美人。艶やかな黒髪と涙ほくろがエロい。皆、俺にはない魅力を持っていて、かつ積極的にアピールしているから正直見ててハラハラする。
最近の俺の調子の悪さはこいつらのせいでもある。
幸いにして、勝と志木は全然相手にしてなくて(スマートに対応しているから相手にはあまり気づかれてないが)俺への愛情も変わらないからなんとか保てている。
これで2人も雅樹みたいになってたら、今ごろ俺、本当に心が折れてる。
「うるせー雅樹。俺は樹を補充してんだよー」
「俺も。はぁ~樹ちゃんの匂いだ…」
「はいはい。俺も補充したいんだからどいてー」
「お、俺!ちょっと用事思い出した!!」
「樹?」
雅樹の手が俺の腕を掴んだ時に思わず体がビクッとなってしまって、それを誤魔化そうと勢いよく立ち上がった。3人が怪訝な顔をしたのが分かったけど、今は雅樹に触れられたくないし、雅樹を前にして普通にしていられる自信がないからその場から逃げ出すしかなかった。
「樹!」
雅樹が呼んでるけど、声を聞いてると泣きそうだったから聞こえないふりをして教室を飛び出した。何も考えずに飛び出したから、特に目的があるわけでもないし行くあてもないから授業までの間時間をぶらいついて潰す事にした。
とにかく、今は雅樹の顔をまともに見れる自信もないし話すなんてもってのほかだ。
なんとか精神状態を立て直すまでは雅樹をさりげなく避ける事を心に決めた俺は、その後も何かと用事やらトイレやら呼び出しやらの言い訳を付けて雅樹から逃げ出した。
相変わらず委員会の時の雅樹は俺を避け、俺はそれ以外で避けるから俺らの接点はゼロになった。
そうなると、今度は雅樹と接する事が怖くなってしまってその怖さから逃げる為に逃げるという悪循環に陥った。だけどもう、自分でもどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
「どうした。また何かあったのか」
「———別に」
例によって中庭に逃げ込んでボケッとしていたら大我が来て隣に座った。あれから俺らは何事もなかったかのようにいつも通りに接している。
「……篠田だろ」
「!」
ぴくっと体が反応したから大我にはバレバレだろう。
「気にするな。期間限定だ」
「———期間限定、ね」
「樹?」
「期間限定って言うけど、心が離れてれば期間もクソもねぇんだよ」
情けないことに、最後は声が震えてしまった。
「俺は———俺の判断では何ひとつ言う事は出来ないが、大丈夫だ。篠田はお前の事を大切に思ってるよ」
カッと頭に血が上ったのが分かった。
「は?お前に何が分かるんだよ!適当な事いってんなよ!」
「……」
「今まで…今までどれだけあいつが俺を大切にしてくれてたのか、離れて初めて気づいたよ。他人に想われて大切にされるって、奇跡的な事で当たり前なんかじゃないって気づいたから、色々反省してさ。何が悪かったのかなって思って歩み寄ろうとしたけどその手を振り払われたらどうしたらいいのか分からなくなって。。
1回振り払われただけでバカみたいに動揺しちまって…そうしたらもう、また振り払われるのが怖くなって逃げちまって。。
俺、こんなに臆病だったんだって初めて知った。
———ごめん、大我。八つ当たりした。せっかく慰めてくれたのに、ごめん」
「気にしてない。泣くな。大切な奴に冷たくされたら怖くなって当然だ」
気が付いたら俺はボダボダと涙を流していた。大我が指で涙を拭ってくれるけど全然追いつかなくて、俺は思わず小さく噴出してしまった。
「———篠田が羨ましい」
「へ?」
「樹にそんなに想われてる篠田が羨ましい」
「えぇ…」
