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第2章 フェルミ通商条約機構の一員として
第17話 ヘリウス軍との戦闘
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「ジェミ軍事同盟」の第9エリア宙域司令官ヘリウスの元には連日のように敗退の報告が入っていた。
ここ数ヵ月の間に戦局はジェミにとって不利に傾いている。原因は明確だ。数ヵ月前に「フェルミ通称条約機構」に新規加盟した「赤い月」。その者たちがジェミ有利だった状況を覆したのだ。
報告によると「赤い月」の艦は僅か一隻という。
「フン、『魔法』とか言うやつか。ワシが直々に叩き潰してくれるわ。ヘリウス軍の恐ろしさ知らしめてくれる」
ヘリウスが立ち上がると側近たちは歓声をあげた。
◇
数時間後、プレアデスは敵軍と接触した。
「敵の存在を感知しました。大型艦4隻に小さい艦が6隻です」
サーシャが報告する。
「アルデ、望遠モニタで映してくれ」
「承知じゃ」
「空母2隻に戦艦2隻、あとは軽巡洋艦6隻ですね……って、ちょっとまって! アルデさん、倍率上げられますか」
「……あの紋章はヘリウス軍! ジェミのカテゴリ2、強敵です!」
ウサが興奮ぎみに叫ぶ。
ウサ自身、カテゴリ2の敵を見るのは初めてだ。
敵艦を指揮するのはヘリウス軍の副司令官ヒドロ。長身でスキンヘッドのこの男は自分の後頭部を撫でながらプレアデスを観察している。
「さて、どう料理したものか……」
後頭部を撫でる手を止め、ヒドロは部下に指示を出した。
「フム、ここは一気に葬ってくれようぞ。全機発艦」
二隻の空母から大量の艦載機が発艦する。
「戦艦、軽巡洋艦は敵と間隔をとり、敵艦を砲撃」
「敵艦載機発艦を確認、数はおよそ200」
「全機発艦だ! ユカ、艦を頼む!」
ソウソウが指示を出す。
カタパルトが次々に艦載ロボを射出する。
「1号機マイア、ソウコウ発艦する!」
「2号機エレクトラ、サトシ発艦!」
「3号機タユゲテ、アイラ発艦します」
「4号機アルキュオネ、アルデ出るぞ」
「5号機ケライノ、マァル……ゆくぞ」
「6号機アステロペ、吉川行くぜ!」
「7号機メロペ、西野出ます」
7つの機体がプレアデスを飛び出す。
「俺とマァル、アイラは艦敵に斬り込む! サトシとアルデは敵艦載機からプレアデスを守れ! 西野と吉川は後方から援護射撃だ!」
ソウコウ、マァル、アイラの機体が敵空母をめがけ飛んで行く。敵艦載機の銃撃を掻い潜り、敵陣の中央を目指す。
アイラの後方を敵機が追う。
「クソっ! やらせるか!」
アイラの後方を追っていた敵は西野が速射砲で直ちに撃墜した。
「やった!」
喜ぶ西野の機体に3機の敵機が飛来。敵の黒い迷彩に西野は気づけなかった。
「しまった!!?」
3機は西野の前で大破する。
「よそ見をするな! 視野を広く持て!」
サトシが敵機を落としたのだ。
「あ、すみません!」
「アルデ、全方位攻撃だ!」
「了解じゃぁ!」
サトシとアルデが背中合わせになる。
次の瞬間、2機から激しい火の玉が吹き出した。
「全方位速射火炎魔法!」
付近の敵機が次々に炎上大破。
2機はそのまま敵編隊を迎え撃つ。
「落ちろォォォォっ!」
「沈めェェェェッ!」
「「大爆発魔法!!」」
西野と吉川は爆発魔法を敵に撃ち込むが、敵艦までの距離があるため不発になった。
「外したか! 吉川、狙撃いくぞ」
「2回軌道修正で当たるように敵を捉えて……」
西野は慎重に敵の軽巡洋艦に狙いを定める。
敵はプレアデスの周囲を旋回するようなコースを取って砲撃を繰り返す。
「行けぇっ!」
弾は敵軽巡洋艦を少しそれる。
