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第2章 フェルミ通商条約機構の一員として
第9話 異文化
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ユカ、西野、吉川の3人は魔法の講義を受けている。講師はサトシだ。
もとの世界にいたときはこうやって有志勉強会を開いたものだ。
「……というわけで、魔法石を使うことで任意の魔法が使えるようになる。
魔法とはいくつかの要素で構成されている。
熱さ、速さのような「属性」
動く、燃えるのような「振舞」
始まり、終わりのような「契機」
などだ。
それらを指示することで、魔法石は指示通りに動く。
使い手は先に挙げた要素をイメージしてやるだけでいい。
具体的なエネルギー調整や魔法の錬成は魔法石がやってくれる」
元からこちらの世界にいる者たちは程度の差こそあれ、皆魔法を使うことが出来る。魔法の素養がないユカたちは「魔法とはなにか」から理解する必要があった。
なお、サトシは前回(4年前)にこの世界に来たことがあるため、そこら辺を理解している。
「ユカ、炎魔法を実行してみてくれ」
「はい。小規模炎魔法」
ユカの指先にろうそくほどの炎が灯る。
そこへ伝令がやって来た。
「副長、艦長がお呼びです」
「……なんだろう、わかった。今行く」
◇
「知多星、あれはなんだと思う?」
プレアデスの前には大破した宇宙船と見られる物体があった。
「宇宙船の残骸のようだな。敵か味方かは判断つかないが……サーシャ、生命反応はあるか?」
サーシャは目を閉じて意識を対象に集中させる。
「生命探査(ライブサーチ)……………………数人……生きているようですね」
探査を行うサーシャを西野と吉川がチラチラ見ている。
裸の女性を前にした成人男性の正常な反応だ。
「ところでアルデ、なぜサーシャは服を着ていないんだ?」
サトシがアルデに尋ねる。
「それは、炉心からの魔力が強大過ぎての。装備がすべて消し飛んだんじゃ。この船の炉心はあのベリアルじゃからな」
ベリアルはかつてサトシとともに赤い月の軍勢と戦った魔王だ。
強靭な肉体と無限の魔力を持った存在である。
「そういうことか。……しっかし、こいつらは……」
西野と吉川の鼻の下は伸びきっている。
「西野、吉川、お前らアイラと一緒にあの船にいって救助してこい」
「「了解でーす」」
◇
「誰かいますか~?」
吉川はやる気なく生存者を探す。
「吉川ちゃんとしろよ!」
西野はアイラに聞こえるようにわざと大きな声で吉川を注意した。
ちらっとアイラの方を見る。
アイラは二人に構うことなく黙々と捜索している。
「いた……衰弱しているようだが、生きてはいるようだ」
痩せ細った男がいた。
「私はアイラ。フェルミの者だ。貴方は?」
「フェルミの救助隊か……、助かった……私はオリス星のマヒ。この船は前線で戦っていた……」
そこまで話すとマヒは意識を失った。
アイラが治癒魔法で応急処置を行う。
「ひどく衰弱しているな。プレアデスに連れて帰ろう」
そう言ってアイラは転送魔法の護符を取り出した。
西野と吉川はアイラのそばに集まる。
アイラが護符を地面に貼り付け封印を切ると、魔法陣が地面に浮かび4人は光に包まれた。
後には焼き切れた護符のみが残る。
◇
結局、大破した船には5人の生存者がいた。
5人は眠り続けた。
その間、プレアデス艦内の回復系魔道士が懸命の治療を施していた。
そして3日後、マヒが最初に目覚めた。
「ここは……」
「目が覚めたようだな……プレアデスにようこそ」
ソウコウがマヒに話しかけた。
「君の船で何が起こったのか俺たちに教えてくれ」
「あぁ……」
マヒは自分の艦に起こったことを話し始めた。
半年前にオリス星で進宙した新造軽巡洋艦は、最前線のエリア931に進軍。
ジェミ軍の駆逐艦2隻と交戦し、これを沈めた。
しかし、操舵機能が破壊され漂流。
食料も尽き、あとは死を待つのみという状況でプレアデスに救出された。
ソウコウは彼らを客間に案内させた。
マヒたちはいそいそとその場を去った。
「サトシ、奴をどう思う?」
ソウコウはマヒから目を離さず小さな声で尋ねた。
「あぁ……何かウソをついているな」
◇
その夜(にあたる時間)に事件は起きた。
救出したオリス人の一人がプレアデスの兵を殺害し逃げだしたのだ。
駆けつけた回復系魔導士の蘇生魔法で兵の命は助かったが、艦内は騒然となった。
「やはり敵の斥候だったか……」
大鎌のマァルが舌舐めずりをしながらマヒたちを追い詰める。
「待ってくれ! 違うんだ! 俺たちは敵じゃない!」
マヒたちの叫びはマァルにとっては殺戮という美食の調味料にすぎない。
「怖いか……? 怖いだろう……?」
「マァル、待て」
ソウコウが止める。
「ソウコウ、何故に止める」
「オリス星に確認した。こいつらは肉食種だ」
◇
今回の一件についてはプレアデス内に犠牲者が出なかった事から、マヒたちは解放された。
しかし、その後の調査でマヒたちが漂流中に共食いをしたことが明らかになり、責任者のマヒは銃殺刑となった。
◇
「肉食種かぁ、人種が違えば色々違うもんだな」