「本当は、傷心のお前に付け込みたい。けど、それはフェアじゃないからな。さっきも言ったが俺の口からは何も言うことは出来ないが、大丈夫だ。あいつはお前の事を大切に思ってるよ」
「な、なんでそんな事言えるんだよ…何を知ってるんだよ…でも、ありがとな。慰めでも嬉しいわ」
「慰めとかそんなんじゃないが…。美鈴もお前と友達になりたくてうずうずしてる」
「そうか?俺も友達にはなりたいと思ってるんだ。だけど、今はちょっと嫉妬してて…そうだな。落ち着いたら声かけてみようかな」
「そうしてくれ。喜ぶ」
「大我も———朱雀が好きなんだな」
「はぁ?違う。俺らはそんなんじゃない」
「えー。だって甲斐甲斐しく世話してんじゃーん」
「それは……」
「それにぃ?朱雀を見る目がすっげー優しい」
「う、うーん。それは…」
「まぁまぁ、照れんなって!仲良きことは美しきかな、ってな!」
イヒヒと笑いながらからかうように言うと、何かを言いかけたあと、はぁとため息をついて言葉を飲み込んだ。
「とにかく、俺は確かに美鈴を大切に思っているがそれはあくまで友人という意味でだ」
「おうおう。分かってるぜ」
「少しは元気になったか。じゃあ、戻るか?」
「うん。大我、ありがとな」
「あぁ」
俺の頭をくしゃりと撫でたあと、またぐしゃぐしゃにしやがった!
「お前っ!!もーーー」
「ははは。樹の髪の毛はふわふわ柔らかくて、触り心地がいいな。ずっと撫でていたくなる」
「その割にはぐっしゃぐしゃにするじゃん」
「反応が面白いからな」
「なんだよそれ」
じゃれながら委員会の会場に戻った。大我のおかげでさっきまで塞いでいた気持ちが軽くなった。いい加減、足引っ張るのやめないとな。お礼は仕事で返そう。そう、誓った。
「雅樹くぅ~ん♡」
室内に甘い声で雅樹を呼ぶ声が響いて、思わず反応してしまう。
委員会が始まってから雅樹に纏わりついている宝生 揚羽という男だ。
160センチもない小柄で華奢。キラキラネームに見合った、女子っぽく可愛らしい見た目だけど妖艶な色気がある。こいつが雅樹への思慕を隠しもせずベッタベタにくっ付いているんだ!
最初は朱雀にばっかり目がいってて気づかなかったし、宝生も初めは遠慮していたのかアピールがささやかすぎて気づかなかった。が、ここにきて一気にアピールしてきた。
委員会ももうすぐ終わりだからだろうけど。
マジで露骨に、物理的に朱雀との間に割り込んでくる。たまに朱雀が弾き飛ばされてるのを見る。宝生の方が少し小柄なのにすげぇなと驚いてガン見してしまう。
まぁ、すかさず雅樹が朱雀をかばって抱き起こすんだけどな。抱き起こすんだけどな!
腹が立つ、大切な事なので2回いいましたっ!
別に抱き起さなくてもいいじゃんかっ!
とはいえ、朱雀も物理的な意味で心配だから仕方ないんだけどさ。
「勝くん♡」
「志木…♡」
うがぁぁああああああ!!!!!
どいつもこいつも俺の恋人に気安くベタベタ触りやがってぇぇえええ!!!
勝にベタベタしてるのは佐久間ってやつ。こいつも女子っぽい見た目で小さくて可愛らしい。勝の腕に絡まりついてじぃっと勝を見つめる目はハートが飛んでいる。
志木に秋波を飛ばしてるのは北河。こいつは170ちょっとかな?足が長くてスラリとスタイルが良い美人。艶やかな黒髪と涙ほくろがエロい。皆、俺にはない魅力を持っていて、かつ積極的にアピールしているから正直見ててハラハラする。
最近の俺の調子の悪さはこいつらのせいでもある。
幸いにして、勝と志木は全然相手にしてなくて(スマートに対応しているから相手にはあまり気づかれてないが)俺への愛情も変わらないからなんとか保てている。
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