「今だ! 軌道修正!」
吉川が速射魔法で弾を軌道修正する。
弾は軽巡洋艦の胴体中央部に着弾。敵は炎に沈む。
同じ要領で敵戦艦を狙い撃つ。
しかし、大きなダメージは与えられない。
「仕方ない、あれは艦長たちに任せて俺たちは小さい船を狙うぞ」
◇
「ちっ、なかなか硬いな……」
ソウコウたちは敵空母に対峙していた。
しかし、艦載ロボの攻撃を敵空母はものともしない。一方的な敵の攻撃を回避することにソウコウたちは疲労し始めている。
「あいつを撃ち抜くのは無理だ。直接敵艦内に乗り込む。援護を頼む!」
マァルとアイラは防御魔法で敵の銃撃からソウコウをかばう。
ソウコウは敵旗艦に着艦、ハッチをこじ開け内部に潜入した。
◇
「……暑いな……」
敵艦内に侵入したソウコウを猛烈な暑さが襲う。それもそのはず、ヘリウスの母星は気温70度という星で、艦内も彼らの星に合わせた環境になっているのだ。
少し走るだけで汗が滴る。
「これは長い時間いられないな」
ソウコウの侵入を察知し、敵兵が艦内をせわしなく走り回る。敵の装備は軽装の鎧に尺の長い銃だ。どうやら5人一組で動いているらしい。
通常の空間であれば、倒せない数ではないが、高温の中で激しい運動ができる時間は限られる。さっさとケリをつけなければ危ない。
意を決してソウコウは走り出した。出切るだけ敵の多い方へ。そこが恐らく敵の大将がいる方向だ。
敵が銃を乱射する。ソウコウはそれを盾でいなす。ソウコウの盾……伝説の盾は、表面にエネルギーを無効化する魔法がかけられている。物理的な銃弾も例外ではなく、盾に触れると速度を失いその場に落ちた。
「邪魔だ! 雷撃剣!」
ソウコウの剣、伝説の剣は自己修復機能を持っており刃こぼれしない。その伝説の剣が振られると、敵の胴体は音もなく二つに分かれた。
ソウコウの走ったあとは血と内臓の海だ。
鉄の臭いが充満する。
数十分の戦闘ののち、ソウコウはついに敵の大将、ヒドロのもとへたどり着いた。
「この艦隊の親玉だな? 覚悟しろ」
「ほぉ、ここまで来たか『赤い月』の魔法使い君」
「勉強不足だぜハゲ親父。俺は……『勇者』だ!」
ソウコウの突きがヒドロの腹部に深々と突き刺さる。しかし、その手応えは肉のそれではない。
「この手応えはっ!?」
ヒドロが口を歪ませて笑う。
「勇者君、私は機械化人間でね……そう簡単には死なないよ……」
次の瞬間、ヒドロの全身から銃弾が撃ち放たれた。ソウコウは盾で防御するも間に合わず足と右肩に被弾する。
「うわぁぁぁぁっ!」
「ククク……ここまで来たことは誉めてやろう。だが、それまでだ。君たちは私には勝てないよ」
そう言うとヒドロは二度目の銃弾を放つ。
足を負傷したソウコウは避けきれず、銃弾を浴びる。血飛沫が舞い、膝をつく勇者。
「次で死んでしまうのかい? もう一度いくよ。ほら」
三度目の銃弾が放たれる。
しかし、ヒドロは相手を舐めすぎていた。銃撃のタイミングを丁寧に教えられたソウコウには取るべき手段が理解できた。
「反射魔法!」
ソウコウの前に光の壁が作り出される。銃弾は光の壁に吸い込まれると壁の中で向きを変えヒドロに向かって飛んだ。
「何っ!?」
予想外の出来事にヒドロは反応できず全身に自分の銃弾を浴びる。
「バカな……なんだこれはっ!?」
怯むヒドロに追撃をかける。
「雷撃剣!」
披雷と斬撃を同時に受け、ヒドロの全身が火を吹く。
ソウコウはそのまま敵を袈裟斬りした。
「ククク……十分時間は稼ぐことができた。俺は囮だ。今頃貴様らの母星は火の海だろうよ」
「何!?」
そう言うとヒドロは息絶えた。
◇
旗艦を失った敵は統制を失い、壊滅。結局12時間かけた戦闘はプレアデスが勝利した。
