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第二章 戸惑いの異世界
20.慌ただしい朝
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朝はどうものんびりする癖がついてしまった。家にはこちらの時計がないので正確ではないが、まだ電池が切れずに動き続けている目覚ましを信じるならすでに十時近くだ。起きたら教えるようにと言われているので枕元の小さな鈴を鳴らした。
「おはようございます。
今日もライさまはゆっくりなのだわ。
マコさまはもう庭いじりをしているのだわ」
「や、やあナル、おはよう。
今日も午後からマーケットへ行くつもりだからのんびりでもいいんだってば。
だから人を寝坊助でだらしないヤツっぽくいうのは止めておくれよ」
「ナルはゆっくりだったとだけ、他にはなにも言っていないのだわ。
寝坊ともだらしないとも思わないのだわ」
「そりゃそうかもだけどさ……
真琴が庭いじりってことはルースーも一緒なのかな?
マーボはどこにいるか知ってる?」
「ルースーとマーボはマコさまと一緒にお庭に、でもメンマもいっしょなのだわ。
あの長毛種は役に立たないくせにいつもまとわりついて……
ライさま、ナルも一緒に寝たいのだわ」
「そ、そんなのだめだよ!
もしかして一人であの小部屋にいるのはやっぱり寂しいの?」
「いいえ、一人だけマコさまと一緒に寝ていてズルいだけ。
だからナルも一緒に寝たいと言っているのだわ」
「でもやっぱ一緒のベッドはまずいよ……」
「くっ、マコさまのベッドは大きいから三人でも寝られると思うのに……
ライさまがお許し下さらないのなら仕方ないのだわ」
あれ? そういう意味だった? それならそうとちゃんと言ってくれたら良かったのに、てっきり僕は勘違いをしてしまっていた。そこへまた唐突に現れた白い影が!
「ライさまにはこのチャーシがいつもぴったりとついているのでご安心を。
寝ている時であろうと一番役に立つのはチャーシだもの」
「ああ、チャーシもずるしているのだわ。
でも扉を開けた様子がないのにどうやってやってきたのか不思議なのだわ」
「今言ったでしょう? チャーシはいつもライさまのお側にいると。
扉の音がしなくて当然、昨日からずっとこの部屋にいるんだもの?
護衛として当主さまのお側にいるのがチャーシのお役目よ」
「そんなのズル! ズルだわ!
ライさま、ナルにもなにかお役目が欲しいのだわ」
まさか、チャーシが姿を見せずに僕へピッタリついていたなんて想像もしていなかった。別にやましいことはないが、おかしな行動や発言をしないよう注意する意識だけは持っておかないとまずそうだ。と言うことは、ナルからはチャーシが僕専属に見えている? 彼女にしてみれば自分も専属の主人を持ちたいと嫉妬しているのかもしれない。
「あのさ、僕に言うんじゃなくて真琴へ聞いてみたら?
三人で寝ようって言えばあいつはきっと快諾するよ。
寝てる間に何されるかはわからないけどそれでも良ければね」
「わかったのだわ、お伝えしてみます。
お断りされたらライさまに責任を取っていただくのだわ。
それじゃ」
えっ!? 責任ってどういう…… と言う間もなく行ってしまった。マーボに用があることを伝えてくれるといいんだけど、僕が起きた後のベッドメイキングすら放って行ってしまったくらいだ、とても期待できそうにない。
「やれやれ、やはり猫たちは気まぐれすぎて役立たずね。
ライさまのお役に立てるのはチャーシだけだもの。
今日もマーケットへお供しますが、マコさまはきっとお庭いじりでしょう。
と言うことはルースーもお手伝いするはず。
ですから今日はチャーシ一人ね、ライさま?」
「あ、ああ、そうだね。
なんでチャーシは僕にぴったりなの?」
「チャーシは他のメイドと違って家の用事は何もできないわ。
だから護衛として働かなければ存在意義がないのだもの。
マコさまが家にいるときはハンチャがついているし、お出かけの際はみんな一緒。
でも今後ライさまとマコさまが別々にお出かけするときが問題」
「ハンチャがいるよね? どっちかについていってくれるんじゃない?
