26 / 53
第三章:聖女は一般人になる
26.聖女の計画
しおりを挟む
『よし、こんなもんかな』と、私は我ながらよくできた見本に自画自賛していた。とはいってもちゃんとした裁縫ができるわけではないので、タオルをしばって繋げ腰へまいただけである。
いくら今が五歳児だとしても頭の中は十七のピチピチJKな私だ。さすがに股の下へくぐらせるのは抵抗感があった。それに本格的にやるわけじゃないんだからこれで十分だろう。
「アキナさま? さっきから何をしてるんです? おなかが冷えたなら暖かいミルクでもお持ちしますか? それとも何かのおまじないとか?」
「違うわよ、廻しよ、まわし! 学校で相撲を取ろうと思ってるのよね。例の王子の息子が勝負しろってうるさいからさ」
「あはは、いまどき相撲って。大昔にはやってたみたいですけど、お尻丸出しが恥ずかしいからと廃れたらしいですね。三百年ほど前に」
「ええっ、そんな昔に!? じゃあ今はやってる人いないわけ? てっきりミツが広めて一般的になってると思い込んでたなぁ。じゃあケイラムも嫌がるかなぁ」
「確かに戦があった時代には盛んだったみたいですけど、平和な現代では格闘技はあまり盛んじゃないですね。それに今の人は肌をさらさないのが一般的ですしね」
「確かに外でも半袖とか見ない気がする。離宮だとリヤンたちみたいなあわせの上下か、全身をすっぽりと覆うようなローブかの違いはあるけど、出てるのは顔と手足の先だけだね。今まで気にしてなかったよ」
「だからアキナさまが持ち込んできた、この短くてひらひらしてるのなんて恥ずかしくて着られませんよ。ホントにこんな格好で外を歩いてたんですか?」
リヤンは壁にかけられているセーラー服を見ながら首をかしげた。見慣れた制服もこちらの衣類と比べると、とてもおかしなものに見えてくるんだから私も毒されてしまったもんだ。
「もちろんだよ。でもこれはちょっと短いやつだけどね。こう腕を伸ばすとおへそがのぞいちゃう感じ? スカートも腰のところでクルクルまいて短くするんだけどさ。それがカワイイんだってば」
「ひゃー、大勢がそんな格好してたなんでとても信じられませんねぇ。そんなのほぼ肌着じゃないですか。よく恥ずかしくないですねぇ」
「着てみたら案外気に入るかもよ? 試してみる?」
「いやいやいや、そんなの結構ですって。それよりまわしの代わりにタオルをしばり付けるとか涙ぐましいですね。いっそのこと作ってもらったらどうです? 裁縫の練習している見習いたちに頼んでみましょうか」
「そんなことできるの? でもウチのわがままで手伝わせたら悪いじゃん。材料だって渡せないんだしさ」
「たぶん大丈夫ですよ。裁縫始めたばかりの時って、衣類を作ってる人から端切れを分けてもらって縫い方の練習する程度ですからね。端切れを縫い合わせるだけじゃなく何か作れるならかえって喜ぶんじゃないかなぁ」
「そっか、端切れね。パッチワークでもすればいいのに。それかパッチワークキルトでもいいけど」
「そんな高度なことがまだできない人たちが、練習のために意味もなく端切れを縫い付けてるんですよ。まわしなら縫うのは直線だけだし、大きさはともかく難易度は雑巾と変わりませんよね?」
「どう、かな…… 多分そうかも。ウチも裁縫はからっきしだから何とも言えなくてごめんだけどさ。誰か作ってくれるならお願いしたいかな。でも本格的なのじゃなくて腰に巻くだけの帯みたいのでいいよ? こうやってしっかり握れるくらいの強度があればさ」
「じゃあ同期の子に聞いておきますね。その子はもう色々作ってるらしいけど、今までどうだったかとか裁縫室のことも知ってると思うので」
「うんうん、ありがとねリヤン。ウチは相撲を知ってるかとかやってみたいかを学校で聞いてみよっと。ちょっと楽しみー」
「それにしてもアキナさまがいた世界にも相撲があったとは驚きですね。もしかしてミツさまと同じ世界からやってきたとか?」
リヤンは時々鋭い。でも本当に同じ日本からやってきたかはわからないし、ミツがあの歴史上の人物なのかもわからない。私は適当にごまかすことにした。
「うーん、どうだろうね。いろいろ似てる部分はありそうに思えるけど、なんてったって五百年前の話でしょ? ウチにはわかんないなー」
「ですよねー 私も五百年前の知り合いはいませんから。それじゃ結果は数日後にお知らせできると思います。おっと、そろそろお茶の時間ですけど、なにかご希望はありますか? いつもと同じミルク入りでいいです?」
「うーん、夜だからもっと軽いのにしておこうかな。夕ご飯食べすぎちゃったから抑え目にしないと太っちゃうよ。かといって朝みたいにオートミールばっかりは嫌だけどさ」
「なんでですか? オートミールいいじゃないですか。もし苦手なら甘くするとおいしくいただけますよ? 子供のころはよくハチミツ入れてましたね。もちろん今はそのままで平気です」
「はちみつ、ね…… 考えよく」
この世界の人全般ではなくきっと神力を使う人たちに限るのだろうが、とにかく甘いものが好きすぎる。