アイラに回復魔法で治療を受けながらソウコウが指示を出す。
「俺たちの母星、赤い月が攻撃を受けている! サーシャ、全速力で赤い月に向かうんだ」
ここ数ヵ月の間に戦局はジェミにとって不利に傾いている。原因は明確だ。数ヵ月前に「フェルミ通称条約機構」に新規加盟した「赤い月」。その者たちがジェミ有利だった状況を覆したのだ。
報告によると「赤い月」の艦は僅か一隻という。
「フン、『魔法』とか言うやつか。ワシが直々に叩き潰してくれるわ。ヘリウス軍の恐ろしさ知らしめてくれる」
ヘリウスが立ち上がると側近たちは歓声をあげた。
◇
数時間後、プレアデスは敵軍と接触した。
「敵の存在を感知しました。大型艦4隻に小さい艦が6隻です」
サーシャが報告する。
「アルデ、望遠モニタで映してくれ」
「承知じゃ」
「空母2隻に戦艦2隻、あとは軽巡洋艦6隻ですね……って、ちょっとまって! アルデさん、倍率上げられますか」
「……あの紋章はヘリウス軍! ジェミのカテゴリ2、強敵です!」
ウサが興奮ぎみに叫ぶ。
ウサ自身、カテゴリ2の敵を見るのは初めてだ。
敵艦を指揮するのはヘリウス軍の副司令官ヒドロ。長身でスキンヘッドのこの男は自分の後頭部を撫でながらプレアデスを観察している。
「さて、どう料理したものか……」
後頭部を撫でる手を止め、ヒドロは部下に指示を出した。
「フム、ここは一気に葬ってくれようぞ。全機発艦」
二隻の空母から大量の艦載機が発艦する。
「戦艦、軽巡洋艦は敵と間隔をとり、敵艦を砲撃」
「敵艦載機発艦を確認、数はおよそ200」
「全機発艦だ! ユカ、艦を頼む!」
ソウソウが指示を出す。
カタパルトが次々に艦載ロボを射出する。
「1号機マイア、ソウコウ発艦する!」
「2号機エレクトラ、サトシ発艦!」
「3号機タユゲテ、アイラ発艦します」
「4号機アルキュオネ、アルデ出るぞ」
「5号機ケライノ、マァル……ゆくぞ」
「6号機アステロペ、吉川行くぜ!」
「7号機メロペ、西野出ます」
7つの機体がプレアデスを飛び出す。
「俺とマァル、アイラは艦敵に斬り込む! サトシとアルデは敵艦載機からプレアデスを守れ! 西野と吉川は後方から援護射撃だ!」
ソウコウ、マァル、アイラの機体が敵空母をめがけ飛んで行く。敵艦載機の銃撃を掻い潜り、敵陣の中央を目指す。
アイラの後方を敵機が追う。
「クソっ! やらせるか!」
アイラの後方を追っていた敵は西野が速射砲で直ちに撃墜した。
「やった!」
喜ぶ西野の機体に3機の敵機が飛来。敵の黒い迷彩に西野は気づけなかった。
「しまった!!?」
3機は西野の前で大破する。
「よそ見をするな! 視野を広く持て!」
サトシが敵機を落としたのだ。
「あ、すみません!」
「アルデ、全方位攻撃だ!」
「了解じゃぁ!」
サトシとアルデが背中合わせになる。
次の瞬間、2機から激しい火の玉が吹き出した。
「全方位速射火炎魔法!」
付近の敵機が次々に炎上大破。
2機はそのまま敵編隊を迎え撃つ。
「落ちろォォォォっ!」
「沈めェェェェッ!」
「「大爆発魔法!!」」
西野と吉川は爆発魔法を敵に撃ち込むが、敵艦までの距離があるため不発になった。
「外したか! 吉川、狙撃いくぞ」
「2回軌道修正で当たるように敵を捉えて……」
西野は慎重に敵の軽巡洋艦に狙いを定める。
敵はプレアデスの周囲を旋回するようなコースを取って砲撃を繰り返す。
「行けぇっ!」
弾は敵軽巡洋艦を少しそれる。
「今だ! 軌道修正!」
吉川が速射魔法で弾を軌道修正する。
弾は軽巡洋艦の胴体中央部に着弾。敵は炎に沈む。
同じ要領で敵戦艦を狙い撃つ。
しかし、大きなダメージは与えられない。
「仕方ない、あれは艦長たちに任せて俺たちは小さい船を狙うぞ」