まあそんな危険なところへ行くつもりはないんだけどさ」
「ハンチャは敷地内から出られないんだもの。
なんでも完璧にこなして護衛もできる、でもそれは屋敷の敷地にいるからこそ。
結界を張っているのもハンチャ、周囲を索敵してチャーシたちへ指示を出すのもハンチャ。
ハンチャが居なければチャーシたちだって満足には動けないの」
「なるほど、そういう制限があるんだね。
それなら僕は自分の身をしっかり守れるように強くならないといけないな。
その時はチャーシに教えてもらうからよろしく頼むよ?」
「かしこまりよ、チャーシに出来ることは少なくて寂しいのだわ。
でもライさまが頼って下さるのはうれしい。
―― ハンチャから連絡、来客あり…… なのか微妙な動きなのだわ。
武器を持った女性が庭にいるマコさまのところへ向かっているようだわ」
「なんだって!? 急いで行かないと!
でも結界があるから安全ではあるのか、でもとにかく急ごう」
僕はみすぼらしいジャージ姿のまま、部屋から駈け出して庭へと向かった。チャーシはあっという間に居なくなり、恐らくはすでに真琴のところについているだろう。
玄関から出て左手に目をやると確かになにか荷物を抱えた女性が立っている。しかしその表情は明るく朗らかで、真琴と談笑しているようにしか見えない。
「あ、お兄さんが来たわよ?
おはよう雷人君、まだ起きたばかりみたいだね。
これから森へ行くんだけど、真琴ちゃんが見えたから声かけたんだ」
そこには確かに女性が立っていて、恐らく武器も持っているのだろうが、明らかに危険ではない人物であるロミの姿があった。そう言えば昨日、ジュースの材料にする果物を毎日のように森へ取りに行っていると言っていたっけ。
「寝坊助お兄ちゃんおはよー
マコは早起きして薔薇の苗植えたり種植えたりしてたんだよ?
でも薔薇はもっと一杯欲しいな、この生垣一杯になるくらい!」
「それならアタシが野ばらを取ってきてあげるよ。
一度には少ししか運べないけど、森にはほぼ毎日行くからさ。
ツルみたいになるようなのがいいなら野ばらも悪くないでしょ」
「はい、ルースーも賛成なのです。
マコさまがお気に召すような生垣を作って見せるのです。
それでチャーシはなんで臨戦態勢なのですか?」
「ああ、なんでもないよ、急いで来たからそう見えてるだけじゃない?
僕がせかしてしまったからね」
なんで僕はこういいわけがへたくそなんだろうか。こんなんじゃどう考えてもロミに怪しく思われてしまうだろうに。だが彼女はそんな僕へ友達へ向けるような当たり前の笑顔で言った。
「きっと誰か来たって報告受けて飛んできたんだよな?
妹想いのすごくいいお兄さんじゃないか。
なんだか羨ましいよ、うんうん」
「そうでしょー! お兄ちゃんはとっても優しくてカッコよくてね。
なーんでもできちゃうし、とにかく凄いんだから!」
「おいおい、そんな大げさに…… いい加減にしとけってば。
なんでもなんてできるわけないだろ」
「真琴ちゃんもかわいいな。
お兄さんのことが大好きで仕方ないんだろ?
この年頃ってそんなもんだしずっとは続かないから今のうち味わっといた方がいいさ。
それじゃアタシはそろそろ行ってくる、またゆっくり話しような」
慌ただしく走り去って行くロミの後姿を見送ってから、僕はホッと安堵のため息を吐いた。チャーシに目をやると思わせぶりににやりと笑ったが、それが何を意味しているのかは全く分からなかった。
切っ掛けはともかく、ここまでやってきたおかげでマーボとも会えたし、取り合えずはキッチンへ行って二人でエビを調理する。餃子の教訓を胸に、味付けはシンプルで作り過ぎないことを事前に決めておいた。
「焼いて塩をまぶすだけでいいんじゃないかな?
手間が少ない方がいいだろ?
でも衣付きだから揚げるしかないのか。
それと販売用に器が必要だからいっぱいある紙コップを使おう」
「ライさま、マーボはこのビンも売れると思います。
一輪挿しにちょうどいい大きさですし、ハッキリ言って邪魔なのですから。
張ってあるラベルを剥がすのは留守番の誰かにやらせましょう」
「そういわれても、誰ならできそうかわからない…… まてよ?
―― もしかして…… ハンチャ?」
マーボとチャーシはコクリと頷いた。あのイケオジ魔人がイライラしながらビール瓶のラベルを剥がしている姿はとても想像できないが、他の特化型メイドにあんな作業は期待できないのは確かだ。仕方なくその提案に乗った僕はハンチャを呼んでもらって地下倉庫での仕事を頼むことにした。
ビールの空き瓶は八ケースほど積んであったので全部で百六十本になる。一つ100ルドで売れたら空き瓶で16000ルドになるから一気に小金持ちだ。ちなみに昨日の売り上げは1100ルドだったのだが、真琴の好きに使わせた結果、薔薇の苗木や紅茶の葉、それに磨いた赤い石のペンダントに化けて全て無くなってしまった。
こうして準備を済ませた頃にはやはり午後になっており、僕とチャーシは二人で行商へ出かけることにした。マーボへは行ってきますと声をかけたのだが、爪を立ててカリカリとビール瓶へ向かっているハンチャのことは見てみぬふりをしてしまった。
今日のラインナップはエビフリッターに売れ残り餃子、それと念のため生麺を二玉だけ持っていく。時間があったら温麺(うーめん)屋とやらへ行ってみるつもりなのだ。フリッターの味付けは塩とマヨネーズだ。僕はこれなら完璧だと意気揚揚に、胸を張って家を出た。
「おはようございます。
今日もライさまはゆっくりなのだわ。
マコさまはもう庭いじりをしているのだわ」
「や、やあナル、おはよう。
今日も午後からマーケットへ行くつもりだからのんびりでもいいんだってば。
だから人を寝坊助でだらしないヤツっぽくいうのは止めておくれよ」
「ナルはゆっくりだったとだけ、他にはなにも言っていないのだわ。
寝坊ともだらしないとも思わないのだわ」
「そりゃそうかもだけどさ……
真琴が庭いじりってことはルースーも一緒なのかな?
マーボはどこにいるか知ってる?」
「ルースーとマーボはマコさまと一緒にお庭に、でもメンマもいっしょなのだわ。
あの長毛種は役に立たないくせにいつもまとわりついて……
ライさま、ナルも一緒に寝たいのだわ」
「そ、そんなのだめだよ!
もしかして一人であの小部屋にいるのはやっぱり寂しいの?」
「いいえ、一人だけマコさまと一緒に寝ていてズルいだけ。
だからナルも一緒に寝たいと言っているのだわ」
「でもやっぱ一緒のベッドはまずいよ……」
「くっ、マコさまのベッドは大きいから三人でも寝られると思うのに……
ライさまがお許し下さらないのなら仕方ないのだわ」
あれ? そういう意味だった? それならそうとちゃんと言ってくれたら良かったのに、てっきり僕は勘違いをしてしまっていた。そこへまた唐突に現れた白い影が!
「ライさまにはこのチャーシがいつもぴったりとついているのでご安心を。
寝ている時であろうと一番役に立つのはチャーシだもの」
「ああ、チャーシもずるしているのだわ。
でも扉を開けた様子がないのにどうやってやってきたのか不思議なのだわ」
「今言ったでしょう? チャーシはいつもライさまのお側にいると。
扉の音がしなくて当然、昨日からずっとこの部屋にいるんだもの?