なんでもかんでも甘い味付けにするのは勘弁してほしいとの身勝手な注文が、私ののど元まで出かかっていた。
いくら今が五歳児だとしても頭の中は十七のピチピチJKな私だ。さすがに股の下へくぐらせるのは抵抗感があった。それに本格的にやるわけじゃないんだからこれで十分だろう。
「アキナさま? さっきから何をしてるんです? おなかが冷えたなら暖かいミルクでもお持ちしますか? それとも何かのおまじないとか?」
「違うわよ、廻しよ、まわし! 学校で相撲を取ろうと思ってるのよね。例の王子の息子が勝負しろってうるさいからさ」
「あはは、いまどき相撲って。大昔にはやってたみたいですけど、お尻丸出しが恥ずかしいからと廃れたらしいですね。三百年ほど前に」
「ええっ、そんな昔に!? じゃあ今はやってる人いないわけ? てっきりミツが広めて一般的になってると思い込んでたなぁ。じゃあケイラムも嫌がるかなぁ」
「確かに戦があった時代には盛んだったみたいですけど、平和な現代では格闘技はあまり盛んじゃないですね。それに今の人は肌をさらさないのが一般的ですしね」
「確かに外でも半袖とか見ない気がする。離宮だとリヤンたちみたいなあわせの上下か、全身をすっぽりと覆うようなローブかの違いはあるけど、出てるのは顔と手足の先だけだね。今まで気にしてなかったよ」
「だからアキナさまが持ち込んできた、この短くてひらひらしてるのなんて恥ずかしくて着られませんよ。ホントにこんな格好で外を歩いてたんですか?」
リヤンは壁にかけられているセーラー服を見ながら首をかしげた。見慣れた制服もこちらの衣類と比べると、とてもおかしなものに見えてくるんだから私も毒されてしまったもんだ。
「もちろんだよ。でもこれはちょっと短いやつだけどね。こう腕を伸ばすとおへそがのぞいちゃう感じ? スカートも腰のところでクルクルまいて短くするんだけどさ。それがカワイイんだってば」
「ひゃー、大勢がそんな格好してたなんでとても信じられませんねぇ。そんなのほぼ肌着じゃないですか。よく恥ずかしくないですねぇ」
「着てみたら案外気に入るかもよ? 試してみる?」
「いやいやいや、そんなの結構ですって。それよりまわしの代わりにタオルをしばり付けるとか涙ぐましいですね。いっそのこと作ってもらったらどうです? 裁縫の練習している見習いたちに頼んでみましょうか」
「そんなことできるの? でもウチのわがままで手伝わせたら悪いじゃん。材料だって渡せないんだしさ」
「たぶん大丈夫ですよ。裁縫始めたばかりの時って、衣類を作ってる人から端切れを分けてもらって縫い方の練習する程度ですからね。端切れを縫い合わせるだけじゃなく何か作れるならかえって喜ぶんじゃないかなぁ」
「そっか、端切れね。パッチワークでもすればいいのに。それかパッチワークキルトでもいいけど」
「そんな高度なことがまだできない人たちが、練習のために意味もなく端切れを縫い付けてるんですよ。まわしなら縫うのは直線だけだし、大きさはともかく難易度は雑巾と変わりませんよね?」
「どう、かな…… 多分そうかも。ウチも裁縫はからっきしだから何とも言えなくてごめんだけどさ。誰か作ってくれるならお願いしたいかな。でも本格的なのじゃなくて腰に巻くだけの帯みたいのでいいよ? こうやってしっかり握れるくらいの強度があればさ」
「じゃあ同期の子に聞いておきますね。その子はもう色々作ってるらしいけど、今までどうだったかとか裁縫室のことも知ってると思うので」
「うんうん、ありがとねリヤン。ウチは相撲を知ってるかとかやってみたいかを学校で聞いてみよっと。ちょっと楽しみー」
「それにしてもアキナさまがいた世界にも相撲があったとは驚きですね。もしかしてミツさまと同じ世界からやってきたとか?」
リヤンは時々鋭い。でも本当に同じ日本からやってきたかはわからないし、ミツがあの歴史上の人物なのかもわからない。私は適当にごまかすことにした。
「うーん、どうだろうね。いろいろ似てる部分はありそうに思えるけど、なんてったって五百年前の話でしょ? ウチにはわかんないなー」
「ですよねー 私も五百年前の知り合いはいませんから。それじゃ結果は数日後にお知らせできると思います。おっと、そろそろお茶の時間ですけど、なにかご希望はありますか? いつもと同じミルク入りでいいです?」
「うーん、夜だからもっと軽いのにしておこうかな。夕ご飯食べすぎちゃったから抑え目にしないと太っちゃうよ。かといって朝みたいにオートミールばっかりは嫌だけどさ」
「なんでですか? オートミールいいじゃないですか。もし苦手なら甘くするとおいしくいただけますよ? 子供のころはよくハチミツ入れてましたね。もちろん今はそのままで平気です」
「はちみつ、ね…… 考えよく」
この世界の人全般ではなくきっと神力を使う人たちに限るのだろうが、とにかく甘いものが好きすぎる。
なんでもかんでも甘い味付けにするのは勘弁してほしいとの身勝手な注文が、私ののど元まで出かかっていた。
0
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる