ハーレムという名の奴隷

長飛沙將

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第1章―出会い

どこからともなく現れる奴・続

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教室に入ると、彼ら以外のクラスメイトはすでに座っていた。そりゃ、入学初日から遅刻ギリギリとか有り得ないよな。
黒板に大きく貼り出された座席表を見て自分の席を確認する。
入学から1ヶ月程度は出席番号順に席が割り振る学校が多いが、この学校もそうらしく、廊下側の前の方から1番・2番…となっている。黒板向かって縦5列、横4列と規則的に机と椅子が並べられ、智也は窓側から数えて2列目の最後席。春花も窓側最後席となった。
「お前の隣か…」
ため息混じりに智也が呟くと、春花は口を尖した。
「もー、またそんなこと言ってぇ。本当は嬉しいんでしょ?」
  もー、またそんなこと言ってぇ。ナルシストにも程があるぞ?自分の顔鏡で見てごらん?
 「誰が嬉しがるか。幼馴染の隣とか不快でしかないぞ」
  幼馴染が隣というのは、気分的には親が隣にいるのと差程変わらない。授業中に姿勢やノートの取り方にまで干渉してくるし、気が休まる暇がない。春花は智也の心配する前に自分の心配をした方がいいと思うが。
  ちなみにラブコメではよくある幼馴染とのお付き合いだが、春花は別にして、智也にはそんな気は毛頭ない。
しばらく経つとHRの始まる合図であるチャイムが鳴り始めた。
それとともにクラスの空気が一気に緊迫していく。クラス全員が雑談に区切りを付けて口を閉じ、黒板の方へと体を向けた。それに倣って智也と春花も黒板の方に目を向ける。
スライド式のドアを開く音が教室中に響き渡る。
それと同時にある女性が入ってきた。そのまま教卓の前に立つ。
「今年このクラスの担任になった大山紀香よ、よろしくね」
窓から入り込む朝日に照らされる顔に浮かぶキラリとした笑顔。その大袈裟ともとれる笑顔と同時に明るい茶色の髪が左右に靡き、さらさらとした髪質がその純粋なる笑顔をかきたたせる。肌は白く、目も青い。まるで外人のようなオーラを醸し出している。
おそらく欧米とのハーフ…もしくは純粋な外国人なのかもしれない。日本人にはなかなか見ない顔立ちだ。
智也が辺りを見渡すと、彼自身を含むクラスの男子全員が彼女の顔や身体(特に胸)、スーツ生地のミニスカートからはみ出るスラッとした素足に釘付けになっていた。うむ、これが男子高校生の当たり前の反応だ。
一方女子はそんな男子達に、まるで電車の中でキスするカップルを見たかのような冷ややかな目線を送っている。ちなみに太ももフェチの智也は、春花に冷凍みかんのような目で睨まれました。
「これから入学式を始めるので、とりえず出席番号順に廊下に並んで下さぁい!」
大山先生は体を大きく揺さぶりながら高らかに声を上げ、指示を出した。
生徒全員(主に男子)がザッと素早く椅子から立ち上がり、まるで軍隊のように一斉に並び始める。智也と春花も、自分の場所を見つけ、そこに収まった。
…その時。
智也の横を見覚えのある顔が通りかかった。
このクラスに知っている人物など春花以外にいないのだが、確かに知っている顔が今、横を通った。
思考を巡らす。この学校に行く友達なんて他にいただろうか…。
―まさか…穂花さんか!?
今日の橋に落ちて助け出したあの柳瀬川穂花。そういえばお互いに名前を言い合ったとき、彼女も同じ高校の新入生だと言っていた。その後別れてしまったが、流石に顔は覚えている。あの美しくモデルのような顔、スラッとした身体。腰まで伸びるロングの黒い髪の毛。
彼女の姿を思い出しながら後ろに振り返る。
すると…
「……!?」
思わず息を呑んだ。智也の想像通り、列の最後尾一つ手前に彼女がいるのだ。
まさか同じクラスになるとは思ってもいなかった。いや、そうなって欲しいと思ってはいたが、15分の1の確率に当たってしまうとは予想外だ。
まだ彼女の素性も知らないし、今日初めて会った人物なのに、なぜかこの状況に智也は飛び跳ねたくなるような嬉しさを覚えた。
―これは運命か!?運命なのか!?
智也は胸の奥が熱くなるのを感じた。心の奥底から次々と高揚感がこみ上げてくる。
今すぐ話しかけに行きたい気分。しかし、ここで行ってしまっては彼女に迷惑をかけてしまうかもしれない。
「みなさん!それでは行きますよー!」
結局、担任の指示によって智也の衝動は収まった。その指示によってクラス全員が雑談をやめ体育館の方へと向き直し、きれいな列を崩さず歩き進める。
そのまま入学式に参加し、校長からの有り難い(?)話を聞き、そのまま何事もなく式は終わった。
唯一ちょっとした出来事と言えば、春花が常時智也に目線を送っていたことであるが、そんなことはどうでもいいのである。
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