護衛として当主さまのお側にいるのがチャーシのお役目よ」
「そんなのズル! ズルだわ!
ライさま、ナルにもなにかお役目が欲しいのだわ」
まさか、チャーシが姿を見せずに僕へピッタリついていたなんて想像もしていなかった。別にやましいことはないが、おかしな行動や発言をしないよう注意する意識だけは持っておかないとまずそうだ。と言うことは、ナルからはチャーシが僕専属に見えている? 彼女にしてみれば自分も専属の主人を持ちたいと嫉妬しているのかもしれない。
「あのさ、僕に言うんじゃなくて真琴へ聞いてみたら?
三人で寝ようって言えばあいつはきっと快諾するよ。
寝てる間に何されるかはわからないけどそれでも良ければね」
「わかったのだわ、お伝えしてみます。
お断りされたらライさまに責任を取っていただくのだわ。
それじゃ」
えっ!? 責任ってどういう…… と言う間もなく行ってしまった。マーボに用があることを伝えてくれるといいんだけど、僕が起きた後のベッドメイキングすら放って行ってしまったくらいだ、とても期待できそうにない。
「やれやれ、やはり猫たちは気まぐれすぎて役立たずね。
ライさまのお役に立てるのはチャーシだけだもの。
今日もマーケットへお供しますが、マコさまはきっとお庭いじりでしょう。
と言うことはルースーもお手伝いするはず。
ですから今日はチャーシ一人ね、ライさま?」
「あ、ああ、そうだね。
なんでチャーシは僕にぴったりなの?」
「チャーシは他のメイドと違って家の用事は何もできないわ。
だから護衛として働かなければ存在意義がないのだもの。
マコさまが家にいるときはハンチャがついているし、お出かけの際はみんな一緒。
でも今後ライさまとマコさまが別々にお出かけするときが問題」
「ハンチャがいるよね? どっちかについていってくれるんじゃない?
まあそんな危険なところへ行くつもりはないんだけどさ」
「ハンチャは敷地内から出られないんだもの。
なんでも完璧にこなして護衛もできる、でもそれは屋敷の敷地にいるからこそ。
結界を張っているのもハンチャ、周囲を索敵してチャーシたちへ指示を出すのもハンチャ。
ハンチャが居なければチャーシたちだって満足には動けないの」
「なるほど、そういう制限があるんだね。
それなら僕は自分の身をしっかり守れるように強くならないといけないな。
その時はチャーシに教えてもらうからよろしく頼むよ?」
「かしこまりよ、チャーシに出来ることは少なくて寂しいのだわ。
でもライさまが頼って下さるのはうれしい。
―― ハンチャから連絡、来客あり…… なのか微妙な動きなのだわ。
武器を持った女性が庭にいるマコさまのところへ向かっているようだわ」
「なんだって!? 急いで行かないと!
でも結界があるから安全ではあるのか、でもとにかく急ごう」
僕はみすぼらしいジャージ姿のまま、部屋から駈け出して庭へと向かった。チャーシはあっという間に居なくなり、恐らくはすでに真琴のところについているだろう。
玄関から出て左手に目をやると確かになにか荷物を抱えた女性が立っている。しかしその表情は明るく朗らかで、真琴と談笑しているようにしか見えない。
「あ、お兄さんが来たわよ?
おはよう雷人君、まだ起きたばかりみたいだね。
これから森へ行くんだけど、真琴ちゃんが見えたから声かけたんだ」
そこには確かに女性が立っていて、恐らく武器も持っているのだろうが、明らかに危険ではない人物であるロミの姿があった。そう言えば昨日、ジュースの材料にする果物を毎日のように森へ取りに行っていると言っていたっけ。
「寝坊助お兄ちゃんおはよー
マコは早起きして薔薇の苗植えたり種植えたりしてたんだよ?