サトシが感慨深げにいう。
「そうだな、でも俺たちだって他からどう思われてるか分かったもんじゃないぜ」
ソウコウが笑った。
もとの世界にいたときはこうやって有志勉強会を開いたものだ。
「……というわけで、魔法石を使うことで任意の魔法が使えるようになる。
魔法とはいくつかの要素で構成されている。
熱さ、速さのような「属性」
動く、燃えるのような「振舞」
始まり、終わりのような「契機」
などだ。
それらを指示することで、魔法石は指示通りに動く。
使い手は先に挙げた要素をイメージしてやるだけでいい。
具体的なエネルギー調整や魔法の錬成は魔法石がやってくれる」
元からこちらの世界にいる者たちは程度の差こそあれ、皆魔法を使うことが出来る。魔法の素養がないユカたちは「魔法とはなにか」から理解する必要があった。
なお、サトシは前回(4年前)にこの世界に来たことがあるため、そこら辺を理解している。
「ユカ、炎魔法を実行してみてくれ」
「はい。小規模炎魔法」
ユカの指先にろうそくほどの炎が灯る。
そこへ伝令がやって来た。
「副長、艦長がお呼びです」
「……なんだろう、わかった。今行く」
◇
「知多星、あれはなんだと思う?」
プレアデスの前には大破した宇宙船と見られる物体があった。
「宇宙船の残骸のようだな。敵か味方かは判断つかないが……サーシャ、生命反応はあるか?」
サーシャは目を閉じて意識を対象に集中させる。
「生命探査(ライブサーチ)……………………数人……生きているようですね」
探査を行うサーシャを西野と吉川がチラチラ見ている。
裸の女性を前にした成人男性の正常な反応だ。
「ところでアルデ、なぜサーシャは服を着ていないんだ?」
サトシがアルデに尋ねる。
「それは、炉心からの魔力が強大過ぎての。装備がすべて消し飛んだんじゃ。この船の炉心はあのベリアルじゃからな」
ベリアルはかつてサトシとともに赤い月の軍勢と戦った魔王だ。
強靭な肉体と無限の魔力を持った存在である。
「そういうことか。……しっかし、こいつらは……」
西野と吉川の鼻の下は伸びきっている。
「西野、吉川、お前らアイラと一緒にあの船にいって救助してこい」
「「了解でーす」」
◇
「誰かいますか~?」
吉川はやる気なく生存者を探す。
「吉川ちゃんとしろよ!」
西野はアイラに聞こえるようにわざと大きな声で吉川を注意した。
ちらっとアイラの方を見る。
アイラは二人に構うことなく黙々と捜索している。
「いた……衰弱しているようだが、生きてはいるようだ」
痩せ細った男がいた。
「私はアイラ。フェルミの者だ。貴方は?」
「フェルミの救助隊か……、助かった……私はオリス星のマヒ。この船は前線で戦っていた……」
そこまで話すとマヒは意識を失った。
アイラが治癒魔法で応急処置を行う。
「ひどく衰弱しているな。プレアデスに連れて帰ろう」
そう言ってアイラは転送魔法の護符を取り出した。
西野と吉川はアイラのそばに集まる。
アイラが護符を地面に貼り付け封印を切ると、魔法陣が地面に浮かび4人は光に包まれた。
後には焼き切れた護符のみが残る。
◇
結局、大破した船には5人の生存者がいた。
5人は眠り続けた。
その間、プレアデス艦内の回復系魔道士が懸命の治療を施していた。
そして3日後、マヒが最初に目覚めた。
「ここは……」
「目が覚めたようだな……プレアデスにようこそ」
ソウコウがマヒに話しかけた。
「君の船で何が起こったのか俺たちに教えてくれ」
「あぁ……」
マヒは自分の艦に起こったことを話し始めた。
半年前にオリス星で進宙した新造軽巡洋艦は、最前線のエリア931に進軍。
ジェミ軍の駆逐艦2隻と交戦し、これを沈めた。
しかし、操舵機能が破壊され漂流。
食料も尽き、あとは死を待つのみという状況でプレアデスに救出された。
ソウコウは彼らを客間に案内させた。
マヒたちはいそいそとその場を去った。
「サトシ、奴をどう思う?」
ソウコウはマヒから目を離さず小さな声で尋ねた。
「あぁ……何かウソをついているな」
◇
その夜(にあたる時間)に事件は起きた。
救出したオリス人の一人がプレアデスの兵を殺害し逃げだしたのだ。
駆けつけた回復系魔導士の蘇生魔法で兵の命は助かったが、艦内は騒然となった。
「やはり敵の斥候だったか……」
大鎌のマァルが舌舐めずりをしながらマヒたちを追い詰める。
「待ってくれ! 違うんだ! 俺たちは敵じゃない!」
マヒたちの叫びはマァルにとっては殺戮という美食の調味料にすぎない。
「怖いか……? 怖いだろう……?」
「マァル、待て」
ソウコウが止める。
「ソウコウ、何故に止める」
「オリス星に確認した。こいつらは肉食種だ」
◇
今回の一件についてはプレアデス内に犠牲者が出なかった事から、マヒたちは解放された。
しかし、その後の調査でマヒたちが漂流中に共食いをしたことが明らかになり、責任者のマヒは銃殺刑となった。
◇
「肉食種かぁ、人種が違えば色々違うもんだな」
サトシが感慨深げにいう。
「そうだな、でも俺たちだって他からどう思われてるか分かったもんじゃないぜ」
ソウコウが笑った。
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