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第2章 フェルミ通商条約機構の一員として
第16話 西野と吉川
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プレアデスは今、前線宙域を哨戒している。ここ数日は戦闘が発生していない。乗員は準警戒体制(すぐ動けるよう待機しているが、警戒任務にあたっていない状態)の中、思い思いに時間を過ごしている。
西野と吉川、二人にとって魔法は刺激的なおもちゃだ。技術的探求心の強い彼らは魔法の新しい活用についていつも模索していた。
◇
「宇宙空間じゃぁ減速することはないんだから、射出初速の属性値に魔力を割り振ることで実現できるんじゃないか?」
「でもさ、西野の案だと相手が止まった状態を維持してないと命中しねぇだろ」
「じゃぁ火球みたいにコントロールしやすいものを使って誘導する?」
「いや、それじゃあ敵艦を破壊するだけのパワーが足りない」
二人は魔法による超長距離狙撃について議論を交わしていた。
戦いは初動が大事だ。「認知」、「判断」、「操作」。これらが相手よりも早ければ戦いは有利に運ぶ。超長距離狙撃が成功すれば、無傷で敵艦を減らすことができる。効果は大きい。
魔導士が自由に意識を魔力に伝えて魔法を作り出すのに対し、魔法石で使用できる魔法は限定的だ。
魔法石は事象の雛型を持つ。使用者はその雛型に対して設定を与えたり、雛型の改変をして、独自の事象を発現させる。ただし、その実現可能範囲は魔法石の核にある魔結晶の大きさや純度に左右される。少ない魔力で効果を出すためには無駄の無い魔法を作り出すことが大事だ。
「じゃぁ、『魔王の炉』から魔力を直接引っ張ってくるのは?」
冗談を言いながら西野が消耗しビー玉のようになった魔結晶を机の上で転がして遊ぶ。
「ハハハ、それたぶん死ぬわ」
吉川は別の魔結晶片をそれにぶつけた。
魔結晶の玉が弾かれ、机から落ちる。
その瞬間、二人は同時に閃いた。
◇
試射の機会はすぐに訪れた。小惑星帯を通過中にサーシャが一時間先の場所に敵と見られる生命反応を感知したのだ。
「サーシャ、敵艦の数はわかるか?」
「2隻です。……少し小ぶりでしょうか」
「恐らくは軽巡洋艦ですね」
ウサが即座に応える。
「サトシよ、いっそのこと極大魔法で焼き払えばどうじゃろうか」
「いや、今は小惑星帯を抜けるまで防御魔法を解除できない」
西野たちがサトシに提案する。
「片山さん、俺と吉川で狙撃してみます」
「わかった、やってみてくれ」
◇
西野たちはロボに乗り込み、プレアデス後部の格納庫から外に出る。
西野が破壊を担当、全力の魔力で爆発魔法を生成、三度目の衝撃で爆発するように振舞を設定する。
吉川が高速射出魔法を発動。速度に魔力を割り当てた火球魔法を発射、火球によって爆発魔法の軌道が修正される。
もう一度火球を当てる。微調整だ。
爆発魔法は敵艦に命中。一撃で一隻を撃沈した。
「「よっしゃ!」」
残るは1隻。西野たちはカタパルトに乗り込む。
「7号機メロペ、乗員西野。射出お願いします」
「6号機アステロぺ、乗員吉川。射出頼みます」
哀れな敵艦は西野たちの襲撃で撃沈した。
◇
「お前たちは本当に仲がいいな」
艦に戻った二人にサトシがからかうように言う。
「そんなことは」
「そっすね」
同時に真逆の返答をする西野と吉川。
その様子を見てサトシたちは笑った。
西野と吉川、二人にとって魔法は刺激的なおもちゃだ。技術的探求心の強い彼らは魔法の新しい活用についていつも模索していた。
◇
「宇宙空間じゃぁ減速することはないんだから、射出初速の属性値に魔力を割り振ることで実現できるんじゃないか?」
「でもさ、西野の案だと相手が止まった状態を維持してないと命中しねぇだろ」
「じゃぁ火球みたいにコントロールしやすいものを使って誘導する?」
「いや、それじゃあ敵艦を破壊するだけのパワーが足りない」
二人は魔法による超長距離狙撃について議論を交わしていた。
戦いは初動が大事だ。「認知」、「判断」、「操作」。これらが相手よりも早ければ戦いは有利に運ぶ。超長距離狙撃が成功すれば、無傷で敵艦を減らすことができる。効果は大きい。
魔導士が自由に意識を魔力に伝えて魔法を作り出すのに対し、魔法石で使用できる魔法は限定的だ。
魔法石は事象の雛型を持つ。使用者はその雛型に対して設定を与えたり、雛型の改変をして、独自の事象を発現させる。ただし、その実現可能範囲は魔法石の核にある魔結晶の大きさや純度に左右される。少ない魔力で効果を出すためには無駄の無い魔法を作り出すことが大事だ。
「じゃぁ、『魔王の炉』から魔力を直接引っ張ってくるのは?」
冗談を言いながら西野が消耗しビー玉のようになった魔結晶を机の上で転がして遊ぶ。
「ハハハ、それたぶん死ぬわ」
吉川は別の魔結晶片をそれにぶつけた。
魔結晶の玉が弾かれ、机から落ちる。
その瞬間、二人は同時に閃いた。
◇
試射の機会はすぐに訪れた。小惑星帯を通過中にサーシャが一時間先の場所に敵と見られる生命反応を感知したのだ。
「サーシャ、敵艦の数はわかるか?」
「2隻です。……少し小ぶりでしょうか」
「恐らくは軽巡洋艦ですね」
ウサが即座に応える。
「サトシよ、いっそのこと極大魔法で焼き払えばどうじゃろうか」
「いや、今は小惑星帯を抜けるまで防御魔法を解除できない」
西野たちがサトシに提案する。
「片山さん、俺と吉川で狙撃してみます」
「わかった、やってみてくれ」
◇
西野たちはロボに乗り込み、プレアデス後部の格納庫から外に出る。
西野が破壊を担当、全力の魔力で爆発魔法を生成、三度目の衝撃で爆発するように振舞を設定する。
吉川が高速射出魔法を発動。速度に魔力を割り当てた火球魔法を発射、火球によって爆発魔法の軌道が修正される。
もう一度火球を当てる。微調整だ。
爆発魔法は敵艦に命中。一撃で一隻を撃沈した。
「「よっしゃ!」」
残るは1隻。西野たちはカタパルトに乗り込む。
「7号機メロペ、乗員西野。射出お願いします」
「6号機アステロぺ、乗員吉川。射出頼みます」
哀れな敵艦は西野たちの襲撃で撃沈した。
◇
「お前たちは本当に仲がいいな」
艦に戻った二人にサトシがからかうように言う。
「そんなことは」
「そっすね」
同時に真逆の返答をする西野と吉川。
その様子を見てサトシたちは笑った。
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