でも薔薇はもっと一杯欲しいな、この生垣一杯になるくらい!」
「それならアタシが野ばらを取ってきてあげるよ。
一度には少ししか運べないけど、森にはほぼ毎日行くからさ。
ツルみたいになるようなのがいいなら野ばらも悪くないでしょ」
「はい、ルースーも賛成なのです。
マコさまがお気に召すような生垣を作って見せるのです。
それでチャーシはなんで臨戦態勢なのですか?」
「ああ、なんでもないよ、急いで来たからそう見えてるだけじゃない?
僕がせかしてしまったからね」
なんで僕はこういいわけがへたくそなんだろうか。こんなんじゃどう考えてもロミに怪しく思われてしまうだろうに。だが彼女はそんな僕へ友達へ向けるような当たり前の笑顔で言った。
「きっと誰か来たって報告受けて飛んできたんだよな?
妹想いのすごくいいお兄さんじゃないか。
なんだか羨ましいよ、うんうん」
「そうでしょー! お兄ちゃんはとっても優しくてカッコよくてね。
なーんでもできちゃうし、とにかく凄いんだから!」
「おいおい、そんな大げさに…… いい加減にしとけってば。
なんでもなんてできるわけないだろ」
「真琴ちゃんもかわいいな。
お兄さんのことが大好きで仕方ないんだろ?
この年頃ってそんなもんだしずっとは続かないから今のうち味わっといた方がいいさ。
それじゃアタシはそろそろ行ってくる、またゆっくり話しような」
慌ただしく走り去って行くロミの後姿を見送ってから、僕はホッと安堵のため息を吐いた。チャーシに目をやると思わせぶりににやりと笑ったが、それが何を意味しているのかは全く分からなかった。
切っ掛けはともかく、ここまでやってきたおかげでマーボとも会えたし、取り合えずはキッチンへ行って二人でエビを調理する。餃子の教訓を胸に、味付けはシンプルで作り過ぎないことを事前に決めておいた。
「焼いて塩をまぶすだけでいいんじゃないかな?
手間が少ない方がいいだろ?
でも衣付きだから揚げるしかないのか。
それと販売用に器が必要だからいっぱいある紙コップを使おう」
「ライさま、マーボはこのビンも売れると思います。
一輪挿しにちょうどいい大きさですし、ハッキリ言って邪魔なのですから。
張ってあるラベルを剥がすのは留守番の誰かにやらせましょう」
「そういわれても、誰ならできそうかわからない…… まてよ?
―― もしかして…… ハンチャ?」
マーボとチャーシはコクリと頷いた。あのイケオジ魔人がイライラしながらビール瓶のラベルを剥がしている姿はとても想像できないが、他の特化型メイドにあんな作業は期待できないのは確かだ。仕方なくその提案に乗った僕はハンチャを呼んでもらって地下倉庫での仕事を頼むことにした。
ビールの空き瓶は八ケースほど積んであったので全部で百六十本になる。一つ100ルドで売れたら空き瓶で16000ルドになるから一気に小金持ちだ。ちなみに昨日の売り上げは1100ルドだったのだが、真琴の好きに使わせた結果、薔薇の苗木や紅茶の葉、それに磨いた赤い石のペンダントに化けて全て無くなってしまった。
こうして準備を済ませた頃にはやはり午後になっており、僕とチャーシは二人で行商へ出かけることにした。マーボへは行ってきますと声をかけたのだが、爪を立ててカリカリとビール瓶へ向かっているハンチャのことは見てみぬふりをしてしまった。
今日のラインナップはエビフリッターに売れ残り餃子、それと念のため生麺を二玉だけ持っていく。時間があったら温麺(うーめん)屋とやらへ行ってみるつもりなのだ。フリッターの味付けは塩とマヨネーズだ。僕はこれなら完璧だと意気揚揚に、胸を張って家を出た。
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