◇
「ちっ、なかなか硬いな……」
ソウコウたちは敵空母に対峙していた。
しかし、艦載ロボの攻撃を敵空母はものともしない。一方的な敵の攻撃を回避することにソウコウたちは疲労し始めている。
「あいつを撃ち抜くのは無理だ。直接敵艦内に乗り込む。援護を頼む!」
マァルとアイラは防御魔法で敵の銃撃からソウコウをかばう。
ソウコウは敵旗艦に着艦、ハッチをこじ開け内部に潜入した。
◇
「……暑いな……」
敵艦内に侵入したソウコウを猛烈な暑さが襲う。それもそのはず、ヘリウスの母星は気温70度という星で、艦内も彼らの星に合わせた環境になっているのだ。
少し走るだけで汗が滴る。
「これは長い時間いられないな」
ソウコウの侵入を察知し、敵兵が艦内をせわしなく走り回る。敵の装備は軽装の鎧に尺の長い銃だ。どうやら5人一組で動いているらしい。
通常の空間であれば、倒せない数ではないが、高温の中で激しい運動ができる時間は限られる。さっさとケリをつけなければ危ない。
意を決してソウコウは走り出した。出切るだけ敵の多い方へ。そこが恐らく敵の大将がいる方向だ。
敵が銃を乱射する。ソウコウはそれを盾でいなす。ソウコウの盾……伝説の盾は、表面にエネルギーを無効化する魔法がかけられている。物理的な銃弾も例外ではなく、盾に触れると速度を失いその場に落ちた。
「邪魔だ! 雷撃剣!」
ソウコウの剣、伝説の剣は自己修復機能を持っており刃こぼれしない。その伝説の剣が振られると、敵の胴体は音もなく二つに分かれた。
ソウコウの走ったあとは血と内臓の海だ。
鉄の臭いが充満する。
数十分の戦闘ののち、ソウコウはついに敵の大将、ヒドロのもとへたどり着いた。
「この艦隊の親玉だな? 覚悟しろ」
「ほぉ、ここまで来たか『赤い月』の魔法使い君」
「勉強不足だぜハゲ親父。俺は……『勇者』だ!」
ソウコウの突きがヒドロの腹部に深々と突き刺さる。しかし、その手応えは肉のそれではない。
「この手応えはっ!?」
ヒドロが口を歪ませて笑う。
「勇者君、私は機械化人間でね……そう簡単には死なないよ……」
次の瞬間、ヒドロの全身から銃弾が撃ち放たれた。ソウコウは盾で防御するも間に合わず足と右肩に被弾する。
「うわぁぁぁぁっ!」
「ククク……ここまで来たことは誉めてやろう。だが、それまでだ。君たちは私には勝てないよ」
そう言うとヒドロは二度目の銃弾を放つ。
足を負傷したソウコウは避けきれず、銃弾を浴びる。血飛沫が舞い、膝をつく勇者。
「次で死んでしまうのかい? もう一度いくよ。ほら」
三度目の銃弾が放たれる。
しかし、ヒドロは相手を舐めすぎていた。銃撃のタイミングを丁寧に教えられたソウコウには取るべき手段が理解できた。
「反射魔法!」
ソウコウの前に光の壁が作り出される。銃弾は光の壁に吸い込まれると壁の中で向きを変えヒドロに向かって飛んだ。
「何っ!?」
予想外の出来事にヒドロは反応できず全身に自分の銃弾を浴びる。
「バカな……なんだこれはっ!?」
怯むヒドロに追撃をかける。
「雷撃剣!」
披雷と斬撃を同時に受け、ヒドロの全身が火を吹く。
ソウコウはそのまま敵を袈裟斬りした。
「ククク……十分時間は稼ぐことができた。俺は囮だ。今頃貴様らの母星は火の海だろうよ」
「何!?」
そう言うとヒドロは息絶えた。
◇
旗艦を失った敵は統制を失い、壊滅。結局12時間かけた戦闘はプレアデスが勝利した。
アイラに回復魔法で治療を受けながらソウコウが指示を出す。
「俺たちの母星、赤い月が攻撃を受けている! サーシャ、全速力で赤い月に向かうんだ」
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